がんばれニッポン、俺がついてる。
俺の名前はけんちゃんだ。 。。。
続けて片山教授は、
「くそまじめな男だけに、いったん道がはずれるとああもなるもんかねえ」
と、つぶやいた。
「どういうこと?」
俺は、聞き返したが、片山教授はむふふと笑いを返すだけだった。
俺が保健室の外に出たとたん、中から凄まじい関西弁と栃木訛りの応酬が聞こえてきた。片山教授は栃木県出身である。ガッツ石松ばりの栃木訛りは、普段は隠していて、気取った標準語を使っている。
俺の耳には意味不明なお国言葉は、当人同士も意味不明でお互いけんかにもなってないんじゃないかと、俺は呆れた。
「どうする?今から、中島教授のところへ行く?」
色の白いヤツが、ヤツの愛車の真っ赤なferrari 248 f1にまたがりながら声をかけてきた。全く、なあにがferrari 248 f1だ。ただのママチャリ
じゃねえか。
悪いが俺のけんちゃん号の方が数段かっこいい。
だいたい、盗まれるだけの価値があるか?盗まれても戻ってくるか?この町の住民のほとんどが、俺の愛車の存在を知っている。
勝ったね。
俺は、目の前を俺のチャリが通り過ぎていくのを、ぼんやりと眺める。
「いい眺めだ」
え。
何で俺のチャリがっ
乗っているのは、学園内では見かけない人物だ。
「あ、チャリどろぼー
」
俺は叫んだ。白いヤツも驚いて振り返った。
チャリどろぼーは、ぎょっとして猛然とチャリ
をダッシュさせて逃亡を図った。
「待てえっ」
白いがチャリで追いかけ、俺も走った。
と、その時、チャリどろぼーに横から跳び蹴りをかましたジャージ姿の男がいた。チャリ
どろぼーは、チャリ
ごとひっくり返ったあげく、跳び蹴りをかましたジャージ男にぶちのめされていた。
こんなことをするのは、学園内ではこの男しかいない。
「藤川~」
サッカー部の青ジャージを着て、さっそうとVサインをこちらに見せている。
チャリどろぼーは、鼻血を出してのびていた。
「あ~あ、やっちゃった」
知らねえぞ~。
ヤバそうなので続く
何のこっちゃ。
匿名希望の東山先生が迫力のある関西弁で片山教授をどつき回し、その片山教授は琥珀色のアルコール飲料の入った瓶を抱え込んでしまい、関西弁なんぞ意に返す気配もない。
「悪いが植草君、僕にそんな下品な関西弁は通用しないからね」
わざとなんだかそうでないんだか、片山教授の他人の名前を間違える?というロクでもない癖…というか嫌がらせは、匿名希望の東山先生をさらに激怒させた

