ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『Gメン'75』1975~1982

2018-09-25 12:00:13 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1970年代半ば、『太陽にほえろ!』の大ヒットを受け、各テレビ局が刑事ドラマの製作に着手、雨後のタケノコみたいに刑事物がひしめく一大ブームが巻き起こりました。

だけど安易に『太陽』を模倣したような番組はあまり人気を得られず、ことごとく短命で消えて行く事になります。

そんな中で大衆の支持を集め、ロングランを果たしたのがTBSの『Gメン’75』、テレ朝の『特捜最前線』、日テレの『大都会』シリーズ等で、その各番組の辣腕プロデューサーや脚本家の皆さんが後年、異口同音に仰ったのは、こんなお言葉でした。

「打倒『太陽にほえろ!』を目指すなら、同じ事をやっても勝ち目は無い。とにかく『太陽にほえろ!』がやらない事をやろうと思った」

刑事ドラマに限らずとも、やっぱり他者がやらない事にチャレンジした者だけが歴史に名を残すワケで、そんなパイオニア精神で成功した代表的な刑事ドラマが、他ならぬ『太陽にほえろ!』でした。

その牙城を突き崩せるのは、同じようにパイオニア精神を持った攻めの姿勢の創り手だけ、って事なんだと思います。

『Gメン’75』を創った東映+TBSチームは『太陽』よりも先に『キイハンター』というアクションドラマを大ヒットさせたプライドもあり、打倒『太陽』に賭ける想いがひときわ強かったかも知れません。

まず一番大きな特徴は、刑事たちの所属が所轄署ではなくGメン(連邦捜査局)であるという設定。アメリカのFBIみたいに政府直轄の秘密警察で、国際的な犯罪を扱ってスケール感を演出してました。

そしてアンチ『太陽』の姿勢が顕著に表れてるのが、刑事達の呼び名です。『太陽』式にニックネームで呼び合うのが刑事ドラマの常識になりつつあった中で、Gメンはあえて「○○刑事」「○○警部補」など苗字+階級で呼び合うんですよね。

ニックネームの親しみ易さとは対照的にビジネスライクな感じが「大人っぽい」雰囲気を醸し出し、それが『Gメン』のイメージを決定づけたように思います。

それ以上に『太陽』の逆を行ってたのが、レギュラー刑事の心情よりもゲストキャラ(犯人や被害者)のドラマをメインに描いた事。「ハードボイルド」をキャッチコピーにしただけあって、刑事が捜査に私情を挟まない乾いた世界なんですね。

サスペンスやアクション物は好きなんだけど、刑事のヒューマニズムを前面に押し出した『太陽にほえろ!』という番組は何となく気に食わない……みたいに感じてた視聴者層が、その真逆を行く『Gメン』に飛びついたのかも知れません。

もちろん『キイハンター』からのファンも多かったでしょうけど、『Gメン』が大ヒットして7年にも及ぶロングランを果たしたのは、『太陽』とのライバル関係がプラスに作用した事も大きいんじゃないかと私は思ってます。

と言うのも放映当時、中学のクラスメートで「『太陽にほえろ!』なんか幼稚やで、『Gメン’75』の方が百倍おもろいわ!」って、やたらムキになって言って来る奴がいたんですよねw

『太陽』ファンは別に『Gメン』の事を意識してないのに、『Gメン』ファンはやたら『太陽』を目の敵にする傾向があったように思います。それって何となく巨人ファンと阪神ファンの関係みたいで、まぁ私の身の周りだけで起こってた事かも知れないけど、とても興味深い現象でした。

私自身はやっぱり、『太陽』の真逆を行く『Gメン』の作劇には馴染めませんでした。登場人物にどれだけ感情移入出来るか?が私の鑑賞&評価ポイントなので、犯人や被害者のドラマがメインに描かれるとのめり込めないんです。

それは性格として犯罪者に肩入れ出来ないのと、犯人や被害者はその回限りのゲストキャラに過ぎないことも理由に挙げられます。やっぱりレギュラーでずっと出てる刑事側の方が感情移入し易いワケです。

犯人側中心のドラマになると全体的にトーンが暗くなっちゃうのも、私にとっては大きなマイナスポイントです。『Gメン』は毎回ゲストキャラを悲劇のどん底に突き落とし、救いも与えず突き放すようにして終わっちゃう。それをレギュラー刑事達はいつも、ただ傍観してるだけなんですよね。

だから『太陽』とのライバル関係を度外視しても、私は『Gメン』をあまり面白いドラマだとは思ってなかったです。

だけど他の刑事ドラマがやらない事にあえて挑戦するハングリー精神と、それによって輝かしい実績を残した有言実行力はリスペクトしてやみません。

『Gメン’75』と言えばオープニングの「Gメン歩き」(横一列になって真っ直ぐ歩くアレ)とか、『Gメン’75』と言えば「香港カラテ(カンフー)シリーズ」とか、番組独自のスタイルが今や伝説化してるのも本当に凄いと思います。

