古希からの田舎暮らし

古希近くなってから都市近郊に小さな家を建てて移り住む。田舎にとけこんでゆく日々の暮らしぶりをお伝えします。

〈ノモンハン戦争〉について その2

2021年07月10日 09時12分20秒 | 古希からの田舎暮らし
 ぼくの高校生の頃、『十五対一』/『インパール』/『潜行三千里』/などの本が、父の本棚にありました。当時、話題になっていたから父が買ったのでしょう。家には読む本が乏しかったので、ぼくも読みました。
 これらはみんな、辻政信の本で、ベストセラーになっていました。辻政信は衆議院選挙に立候補すれば第一位で当選し、「講演会がある」といえば数千人の聴衆が押しかけました。
 ノモンハン戦争を引き起こして、かき回し、負傷・入院している将校を見舞って「オマエのせいで負けた」と責めたて(暗に自殺を迫ってピストルを置いて帰り、将校はピストルで自決しました)。
 口八丁手八丁で、講談師みたいにしゃべり、都合のいい事ばかり書き、作戦の神様と持ち上げられたり、銅像を造ろうという話があったり。辻はノモンハン戦争のあと左遷されたかと思えば、また東京の陸軍参謀本部に返り咲き、ガダルカナルの無茶な作戦をおしすすめ。そんな嘘っぱちの出まかせ軍人だったとは、ずっと後で知りました。
 辻政信の書いた本はいくつか復刻されて書店に並んでいます。ナチを追及するドイツでは絶対にあり得ないことです。買って読む人がいるから復刻したのでしょう。自分を含め、日本人の〈あまさ〉を歯がゆく思います。
 昨日引用した『ノモンハン戦争』の文のあとに、田中克彦はこう書いて、ペンを置いています。かれの、〈くやしさ〉が伝わります。


 辻政信 …… この人は並でない功名心と自己陶酔的な冒険心を満足させるために、せいいっぱい軍隊を利用した。そうして戦争が終わって軍隊がなくなると、日本を利用し、日本を食いものにして生きたのである。
 私たちが、占領軍としてではなく(占領軍の東京裁判でなく)、日本人として裁かねばならないのは、このような人物である。このような人物は、過去の歴史の中で消えてしまったわけでは決してない。今もなお日本文化の本質的要素として、政界、経済界のみならず、学会の中にまで巣くっているのである。
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