ワインにまつるわる蘊蓄レベルをもう一段階上げてみようかと,ワイン蘊蓄を収集中。
前回は,日本産ワインにこだわりつつ,葡萄の品種を攻めてみたのですが,今回はワインの歴史をちょっと掘り下げみようかと(一個下の記事も日本産ワインの歴史ですし)・・。
書籍とか,ネットとかで収集を初めてみると,最初にぶち当たるのが表題の言葉「フィロキセラ禍」
何度か目にしたことはあった言葉だったのですが,まずはここから。
フィロキセラ禍は1863年にフランスで始まったフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)によるヨーロッパ系葡萄品種の壊滅的被害のこと。被害がフランスに留まらず(フランスの被害面積は100万ha),ヨーロッパ全域,全世界に及んだとのこと(日本も例外ではありません)。被害は文字通り壊滅,いくつものワインの産地がこれを機に,葡萄の栽培,ワイン造りを断念したということからも,その被害の大きさは尋常ではないことが伺えるかと思います(19世紀の後半には,ワイン醸造向けの葡萄の植栽本数全国一であった愛知県において,現在はほとんど葡萄が生産されていないのはこのため,一方で勝沼など山梨の産地におけるワインの栽培が明治期から現在まで継続している理由の一つに,初期に導入した品種が北米品種であり,フィロキセラによる被害を免れたということがあるとか・・,
このワインは「勝沼に最初に導入された赤ワイン用の葡萄品種によって造られた幻のワイン」という言葉に惹かれて,10年近く前に購入したワインですが,ADIRONDACという名前からも分かる通り北米品種です)。
原因となったのは,フランスの農業技術者が葡萄の品種改良目的で北米から葡萄品種(北米系の品種)の苗とともにフィロキセラを持ち込んでしまったこと,ヨーロッパ系の葡萄品種は,フィロキセラに対して全く抵抗性も持っていなかったため,被害は一気に拡大,壊滅的な被害に繋がりました。
有効な対処策は,なかなか見つからず,結局,フィロキセラに対して抵抗性を有する北米品種の台木にヨーロッパ品種を接ぎ木するという方法が最も有効ということで落ち着きます。この方法は現在も継続しており,現在,栽培されているヨーロッパ系品種の大部分が北米品種を用いた接木です(チリやオーストラリアなどの一部地域を除く)。
このフィロキセラ禍,後に世界で植物検疫制度が整備されるきっかけにも繋がったりと,ワインのみならず,各方面に様々な影響を及ぼしました。
農業技術,動植物の移入,農作物を通じた人と土地との関わりという点に深く関わる話だけに,機会があればもう少し詳しく掘り下げてみたいものです。
追記:写真は,最初にフィロキセラ禍に見舞われたフランスのワイン,先日チリ産のピノノワールを頂いたので,今回はボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンを頂きながら,ワインの歴史に思いを馳せてみました。