「もんじゃの具にしてやるっ

こう怒鳴るなり、側にあった例のギョロ目のカブにパンチ

カブは大きく揺れ、束になった茎がぴりぴりっと破けて落下した。・・・ほんとはざまあみさらせなんだが・・・ギョロ目のカブの行方を追いながら、
「何で、もんじゃの具…

と、白いやつは、わけわからんという表情で俺に視線を向けた。
俺だってわからん

「関西人はもんじゃ食わねーだろ?」
「悪いが、俺だって食わねーよ」
こそこそと話し、しかし、これ以上ここにいてとばっちり食らってはたまらん、と俺たちはこそこそと保健室をぬけだそうとした。
「あ、おい」
と、片山教授が匿名希望の東山先生を無視して、俺たちに声をかけてきた。
「あのな、前田君の居所な」
「のぶちゃん?」
俺は、立ち止まった。片山教授は、アルコール飲料をぐびっとあおりながら、
「あの牛★大仏男を見かけた、と中島教授が言ってたぞ」
一筋の光明か…。
ハリーポッター見るから、続く
けんちゃんだ。
薬師丸ひろ子が大好き。
片山教授がベッドの下から抱えて取り出したのは、赤いふたの大きな瓶だった。
中身は梅と琥珀色の液体。
ははあん、さては匿名希望の東山先生は、タコ壺保健室で楽しい飲み物を製造していたに違いない。
「僕はねえ、何でもお見通しなんだよ」
片山教授は、知らん顔をしている彼女の返事や思惑など気にせず、座高計に座ると、
「君と桜井が何をしとるか、知らないとでも思っているのか」
と言い、白いやつに向かって、
「気がきかんやつだな。コップに氷を入れて人数分もってこい」
と、図々しく指図した。
「何で俺が」
白いやつはブツクサ文句を言いつつも、立ち上がって冷蔵庫に向かった。
匿名希望の東山先生は、開き直ったのか、
「申し訳ないんですが、アルコールは入ってませんから」
と、反論した。
「そんなことはわかってる。桜井が大学の園芸学部から梅を盗みどりしているのは、ようく知っている。大学在学中からの常習犯だからな。どうせ、言いだしっぺは、桜井だろうが」
桜井というのは、ここの大学の卒業生で片山教授の教え子で、さらにここの高校の教員になっている。白いやつが高校に現れると、真っ先に蹴飛ばしに行くらしい。ついでに言うなら、俺の中学の後輩だ。
片山教授が言うことを、さもありなん、と聞いた。
「どれ、出来具合いはどうかな?」
と片山教授は、白いやつからコップとひしゃく(があるってことは確信犯だな)を使い、琥珀色の液体をコップに入れ、氷の音をからからさせながらくるくると回した。一口飲むと、
「よ~くできとる、あとからアルコールをぶち込んだから心配してたんだが…」
「え?」
匿名希望の東山先生は、真っ赤になって怒り、
「何してくれとんじゃっいつか淀川に沈めたるから、覚えとれやっ
」
と、怒鳴りつけた。
おお、こわっ。
と、思ったので明日へ続かしていただきます。
PS 。この話はフィクションです 。思い当たるブログや養護教諭、色の白い事務職員等とは、まったくではないですが、一切関係はありません。
・・・。
俺はこう見えてもギターがうまい。自慢じゃないが、かなりの実力だ。ただし、披露する場所がないだけだ。
タコの保健室とカウンセリング研究所を結ぶ廊下のドアが開き、片山教授が顔を出した。
「お、なんだ、おざわ君か」
「すいませんね、緒方です

生徒のことでたびたび相談にきては、何回あんたと話したと思ってんだ。いい加減に名前を覚えてくれ。
「ああ、おやまくんな・・・」
わざとだろっ

片山教授はニヤッと笑うと、ベッドで泣きじゃくる白いヤツを見下ろして、
「あんた、そこのあんた、そのベッドは悪いが僕専用なんだ。鼻水をつけないでくれたまえよ」
と、言い捨てると勝手知ったる保健室とばかりに、冷蔵庫を開けた。
「なんだ、ワインが置いてないじゃないか」
・・・

「何回言ったらわかるんですかっ


匿名希望の東山先生が、叱りつけた。
「ほんじゃ、しゃあないなあ」
あっさりと諦めた片山教授は、再び白いヤツが泣きじゃくるベッドの側に立ち、
「失恋で悲しいのはわかるが、今の君は僕にとってジャマな存在なんだ。悪いがどいてくれたまえ」
と、白いヤツを無理に起こした。
「あんたね、失恋で泣いているのかそうじゃないかの区別ぐらいつかないのっ

白いやつは、鼻の頭を真っ赤にして教授につっかかった。色が白いだけに、真っ赤な鼻の頭が目立って、痛々しい。
「悪いが失恋だね。僕にはわかるよ。田原君、君は息子に彼を生んだ母親の面影を追い求めている。息子の親離れを悲しむ以前に、いつまでもまぼろしを追い求めるのは止めた方がよいな」
と、白いやつを見もせずベッドの下に潜り込んだ。
「あ、やばっ

と匿名希望の東山先生が小さな声で叫んだ。が、白いやつはそれを無視して、
「あのね、俺、田原じゃなくて近藤。何回間違えてくれるわけ?」
「似たようなもんだろ」
と、ベッドの下からはいだしてきた。そして、その腕に抱えられたものは…。
飯の時間だ

