ひと昔前までは,わたしの住む地域ではシロバナタンポポはまだ珍しいという感じでした。探してもなかなか見つかるものではなく,例えば,日本海側の国道沿いや瀬戸内海側の都市部など,ごく限られた所でしか見かけませんでした。
というのは,もともとは九州辺りで一般的なタンポポだったようで,やがて物流の拡大によって国道に沿って分布が東進してきたのです。したがって,海岸沿いで見かけても,内陸部になると見当たらないのも当然でした。
わたしは,タンポポの分布に関心があって,ついでに花茎の長いシロバナタンポポ を求めてあちこちに出かけたことがあります。採集した花茎の最長記録は1mを超しています。それは,たぶん極めて珍しいはずです。その旅の帰り,種子も根も持ち帰りました。もちろん,自宅に植えようと思ってのことです。
たくさん人がいることですから,中には,わたしのような人もあるはず。これを家の近くに植えたら,もちろんそこから分布が広がるでしょう。わたしの家の近くに,わたしの関心とはまったく関係なく同じことをした人があります。その家の周りに,もうたくさんのシロバナタンポポが咲くようになっています。「ははーん」と思って尋ねると,ヤッパリです。
こんな感じで,道端のタンポポを気にかけていると,パッとシロバナタンポポが目に飛び込んでくることがあります。「ワァーッ! ここにも生えかけている!」と驚いたことがつい最近! タンポポに聞いてもわかるわけがなく,推理するほかありません。
結構,人が持ち込むということがあるのではないでしょうか。一旦入れば,確実に分布を拡げます。既存種とは棲み分けがなされるので,心配はないでしょう。こう考えると,生態系が時代とともに少しずつ変わるのは止むを得ないともいえます。