こんばんは、へちま細太郎です。
担任の三田先生は独身です。
「彼女いないの~?」
と、たかひろ君がきくと、
「聞いてくれよ~、この前ふられたんだよ~」
と、情けない声を出してきました。
「おれな、この4月に転勤でここにきたろ、だから、彼女と結婚して新たなスタートにしようと思ってプロポーズしたのに、いやだといわれたんだよ~」
というなり、てろんと教卓にからだを突っ伏してしまいました。
なんなのこの先生…。
「みかちゃ~ん。戻ってきておくれよ~」
あ・ぜ~ん、ぼ~ぜん~。
でも、この三田先生の姿を見ていたら、誰かのことを思い出してしまいました。
ぼくのうちの、誰かさんをね。
「へ~彼女の名前、みかちゃんっていうんだ」
たかのり君がもっともらしくうなづきました。
「この学校にもみかちゃんがいるよ~」
「小学生には興味はないよ~」
三田先生は気のなさそうにいいました。
「違うよ~、おとなだよ、十分に~」
たかのり君は笑っています。
まったく、いたずら好きなんだから…。
「ほんとか~」
「ほんと、ほんと、黒い髪の美人、ほら、今通った」
たかのり君が窓の外を指さしました。
三田先生が顔を上げて指さした方向をみると、そこには、
「げっ、カラスじゃねえか」
「みかちゃんって、呼んでみ、鳴くから」
みんな大爆笑。
「おまえらあ」
と、先生が怒鳴ったのとぼくたちが、
「みかちゃあん」
と怒鳴ったのが一緒でした。
「かあああああ」
カラスのみかちゃんが、一声鳴きました。
「ぎえええええ」
三田先生は腰を抜かしてしまい、みんなまたまた大爆笑です。
「何なんだ、あのカラスはっ」
「だから、みかちゃんだよ。えさあげたら、なついちゃった」
あ、説明してませんでしたね(てか、今日思いついたまあ、お話ですから)、このカラスは、4年生が給食のあまりを放り投げて飛んでいるカラスに食べさせようとしていたら、何回かやっているうちに上手にキャッチした1羽が、このみかちゃんなんです。
ぼくらは、毎日毎日給食のパンをみかちゃんにあげました。
みかちゃんも、名前をつけてもらったのがわかったのか、1日のうち何回かは教室の窓に姿を見せるようになりました。
みかちゃんは、首をかしげて三田先生をじっと観察していましたが、ベランダの手すりをとんとんとん、とはねて、くるっと振り返って飛んでいってしまいました。
「あ~びっくりした」
三田先生は、腰をぬかしたまんま息を大きくはいて、
「カラスのみかちゃん、なぜ鳴くの~」
と、わけのわからないことをつぶやいて、また息をはきました。
そして、いきなりすくっと立ち上がると、
「さあ、教科書開いて~」
と言った。
なんなんだ、この先生。
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