自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

地域ミュージアムで考える(22)

2016-08-21 | 随想

わたしの勤務するミュージアムに,青少年関係のグループの皆さんが来られました。グループは小・中・高校生と指導者で構成されていました。以前指導者の方が下見に来られたとき,たまたま火起こし体験をしていただいたのが印象に残っていたらしく,今回,ぜひ火起こしをしたいとの話。

小さなミュージアムのよさは臨機応変に来館者の要望に応えていける柔軟な運営ができる点。つまり,小回りが利くっていうことです。来館者の期待・満足度にすこしでもお役に立てたらという思いで,やりくりして対応に努めています。このグループについても,急きょそのようにさせていただきました。

わたしがお薦めしたい最高の発火法は断然キリモミ式です。複数の人で試み,成功したら,達成感がたっぷり味わえます。汗を流し合えたなあという思いをずっしりと感じとることができます。

さて,1回目。4人で挑戦。煙がやっと出ましたが,火種ができるまでには至りませんでした。

2回目。メンバーが一部入れ替わりました。気合いを入れて,再び挑戦。あとすこしで発火というところまでいきましたが,火切り板が動いたために粉が散り惜しくも失敗。8分粘りましたが,ダメ。問題は簡単です。回転力はあっても,下向きに加える力が弱いのです。これだと摩擦が弱くなります。

「まだやる!」ということなので,3回目に挑戦。メンバーが一人交代。かなり慣れてきたので,うまくいきそう。「50m走を走る感じで」「むちゃくちゃにいけ!」などと励ましますが,あとわずかというところでなかなかうまくいきません。「縄文おじさん,手伝って!」と応援を求められ,わたしも参加。結果,発火!


わたしが手伝ったものの,皆さん,炎を見つめながら充実感をじゅうぶんに味わっていらっしゃる様子でした。よかったー!

火を起こすこと自体に対する驚き,最後までやり抜くスゴサ,力を合わせてやり遂げる値打ちを,当事者のみならず周りの皆さんもお感じになったようです。ミュージアムスタッフとして,よき機会を設けられたことをうれしく思います。 

 


ルリタテハ,卵から羽化まで(1)

2016-08-20 | ルリタテハ

8月20日(土)。朝,アゲハの庭園にて。庭で茂ったホトトギスを見てみると,なんとあちこちにルリタテハの卵が! ほんとうに“あちこち”なので,いちいち確認するのをやめました。お蔭さまでひととき,久しぶりにお目にかかったなあという気分に浸れました。その写真報告をします。

 


ごく小さな卵がポツンと付いています。8月に卵を見かけたのは初めてです。 

 
近くの葉に,点々と産付されています。


なかには,一枚の葉に2つも付いている例が。 


よく見ると,産みたてというより,孵化が近づいている模様です。薄っすらと影が見えます。 

 

複数の成虫がここを訪れて産み付けたのでしょう。

これで,羽化までをゆったりと追うことができます。生態のおもしろさがもっと見えてきて,満足のゆく画像が得られますように……。  

 


エビガラスズメの幼虫(3)

2016-08-19 | 昆虫

蛹のその後について報告しておきます。

まず1個体が羽化しました。蛹を不用意に土の上に置いていただけだったので,つかまるところがなく,翅を広げ切れなかったようです。縮れたままの翅を見て,かわいそうなことをしたと後悔。この時点で初めて,これはエビガラスズメではなくクロメンガタスズメと判明。

 
調べてみると,こんな記述がありました。「日本の各地に分布を広げていて,さまざまな場所で幼虫や成虫が見つかっています」(講談社の動く図鑑『move 昆虫』より)。代表的な食草としてナス,トマトが挙げられていることから,野菜の害虫だとわかります。我が家でもジャガイモの葉がずいぶん食べられました。

胸部の模様・紋様が独特です。それを人の面を見立てて命名されたことが理解できます。

2つ目の蛹がこんなことになってはたいへん。草の生えたプランターに置いておくことにしました。その3日後のこと。羽化しているのを発見。この2時間前に蛹を見たのですが,羽化の兆候はまったくありませんでした。羽化場面に遭遇するには,偶然を待つほかないようです。もっとも,蛹は地中にあってそこで羽化するので,観察できないのがふつうです。

