へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

立ち読みはいけません

2010-12-08 21:17:19 | へちま細太郎

「おまえ、何立ち読みしてたんだよ」
と、後ろの座席に座っていた(仮)有岡軍団さんが、キチローの肩を後ろからつかんだ。
「してませんよ」
キチローは真っ赤になって否定した。
「おめ~よ、毎日朝と帰りに、コンビニで立ち読みとは穏やかじゃねえぞ」
スクールバスの中はシ~ンとして、一斉に聞き耳をたてている。
「悪いこたあ、言わねえ、俺たちに言え、読んだやつやるから」
と、何を思ったかエロい本数冊を、キチローの隣の空いている席に放り投げた。
「汚すなよ」
今度は思いがけない声がした。
「それ、俺のもあるから」
「ひえええ」
水嶋先輩だ。
「先輩、ひどいわ、そんないかがわしい本読むなんて」
はるみが叫ぶ。
「うっせえんだよ、てめえは」
たかのりが1冊とって、
「俺、借ります」
「あ、じゃぼくも」
たかひろの手ものびた。
「キチロー、悪いね」
ぼくもさっきから見たくてうずうずしていたから、そのうちの1冊をとった。
「細太郎くんまで」
はるみはパニックだ。
「信じてたのに」
ばかじゃなかろうか、この女。
ぼくはパラパラとめくると、
「先輩~、胸小さいのがいい」
と、思わずいってしまい、みんなに爆笑されてしまった。
「おまえ、小さいのがタイプ?」
水嶋先輩は笑いながら、エロい本をぼくからとる。
「細太郎くん、私胸小さいよ」
後ろから高校生の先輩が声をかけてきた。
「私だって小さい」
はるみがきいきい声で叫び、
「ぼ、ぼくは大きい方がいいけど、多少小さくても…」
というキチローの発言に、
「あんたなんかの趣味は、聞いてないわよ、キモイわよ」
とさらにヒステリックな声をあげて、先輩やキチローと大騒ぎになってしまった。
きっかけを作った(仮)有岡軍団さんや水嶋先輩は他人のふり、ぼくも知らんぷり。
全く、こんな楽しい本はこっそりみるから楽しいんだ、という藤川先生の言葉を思い出していた、ぼくはへちま細太郎13歳でした。


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