徒然なる日々からの歳時記

徒然なるままに日々の歳時・興味を綴っております。

耕して天に至る

2006年01月01日 | ちょっといいとこ,いい景色
小さな漁村の背後に聳える灰色の壁。遠目には,巨大なコンクリート法面にも見える。

愛媛県は宇和島市,宇和海につき出した半島の中程にその壁はある。近付いてみると,それが幾段にも重なった石積みの段々畑であったことに気付く。黒い模様のように見えるものは,ビニールの温床。暖かいビニールの下では,早掘りの馬鈴薯が元気よく芽吹いている(夏から秋にかけては薩摩芋が育てられる)。大人でも足がすくんでしまうような急斜面が,今なお丁寧に耕し続けられている。斜面からは,冬でも穏やかな宇和海に浮かぶ真珠や魚の養殖筏と小さな島々が見える。

リアス式海岸で有名のこの地域は,古くから漁業が盛んであった。その一方で,平坦な場所はほとんどなく,大きな河川もなかったため,自給のための食糧と水には,苦労し続けてきた。その苦労が生み出したものが「耕して天に至る」といわれるこの段々畑という訳である。

かつては,この地域のいたるところで見られた段々畑も,現在では,蜜柑畑に姿を変えたり,放棄され,草や灌木が茂る藪のようになってしまっている。写真の遊子水荷浦地区の段々畑は,地元の保存会やオーナー制度などにより,その保存に尽力がなされている。

→ 重い荷物はモノレールで運ぶ
→ 階段のない場所は梯子で上る

追記:
1月8日(日)8時からNHKの「小さな旅」で,水荷浦地区の段々畑が紹介されるそうです。
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