自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

タンポポを訪れた昆虫(その1)

2013-04-14 | 昆虫と花

タンポポの咲く風景は春だナアって感じで,見ているとこころが陽気になります。わざわざ観察するような人はめったになく,公園であっても人は目もくれずに通り過ぎてゆきます。たとえ足元に咲いていても。

わたしは,好んでそんな場所に生えるタンポポを撮りに出かけます。人が歩いたり遊んだりする姿をタンポポのある風景に写し込めば,とてもたのしいコマになると思っているからです。人が暮らすのと同じ場所で昆虫たちも暮らしていることを記録したいのです。そんなわけで,人が視野に入るチャンスをずっとこころ待ちにしています。

公園の一角に咲くタンポポで,バッタ類の幼虫を見かけました。 

おもしろいことに,目が慣れてくると何匹も見つかり始めます。ようく観察していると,そこにいる理由がわかってきます。オシベやらメシベ,それに花弁を食べているのです。蜜を吸うなんてことはなく,ムシャムシャと噛み切る口器で貪り食うように食べることに熱中しています。

しかし,たいへん敏感で臆病のようで,人の気配がすると途端にからだの位置を変えたり,姿をくらましたりします。天敵と感じるのでしょう。撮影しようと思えば余程慎重に近づかなくてはなりません。近づいて目を凝らすと,からだが花粉だらけ。 

熱心に食べている様子をじっと見ながら写していると,お尻から糞を排泄しました。なんとかわいいウンコでしょう。変な話ですが,糞をする瞬間も食べているのでしょうか。それとも,一瞬だけ排泄に神経を集中させるのでしょうか。口元が見えないので,不明です。

こういうシャッターチャンスはそうそうやって来るものではありません。今回,貴重な映像を手にできました。

地面に這うような格好で写していると,老夫婦が「何を写していらっしゃるの?」と問いかけて来られました。事情を話すと,ご主人は相当なアマチュア写真家だったらしく,賞を数々受賞されたとか。それでどんどん話題が広がりました。ただ,杖が欠かせず,透析治療に週三度通院されており,写真の世界からは卒業しているとのこと。昔をとても懐かしんで,わたしのたのしみ方を高く評価してくださいました。

「こんな所に虫が生きているなんて,わたしたちだって思いもしませんよ。目の付け所がいいですね。今日はここに散歩に来て,ほんとうによかった」。お二人のこのことばを素直に受けとめさせていただきました。

タンポポからはいくらでも物語が広がっていきそうです。