 
手に載せると,大きさのほどが伝わるかと思います。


下から見ると,タイガーを思わせるような斑模様をしています。 

 
全身を撮っておきました。堂々とした脚の持ち主です。

 
真正面からも撮っておきました。ふさふさとした毛には驚きます。それゆえに,中央の,毛のない部分に目が向いてしまいます。どんな役目をしているのでしょうか。


幼虫の正体はエビガラスズメではなく,クロメンガタスズメでした。勘違いは素人観察者がついつい犯すミスです。でも,新しい知見が得られたことに感謝。

 


自然となかよしおじさんの“ミニ昆虫話”

2016-08-18 | 随想

すこし前の話です。7月いっぱい,虫の目写真展を開いたことはすでに記事にしました。その関連で,子どもを主な対象にした昆虫話をしてほしいと依頼されて,過日出かけました。会場は写真展をしている駅舎。集まった人は子どもとおとなで10人。

わたしはまず『手のひらを太陽に』を口ずさんでミミズ・オケラ・アメンボを引き合い出し,「生きているってどんなことなのかな」と問いかけることから始めました。予想通り,「息をしている」「食べる≫といったことが出てきました。わたしは,「生まれる」「成長する」「ウンコをする」「……」,そんなことを補足しながらヒトと同じであることを話していきました。

そして,わたしが撮っている虫の目写真と,ふつうのクローズアップ写真の違いを話題にしました。子どもたちは気づきました。虫の目写真のおもしろいさ,写真から見える情報についてざっと解説しました。

続いて,準備した最近の画像をパソコン画面で再生しながら説明していきました。一つ目の写真はこれです。当日の朝,アゲハの庭園で写したばかりのコマ。ジャコウアゲハの交尾場面です。


今度は虫の目写真,接写写真両方でジャコウアゲハの産卵風景。同じく,エビガラスズメの幼虫写真。

次は視点を変えて,孵化風景と生まれた幼虫の行動を見ていきました。取り上げたのは,アゲハ,キアゲハ,キタキチョウ。殻を丹念に食べる様子を解説していきました。

締めくくりに,展示写真の解説をざっとしておしまい。これだけで30分余り。あとは,司会者による昆虫クイズ出題。


そして,子どもたちからの質問コーナーと続きました。「カブトムシをおびき寄せるためのエサの付け方は?」「昆虫はいつ捕れるの?」なんて質問が出ました。おもしろかったのは,「ヘビの抜け殻を探したいのですが,どこへ行ったらいいですか」という質問。ヘビはどうやって皮を脱ぐのか,わたしはそれを問題にして質問に答えていきました。大いに盛り上がりました。

このとき,突然子どもたちの足元に大きな昆虫が登場! みんな騒然。なんと珍客,キリギリスでした。産卵管があるのにメスだと気づかない子らはまだ昆虫少年の入門期にいることをうかがわせてくれました。


いのちがいのちとして生きていること,ちょっと伝えられたかな。これから昆虫のいのちについて学ぶ機会が増えるでしょう。そのヒントになればいいのですが。マア,なんとか役目を果たせたかなあ。

 


ジャコウアゲハ観察記(その354)

2016-08-17 | ジャコウアゲハ

畑やら庭やら,そこらあたりは草だらけ。昼間の作業は禁物と心得て,早朝に草引きをする習慣にしています。マア,6時には開始です。

作業をしていると,あれこれの昆虫にやたらとお目にかかります,キタキチョウはどうやらここをねぐらと決め込んで,一夜を明かしたようです。


ウマノスズクサが草に埋もれ,細々と生きている感じです。周りの草を引いていると,ウマノスズクサ特有の匂いがぷうんと嗅覚を刺激します。見ると,そこにジャコウアゲハの終齢幼虫が。ちゃんとこの葉に卵が産み付けられて,ここまで育ってきたのです。

葉を裏返すと,孵化した幼虫が殻を食べていました。春,「待ってましたー!」とばかりに羽化した個体たちが今の時期になると,個体間でこんなに成長差がついてくることがふしぎなほどです。

それらを写真に収めました。


「卵はないかな」。そう思って探すと,ちゃんとありました。


探せば,蛹もあるかもしれません。ついこの間は成虫を見ました。

成長差というのは,それぞれのいのちと環境とが関わり合って現れる結果といえます。3化性でとどまるいのちもあるでしょうし,4化性に至るいのちもあるでしょう。多化性のいのちというのはおもしろいものです。 

