ユキノシタ
柿の花が咲いている、樹の下に立つと、緑の若葉を通して蜜蜂の羽音が遠くの地鳴りのように 響いてくる。
梅雨の長雨の頃、路面におびただしい数の肌色の花が落ちて、そこを歩くと小さな音がはじける様な感触が伝わってくる。
子供の頃のおやつの定番だっらアラレを思いだす、アラレは小正月の餅を小さなサイコロ状に切って寒風で乾燥して作る。
油で揚げて少量の砂糖で味付けする、油で揚げた時カリッとして大きく膨らませることが各家庭の秘伝であった。
一握り程を新聞紙に包んで与えられたおやつを、ユキノシタが咲く石垣に並んで腰かけ大切に食べた。
アラレを油で揚げて膨らんだ様子が、柿の落花に似ているように私は思う。
だから「柿霰」は私だけの言葉である。