へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

しんいちのうちには…

2009-08-03 21:27:27 | へちま細太郎
こんばんは、へちま細太郎です。

部活が終わって、ぼくはしんいちのうちに泊まりに来た。 しんいちにはまだ小さな弟がいるんだけど、ぼくが兄弟がいてうらやましいと思った。
ところで、しんいちがDVDを持ってきて、
「ちょっとこれを観て」
と、出してきたのは“陰陽師”だった。
「こんなの観てどうするの?」
「あの憎たらしい坊さんをやつける方法を研究するんだ」
と、スイッチを入れる。
「陰陽師ってなんなんだよ、いったい」
「ああ、それなら…」
と、しんいちはたんすに置いてあった鏡を指差した。
「げっ」
鏡を見ると、鏡にうつっているのは、
「まろじゃ、久しぶりよのぉ」
と、近衛少将さんが鏡からはい出てきた。
「これ、しんいちよ、いい加減鏡を大きゅういたせ、まろが苦労するではないか」
ぼくは近衛少将さんを指差しながら、しんいちに視線を向けた。
しんいちは画面に目を向けたまま、
「いくら言っても鏡からはい出してくるのをやめないんだ」
と、頭を振った。
「たぶん、やめないと思うよ」
「何で?」
しんいちはぼくを振り返った。
「だって、鎧甲のおじさんはテレビから這い出してくるからさ」
「はぁ?」
ぼくらは共通のご先祖さまである近衛少将さんに、呆れた視線を向けた。
「まろが何をしたというのじゃ」
と、扇をパタリと閉じて、そっぽを向いてしまった。
しょうがねえなぁ、このミーハーな平安貴族は…。

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