 


ダンゴムシの子どもたち

2016-08-16 | 生物

7月23日付け記事でダンゴムシの交尾を取り上げました。それからダンゴムシは,暑さと乾燥のためか姿を消していましたが,8月5日,久しぶりに見かけることになりました。

場所は前と同じコケの上。コケはかさかさに乾いています。その土の間に,ダンゴムシがひしめくような感じでごそごそしているので,びっくり。なにしろコケが土といっしょに動くのですから。忘れたいた間に,こんなに育っていたのです。

すぐ傍には,彼ら・彼女たちを産み死に絶えたらしい母親の死骸が。


小さな個体から大きな個体まで,わんさとかたまっています。


コケを取り除くと,その下にはこんなにひしめき合っていました。


下写真中,右の方にごく小さな個体が1匹。まだからだが白っぽく,いかにも幼子といったふうです。


生まれた場所で,すこしでも日の光を避けて暮らしていた結果,こんなにふうに集団を形成したのでしょう。もちろん,これからは散らばっていくほかありません。

 


純正紙,ほんまもん!

2016-08-15 | 野草紙

生漉紙ということばがあります。和紙の世界で使われることばで,和紙原料の大半がコウゾであることから,基本的には他の繊維を一切混ぜないで漉かれたコウゾ紙を指します。

これにならっていえば,わたしが漉いている野草紙もまた純正(純粋)繊維で混ぜ物を一切入れないので,生粋の野草紙といってもよさそうです(下写真は純正象糞紙)。


もうずっと前の話になります。紙漉き技の長けた知人(教師)がいつも牛乳パック繊維を混ぜて紙を漉き,その成果を研究会で披露しました。作品は上等の紙に仕上がっていました。子どもたちも満足してことが容易に想像できました。タイミングよく,同じ場でわたしの紙づくり法を披露する手筈を整えていました。わたしは,他の繊維を一切混ぜない純正紙をたくさん提示しました。

さて,学校教育で素材として取り上げる場合,どちらに軍配があがるか,議論になりました。

知人のしごとはまるで工作教室のそれだと,わたしには見えました。ものづくりに徹したしごとぶりです。わたしの紙づくりは,それぞれの植物固有の特性に近づくための手掛かりとでもいったものです。両者はまるで目的が異なっています。図工的(実利的)志向? 科学的(研究的)志向? 授業で取り上げるのにどちらが望ましいか,そんな議論が続き,決着がつきませんでした。両者の視点がちがうのですから,かみ合わないのです。これからも,決着はつくことはないでしょう。

わたしの紙づくりは一貫して純粋繊維だけで漉くというものです。お蔭で,体験の積み重ねで植物それぞれの特性をずいぶん手の内に入れた気持ちがしています。ちょっとオーバーないい方になって,植物には「ごめんなさい」です。

こんなふうなので,混ぜ物をしている例に触れるとどうも違和感を覚えます。「まるで,混ぜ物を入れなくては紙ができないってことなの?」「つなぎのつもりなの?」と問いたくなるのです。先日なんか,トウモロコシの葉から紙をつくるのに,ティッシュペーパーを入れている例を知って,もう開いた口がふさがりませんでした(ごめんなさい)。純粋繊維だけで良質紙ができるのに,ティッシュペーパーを入れた理由がまったくわからなかったからです。予想ですが,なにかつなぎになるものを入れなくては紙ができないという思い込みにもとづいているのでしょう。これって,純粋繊維に対して申し訳ない姿勢じゃないかな。

重量比でいえば,どの程度のティッシュ繊維を入れたのでしょうか。比率の関係なく,それはトウモロコシ紙と呼んでよいものでしょうか。あるいは,トウモロコシ繊維入りティッシュペーパー再生紙とでも呼ぶのでしょうか。仮に10%混入させた場合,厳密にいえば,トウモロコシ繊維90%昆入再生紙,あるいはティッシュペーパー繊維10%混入トウモロコシ紙なんていう表現にでもなりそうです。

なにかを混ぜた紙を,但し書きなしで堂々とトウモロコシ紙と呼ぶなんて,わたしにはできません。象糞紙でも,なにか他の繊維を混ぜたら,もう生粋の象糞紙とは呼べないのと同じ。すくなくとも,「他の繊維を〇%程度混入しています」とはっきりいう(書く)べきです。

