徒然なる日々からの歳時記

徒然なるままに日々の歳時・興味を綴っております。

ネガのなかのポジ

2006年01月18日 | ちょっといいとこ,いい景色
昨年の大晦日に訪ねた遊子水荷浦の段々畑。周辺ではほとんど見られなくなってしまった段々畑が,どうして水荷浦には残ったのか?

もちろん,耕し続けてきた水荷浦に住む人の努力が,第一にあるのだろうが,それだけではない気がした。努力し続けようと思った理由や,努力し続けざるを得なかった理由があったのではないだろうか。

このブログのブックマークにも紹介しているHPの作者の方に尋ねてみたり,統計資料を調べてみたりしてみた。

地形や土壌,集落からの距離といった立地条件は,決して条件の良くないこの地域の段々畑の中では,恵まれている方だった。水荷浦の段々畑は,日当たりの良い南向きの斜面に立地しており,土壌の条件も含めて,馬鈴薯の栽培には非常に適していた。出来た早堀の馬鈴薯の味は格別という。加えて,段々畑は集落の真後に立地しており,車等を使わずとも畑に容易に赴くことが出来た。現在の地元の耕作者は皆,高齢だが,散歩がてら段々畑に赴き,草引きをするのが日課だという。

一方で,水荷浦にとって段々畑は,消去法の解であった。例えば,水荷浦は,同じ旧遊子村の集落に比べて,耕地面積に占める果樹園の割合が低い(低かった)。水はけの良い傾斜地を利用した農業として,ミカンなどの柑橘類の栽培が有名だが,水荷浦には長く続けていけるような果樹園に適した土地は多くはなかった。高齢者の仕事の場という面でも,段々畑以外の農地をほとんど有さない水荷浦にとって,海での仕事が手伝えなくなった時の選択肢は,段々畑しかなかった。

ネガのなかで築き磨かれてきたポジは,現在,耕作者の自信・自慢の種となり,地域の誇りとなっているという。
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