こんにちは、へちま細太郎です。
午前中、剛おにいちゃんが彼女を連れて帰ってきた。
好奇心たっぷりな…というか女の子に興味のある藤川先生は、ぼくといっしょに2階からこの様子をじっと窺っていた。
「う~ん、あのへなちょこ野郎にしては、上出来だ」
と、いいつつ、
「結構タイプかも」
とつぶやくのをぼくは聞き逃さなかった。
「誰でもタイプじゃないか」
思わず発言したぼくは、ソッコーげんこつをおみまいされた。
「いてえなあ~」
ぼくは文句をぶつぶつ言って、再び階下の様子を窺った。
剛お兄ちゃんの彼女は、キャリアというだけにいかにも頭がよさそうなシャキッとした女性で、とても美人だった。
「なんであんな美人を…」
ぼくはものすごく不思議だった。
剛おにいちゃんは悪いけど一見優柔不断そうで、けっこうおっちょこちょいで、どこか間の抜けた感じがする。でも、
「近藤君は、準キャリアとしても優秀で、仕事もできます。とてもしっかりした人だと、第一印象は思いました」
と、彼女が言ったので、おじいちゃん、おばあちゃんは照れくさそうにしている剛おにいちゃんを信じられないような表情で見ていた。
「なんで?」
藤川先生も不思議そうな顔をしている。
「あの人、あばたもえくぼかなあ」
ぼくは階段に腰掛けて、ひざに肘をのせて頬杖をつきながら思わずぼやいてしまった。
「おまえのおふくろさんもそうだからなあ」
「そうなの?」
ぼくは藤川先生の口からおかあさんのことが飛び出して、振り返った。
「おまえ、こ~いっちゃんみていて思わねえの?」
「…う~ん、反論できない」
ぼくはちょっとがっくり。あたっているだけにけっこうショックかも。
「で、あなた、キャリアでしょ?いいの?こんな子で」
おばあちゃん、自分の息子だけど相手がキャリアとあって、この先が心配らしい。
「今までいろんな人みてきましたけど、結婚したいと思ったのは近藤君だけです」
きっぱりと言い切った彼女は、どうみても剛おにいちゃんの上司にしか見えない。
「近藤君ね…」
おばあちゃんは苦笑いをすると、
「私は別に反対しないし、お互いの意見を尊重するけど…」
とおじいちゃんに意見を求めると、
「俺も反対はしない。ま、しっかりやれや。ただ、なあ、婦警は苦労するぞ」
と、剛おにいちゃんに同情したような視線を向けた。
「はい?」
おばあちゃんは、じろりとおじいちゃんを睨むと、今度は彼女に、
「これからは仲よくやりましょう」
とにこやかに笑いかけた。
「はい」
彼女はとてもうれしそうに元気よく返事をした。
というわけで、今度は彼女の実家にあいさつに行くらしいんだけど、だけど、なんでこのうちには気の強い女性ばっかり集まるんだろう。
ぼくは、好みじゃないけどね。