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自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

地域ミュージアムで考える(19)

2016-08-01 | 随想

地域のミュージアムで子どもの育ちを支えることを念頭において子どもと接していると,うれしい風景に巡り合うことがあります。「これが,子どもが育つということなんだろうな」とわたしたちがうれしくなってしまうこともあります。

そんな例を,ボランティアでミュージアムづくりにかかわっているFさん(女児)に見ました。

先日開かれた『青少年のための科学の祭典』でがんばった一人がFさんです。2日後の平日のこと。おじいさんの自動車に乗せてもらってミュージアムにやって来ました。そして,わたしにこういうのです。

「なにかお手伝いできることがあったら,させてください」

「えっ⁉ Fさんが? なんと勇気のある行動!」「自分から進んでなにか役立つことをしようとしている。ついこの間まではお父さんやお母さんの手を借りて動いてきたのが,ぐっと変わりつつあるなあ」。そうわたしは感じました。そうして,手伝えるしごとをしてもらえるよう,スタッフに伝えました。その後ときどき見ると,一人で黙々としごとをしている様子。

スタッフによると,もともと理科には殊の外興味関心が強く,ミュージアムの講座を受講することが多かったのですが,そこまで積極的に行動するのはめずらしいといいます。なにかがきっかけになって,成長上の転換期を迎えたということなのでしょう。

たまたま,机上でキアゲハの幼虫を飼っていたので,お礼の気持ちで「この幼虫を飼わない?」と尋ねると,予想外。喜んで飼うという返事なのです。女の子にしては珍しい! 初めて飼うということなので,食草について教えておきました。もしかすると,夏休みをとおして観察し続けるかもしれません。

その翌日。また,やって来ました。そして,「友だちと遊んだあとで,なにかお手伝いすることないかなと思って来ました」というのです。Fさんのしごと用にと思い,象のウンチ繊維を準備しておいたのでさっそく役立ちました。それを洗って,ミキサーで叩解・離解作業をしてもらいました。単純ですが,根気のいる手伝いです。作業はまるまる3時間は続いたでしょう。じゅうぶん汗を流しました。


この例は子どもが育ってゆく姿の典型だと感じます。学校以外に地域においても,子どもとのかかわりをたいせつに考えていけば,こんなふうに人間関係が成り立って育ちを支えることができるのです。

このとき,気をつけなくてはならない点は,おとなが先回りしてお膳立てし過ぎないことに尽きます。それは甘やかしにつながります。子ども自身が苦労をして体験を重ねた結果,気づいたり,できるようになったり,というふうに導いていかなくてはなりません。よく,なにもかも大人が場面設定してそのレールに子どもが乗って動くだけ,というお節介な(ゴメンナサイ!)プランがたくさんあります。これでは子どもによる“よいとこ取り”に終わるだけです。過保護の最たるものです。適度な突き放し,慮りがあって初めて,子はほんもののたのしさを味わうことができるはず。

わたしは地域人として,ミュージアムのしごとをとおしてしっかり子ども支援にかかわりたいと願っています。支援の基本は,近づき過ぎず,離れ過ぎず,です。子どもは次世代の星である,という気持ちで見守る姿勢が欠かせないと思っています。


『青少年のための科学の祭典』のもう一つの大会が,8月に行われる予定です。わたしたちのミュージアムは,前とは異なった内容で出展します。Fさんに「それにも参加してはどうか」と誘いました。一発で「行きたい」と答えました。頼もしい! Fさんには,人と交流する中で好奇心と生きる力を着実に鍛えてほしいと思うのです。成長したとき,「あのミュージアムがあったからこそ,いろんな刺激を受けてわたしが育ったのだなあ」と,ちょこっと振り返ってもらえたら最高!

子どもボランティアは,興味関心を単に伸ばすことにとどまらず,主体的に社会参加することで人間としての資質もまた鍛えていけるでしょう。その環境づくりに努めようと思います。