女性刑事を男性と同等に扱い、容赦なくハードな事をさせるのも『Gメン』の独自路線でした。藤田美保子、森マリヤ、夏木マリ、セーラ、范 文雀、江波杏子など、男性レギュラーより女性レギュラーの方が強く記憶に残ってる位です。

もちろん、圧倒的な貫禄と超マイペースな棒読み台詞が忘れられないボス・黒木警視(後に警視正)=丹波哲郎の存在感、犯人と相撃ちになって殉職した関屋警部補=原田大二郎、カラテの達人で実は中国人の草野刑事=倉田保昭、クール&ダンディーなエリート・小田切警視=夏木陽介、一見ソフトなナイスミドルだけど実は鬼夜叉の立花警部補(後に警部)=若林 豪、といった面々も印象深いです。

宮内 洋、千葉 裕、鹿賀丈史らが参入した番組終盤になると、’80年代という明るく軽い時代を反映してか、ハードボイルドが売りだった筈の『Gメン』にも軽いノリや人情話が目立つようになり、らしさを失ってしまったのがちょっと残念でした。

それでも、アンチ『太陽にほえろ!』としては最も成功したであろう番組『Gメン’75』の存在を、丹波さんの棒読み台詞と共に、私はずっと忘れないでしょう。

TBS系列の土曜夜9時枠にて1975年5月から'82年4月まで全355話、そして'82年10月から'83年3月まで続編『Gメン'82』全17話が、さらに'93年と'00年、'01年には復活版スペシャルも制作・放映されました。
 
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『透明なゆりかご』最終回

2018-09-25 00:00:36 | TVドラマ全般









 
最終回では、お腹で順調に育ってた筈の胎児が、実は産まれても恐らく1週間程度しか生きられない重病であることが判明し、産むべきか否か葛藤する母親(鈴木 杏)と父親(金井勇太)の姿が描かれました。

産まれても苦しみだけ味わう人生なら、産まない方が本当の優しさなんじゃないか? 否、例え僅か1週間でも精一杯の愛情を注いでやるのが親の務めなんじゃないのか?

悩んだ挙げ句に出産し、難病が嘘みたいに元気そうな赤ちゃんを全身全霊で愛する両親だけど、やっぱり赤ちゃんは1週間で亡くなっちゃう。

涙が枯れ果てるくらい号泣させられるけど、両親の選択が正しかったかどうかの結論は示されません。そこには正解も不正解も存在しないんです。

ただ、産んだのは単なる自己満足じゃないかと自分を責める母親に、一部始終を見守って来た看護師見習いのアオイ(清原果耶)が言うんですよね。自分のお母さんにギュッっとしてもらえて嬉しかったって。

「子供がお母さんにしてもらいたい事なんて、それ位なんじゃないでしょうか」

アオイ自身にも、ちょっとした障がいを持って生まれたせいで母親から疎まれて来たこと、だけどそこにお互いの誤解があったことを最近になって知り、ようやく素直に愛を感じられるようになったという背景がある。そうした描写の積み重ねが、究極の悲劇に光を灯してくれるんですよね。

アオイが抱える障がい自体、彼女のおっちょこちょいなキャラクターにちゃんと理由があることを示す、実に見事な設定だと思いました。

第4話で妊婦を死なせてしまった由比院長(瀬戸康史)や、それで残された若い父親と赤ちゃんの存在も、この最終回で必然的に活かされてました。

全10話、無駄と思えるエピソード……どころか無駄なシーン1つさえ見当たらず、緊張の糸が緩むことも全く無く、最初から最後まで我々を画面に釘付けにさせた奇跡のドラマでした。

また、以前の記事にも書いて来た通り、生まれてくる生命と同等に、いやそれ以上の比重で去っていく生命の存在も、残酷さを恐れずストレートに見せてくれたことで、我々がこの世に生きていられることの奇跡、その有難さを実感させられ逆説的に「生きる力」を与えてくれたように思います。

たった1週間しか生きられないと判ってる赤ちゃんを産むことが、正解なのか不正解なのか回答は示されないって書きましたけど、全10話をトータルで観れば答えは1つしか無いんですよね。

誰もが一度や二度は見失っちゃう「生きることの意味」を、この作品は最初から一貫して描いてくれました。そういう明確なメッセージが柱にあるからこそ、我々は毎回胸を打たれ泣かされて来たんでしょう。

クオリティーの高さもさることながら、本作の素晴らしさはそこに尽きるんじゃないかと私は思います。

あと、連ドラ初主演・清原果耶ちゃんの透明感と、脇を固めるレギュラーキャストやゲスト陣の熱演、そして何より原作の素晴らしさ。間違いなく今期ナンバーワンです。

今回のセクシーショットは、アオイの先輩看護師を演じた水川あさみさん。
 
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