また、明日

はいよ、けんちゃんだ。。。
チャリが盗まれたのは、1回だけじゃない。。。でも、必ず返ってくる。
持ち主孝行な愛車だ。
タコ壺保健室の匿名希望の東山先生は、持っていた担架をドサッと床に降ろすと、いきなりぶら下がっているギョロ目のカブに、パンチを食らわした。
「たいがいにせいや、いつかシバくぞこらあ」
と、もう一発食らわして、
「ああ、せいせいした」
とのたまわった。
「ひええ」
毎度のことながら、阪神ファンの彼女には驚かされっぱなしだ。
「ああ、いたの」
ああ、いたのって・・・。
匿名希望の東山先生は、何事もなかったように俺に目をとめると、
「めずらしいですね、もしかしてのぶちゃんのことかな?」
と、担架をしまいながら聞いてきた。
「いやあ、何か、情報はないかと思って」
「ないよ」
「へ?」
「へ?って、あるわけないじゃないの。あの朴念仁が保健室にくると思う?」
そらそうだ。でも、
「なんか、耳にしてない?生徒たち・・・バスケ部員とか、なんかうわさしてなかったかあ」
と、食い下がった。
「そうだねえ」
匿名希望の東山先生は、椅子に座りしばらく考えこむと、
「やっぱりないわ」
と、あっさりと答えた。
「言葉のはしはしに、なんかちょっとくらいは、ヒントになりそうなこと、言ってませんでした?」
「あったら真っ先に報告してるでしょうが。けんちゃんこそ、身近にいて何にも気がつかなかったの?他人に聞く前に、自分の脳みそにきいてごらんて」
もっともなご意見です。
「さてっと・・・」
彼女はうなだれている俺の用事は済んだとばかりに立ち上がって、ベッドの一番奥に向った。そして、思いっきり掛け布団をひっぺがすと、
「こらっ、いつまでしょぼくれているの」
と、ベッドに丸まって寝ている人物を怒鳴りつけた。
俺は、生徒かと思い、彼女のあとを追ってベッドに近づくと、そこには・・・、
「うるさい、あんたは親じゃないからそんな冷たいことが言えるんだ」
と、あの白い男がさめざめと泣きながら掛け布団を引き寄せているところだった。
こ・・・こいつ・・・また・・・細太郎ともめたんかあ。。。。
あほらしいから、明日へ続く。。。
誤解のないように言っておくけど、白衣は一週間に1回は洗濯してるからな。
春休みを控えても、生徒たちは保健室にやってくる。
惰眠

いかにも健康そうなやつらが保健室にくる目的はひとつ。
サボりたい

グチりたい

のぶちゃんが保健室でグチるとはとうてい思えないが、念のためだ。
しゃれた造りのカウンセリング研究所と一間ほどの廊下でつながれた、別棟みたいな感じでタコ壺保健室はある。ベッドの数は5つ。たいがいひとつは、カウンセリング研究所の片山教授が占領している。徹夜で論文を書き上げると、いつもこの有様だ。教授のいびき

俺は中をのぞき、生徒がいないことを確認すると入口のサッシを開けた。
と、前方に奇妙な物体がぶら下がっている。
カブだ。
カブにギョロ目の顔がかいてあって、そこに虎のマスコットが噛みついていた。
「なんじゃこれは」
俺はしげしげと眺めていたが、廊下に出るドアにタイガースののれんがかかっているのをみて、
「な~るほど」
と感心した。そこへ、タコ壺保健室の東山先生…おっと匿名希望だ…が帰ってきた。片手に担架を軽々と抱えて、
「ゆっくぞチャ~ンス~勝利を決め~ろ

と、のんきに鼻歌を歌いながら歩いている。
「あか






眠いので、続く (*v_v*)zzZ

髪の毛はいつも洗いっぱなしの立ちっぱなし。
俺は、のぶちゃんを探す前にしなければいけないことがあった。
成績つけである

そのあとに、学籍簿と指導要録なんていうのを書かなくてはいけない

テレビドラマの先生たちは、生徒をかっこよく指導しているが、あんなにうまくいくもんか

俺たちは雑用が多いし、面倒なことがあれば、こっちが悪くなくても頭を下げなければいけない。それにな、どんなに頑張ったって悪者になる覚悟をしなくては、いまどき教師なんてやってられないぞ。
予備校と違って、必ずしもやる気がある生徒ばかりじゃないからな。
と、疲れたから保健室でも行くかな。
ではなく、情報

保健室ほど、あらゆる情報が入る場所はない。ただし、養護教諭が話してくれれば・・・だけどね。
こっちも仮病を使ってベッドに寝て耳をすましていれば、聞きたくもない情報を耳にする場合もある。時々、悪口もあるけどなあ。悪口も言われているうちが花さ。いちいちガキどもが言う悪口なんか気にしていられっか。
なんだけど、注意しろよ。それが親の耳に入って、エラいめ

うちの学園内には、中学・高校・大学とそれぞれに保健室がある。それとはまた別に、カウンセリング研究所がありその付属施設にも保健室がある。通称・・・タコ壺保健室と言われているのがここだ。
ここは、体育館と正門に近いせいもあり、絶えず中学・高校生が出入りしては養護教諭に叩き出されている。鬼と言われようが、悪魔と言われようが、きっちり仕事はこなすしっかり者である