紙づくりの仕掛け人は,体験者にどんな質の体験を提供したいのか,しっかり吟味してかからなくちゃいけません。 

 


クサカゲロウ,卵から幼虫へ(続)

2016-08-14 | 昆虫

8月11日(木)。早朝のこと。ルーペで見ると,すでに孵化して殻にしがみ付くようにしている幼虫が目に飛び込んできました。びっくり! 大急ぎで撮影。鋭い顎(あご)はりっぱな武器です。


「これはすごい!」。慎重に画像に記録しました。

とくべつにりっぱに見える毛! これでからだを守っているのでしょう。まさに“毛虫”! 黒い点はやはり目だったのです。白いからだを写すときは,光源の位置を思案します。とくに純白の場合は。写している間もじっとしている幼虫に,ほんとうに仰天。


時間が経ってからレンズを覗くと,他の卵も次々に孵化していました。「わぁー!」と思わず声が出てしまいました。


卵の下部から出てきています。


ほぼ出終わりました。脚が直線状に伸びています。


脚を動かしました。すっかり出てしまうと,殻にしがみつきました。ほかの幼虫たちのようすもまったく同じ。それはそれは,ふしぎなふしぎな光景に見えました。


トリミングすると,もっと雰囲気がお伝えできるかも。


さらに時間がかなり経ってから,幼虫たちは柄を伝って葉に移動していきました。

クサカゲロウの生態がちょこっと見えてきました。新しいことを知ることはじつにたのしいこと。そして,うれしいこと。この気分をたっぷり味わいました。

 


クサカゲロウ,卵から幼虫へ

2016-08-13 | 昆虫

8月10日(水)。青みがどんどん薄くなって,中に影がはっきり見えます。どの卵も同じように見えますが,さて順調に変化しているのかどうか。

横縞,下方に黒い点が確認できます。


トリミングすると,よくわかります。黒い点は眼の辺りなのでしょうか。

 
ところで,クサカゲロウの幼虫ってどんなかたち・姿をしているのかなと思って調べたら,ビックリ! どうやら,一昨年の秋,庭のキクの葉で見かけたものにそっくり。急いで当時の画像を探しました。ありました,ありました。大きな顎はいかにも肉食性の動物って感じです。アブラムシを食べるようなので,合点。生まれた幼虫がやがて,こんなふうに成長するだなんて!


さあ,いつ孵化するでしょうか。どんなふうに殻から出てくるのでしょうか。わくわく感が高まります。 

 


地域ミュージアムで考える(21)

2016-08-12 | 随想

地球と宇宙のワンダーをテーマに掲げたミュージアムなので,わたしたちはできるだけ,そしてなんとかテーマにふさわしい展示物を手づくりしたいと思っています。わたしの目のつけどころは地球儀です。これは地球と宇宙をつなぐ接点でもあります。それで,多面体の地球モデルを自分でいろいろとつくっては,フロアのあちこちに無造作に(?)積んだり並べたり。材料は段ボールです。

それを手にして,「おやっ!?」と思っていただければ大成功!

それに加えて,今回は,卵型地球儀をつくりました。芯には市販の発砲スチロールを使用。長手方向300mm,直径200mm。比較的大きなサイズです。その周りに象糞紙を貼り付けます。といっても,湿紙状態の繊維をつないで巻いていくので,結果的には一枚の紙に仕上がっています。くっ付いた跡形はもちろんまったく見えません。

したがって,「これどうやってつくったの?」と,見る人,手にする人はみんな感じるのではないでしょうか。

できあがれば,底におもりを埋め込んでいるので,ヤジロベエになってゆらりゆらりと揺れ続けます。これを“うんちきゅう”と名付けました。“うんち”と“ちきゅう”をドッキングさせた私的造語です。

制作工程を簡単に振り返っておきましょう。

こんな材料から始めました。

 
湿紙を巻きつけます。

 
巻きつけが終わると,天日に当てて乾かします。

 
乾くと,鉛筆で経緯線を書きます。

 

地図を書き込んで着色。鉛筆線を消してから,ニスを塗って終わり。


わたしの次の夢はもっと大きな“うんちきゅう”をつくること! 背の高さがそれと同じぐらいの子どもが横から押すと,地球儀がゆ~ら,ゆ~ら。地球をもっともっと引き寄せる仕掛けがしたい! おもしろいでしょ。これ,勝手な想像です。