いつぞやは、息子の細太郎

情けないというより、哀れをもよおしたね。
世の父親ってのは、いったいどうなっちまったんだ?
全くなあ

細太郎

おっと、無駄話していたら時間がきちまった。
悪いが、また明日

いつも左右の靴下の色、違います

のぶちゃんの姿が見えなくなって3日後。俺は校長に呼ばれた。
校長の安部(あんべ)は、彼の祖父の代からこの学校に勤めている。祖父は、理事長にまでなったがまもなく病死し、父は理事の1人になったがやはり若くしてなくなった。 今、理事会に欠員が出ていて、父の代からのライバルの高校の副多(ふくだ)校長と激しくその空席を巡って争っている。
俺としちゃそんなことには興味がないんだが、どっちが理事会入りしたところで、大して体制にはかわりはないと思う。
むしろ、今のぶちゃんに“失踪”されて足下をすくわれたくないんだろうことぐらいは、容易に想像できた。
「で、前田先生の行方はわからないんですか?」
と、のんきな口調で聞いてきた。あんまり深刻に受け止めていないのが、その表情から見て取れた。
そりゃそうだ、いなくなったのが、あののぶちゃんだから。
でも、半分は迷惑そうだ。
「どうせなら、緒方先生、あなただけで探してもらえませんかね」
おおごとにしたくないのでね、などと組んだ手の指をぱらぱらと動かしている。
「いや、前田先生のことだから、事件に巻き込まれたってことはあり得ない、て思うんですよ」
確かにそうだけど、あいつは事件に巻き込まれるんじゃなくて、事件を引き起こす方なんだよな。
ああ見えて、結構短気でもある。
「まあ、私としても穏便にすましたいので、とりあえず、緒方先生と事務の近藤さんと2人で動いてみてくれませんかね」
近藤?…ああ、白いやつか
名字で呼ぶヤツなんかいないから、ピンとこなかったな

しかし、校長も部下がいなくなったのに、自分の心配しかしていないのかよ。
ま、期待しても仕方ないしな。
あとで、事務室でも行くか。
でも、あいつ、頼りになるのか~?


はじめまして、俺がけんちゃんだ。
妄想…じゃなくて孟宗学園中学校の教員で2年の担任で理科を教えてる。サッカー部

たまにうちの高校と合同練習するんだが、練習試合

情けねえなあ、あいつらのほとんどは、俺の教え子だぞ

俺とのぶちゃんは、中学・高校と一緒で、大学こそ違えどずっと遊び仲間だ。 のぶちゃんは中学時代は生徒会長で、女の子にモテまくりだった。かっこいい、と体育館の周りを女の子が取り囲んでいた。 いつも冷静で、淡々とくそまじめな学校生活を送っていた姿を思い出す。
今でもそうなんだが、無駄口をきかないかわりに、たまにボソッと発する言葉が的外れだったりするので、みょうちきりんなあだ名をつけられている。
まあ、当たらずといえども遠からずだな。
あいつは、ああ見えてムッツリスケベなんだ。
のぶちゃんがいなくなったのは、3月も過ぎてからだ。 これから成績をつけなきゃいけないっていうのに、全くめんどうなこった。心当たりは?ときかれても、あるわけがない。あいつは、家と学校の往復だけで、他に行くところがないんだな。
たまに、学園の体育科で飲み会

飲み仲間の高校の体育科にきいても、
「知らねえなあ」
と、体育科主任の金本先生にクビを傾げられてしまった。
のぶちゃん、どこへ消えたんだあ?

高校時代は、テニス部




現在は、サッカー大好き、J2だが地元FCつくばったイレブンスネーク


一緒にサッカー


ただし、こぶつき

昨日からの続き。
縦のもの、横にもならない唐変木な教師のぶちゃんが、失踪した。
これに頭を抱えたのが、同僚のけんちゃんだ。
けんちゃんはのぶちゃんの中学時代からの同級生で、教科担当は理科。年がら年中、ジャージに白衣、サンダル履きで起きたまんまの髪型だ。
白衣をはためかせながら、今ではみることのない昔ながらの黒チャリ

何でも家庭訪問に行った際、蔵の中に打ち捨てられていたのをもらってきたのだという。ハンドルの下からサドルの下にかけて横棒が取り付けられていて、以前は「本家山本味噌醸造」という看板がぶら下がっていた。この看板は、今では中学校の理科準備室に飾られている。
俺の校内チャリ巡りも有名だが、けんちゃんのそれにはかなわない。俺の愛車



高校の教員どもは藤川みたいな軽いやつらが多いが、中学校は一風変わった教員ばかり揃っている。その代表みたいなのぶちゃんとけんちゃんが主人公の今度の物語は、次回から本題に突入するぞ~

では、また
