かみつけ岩坊の数寄、隙き、大好き

働き方が変わる、学び方が変わる、暮らしが変わる。
 「Hoshino Parsons Project」のブログ

経済と自治の基礎単位

2009年10月04日 | 脱・一票まる投げ「民主主義」 自治への道

以前、社会の基礎単位のこととしてブログに書いた内容ですが、大事な基礎数字の意味を最近の同業者の集まりで再認識したので、もう一度整理してみます。

日本中どこへ行っても、郊外の幹線沿いは良く知れた屋号の看板が並び、他方、中心地では衰退した街中商店街が細々と営業をしている姿をみます。

たまには例外的に元気な商店街をみたい、ナショナルチェーン以外の看板の並ぶ道路を走ってみたいと思っても、すでにその望みはほとんど断たれてしまっていると断言しても差し支えないほどにまでなってしまいました。

今どき、衰退した商店街でいくら頑張っても、顧客の絶対数が足りないのだからどうすることもできないかの嘆き声が聞こえてきます。

しかし、わたしはその考え方、発想は、根本から改めなければならないと感じています。

いついかなる業種であっても、そこにお客が来なくなったのは、規模の問題でも、立地の問題でもない。そこに「競争力のある商品とサービス」が無かったからであると。

今では、その「競争力のある商品とサービス」がなければ、たとえ全盛を誇った郊外店であっても、巨大ショッピングセンターであっても、たちまちに衰退してゴーストタウンと化す時代なのです。

「顧客のために」という言葉のもとに生まれる新しいサービスは、古いものを駆逐し、やがて自らも駆逐され、次々と新しい廃墟を生みだしていきます。

そこには、必ず新しい希望に満ちた街ができるといわれながら、その一方でこれまでに作られ続けた廃墟の量に私たちはようやく気づきはじめました。

はたして、市場はどれだけ拡大してきたのでしょうか?

私たちは企業経営の側からの市場規模拡大の論理に、あまりにも引きずられてしまっていないでしょうか。

以下に紹介する数字は、そんなことを考え直してみるためのものです。

それは、


1億 → 2万 → 5,000 → 1,000 → 200 → 40 → 2~8 


という数字の流れのことです。

この話だけでも詳しく説明しているとかなり長くなってしまうので、今回は、この考えの軸になっている

1億 → 2万 

という部分に限定して書くことにします。

1億というのは、日本の人口のことです。正確には1億何全万かなのですが、
乳幼児や一部高齢者など市場に影響のない(実際にはそんなことはないのですが)人々を除いて、わかりやすい数字としておよそ1億人を基礎数字としました。

次の2万というのは、書店、もしくは小売その他の営業所数のことです。

一番わかりやすい業種で、コンビニの店舗数が全国でおよそ5万店といわれます。
どこに行っても頻繁にわたしたちが目にする業種です。

それよりも多いのが歯医者さん。
全国に7万人もいるそうです。
他の医療に比べると、ほぼ医者の数が診療所の数と一致します。

ところが、この歯医者をさらに上回る業種があるのを知って驚きました。
それは、お寺です。全国に約7万5千あるそうです。
一部、廃寺同然のものもあるにしても、神社に比べたらはるかに専業の坊さんのいる事業体としてきちんと成り立っています。

他方、わたしたちの書店業界をみるとピーク時には2万3千あまりもあったものが、今では1万6千店ほどにまで減ってしまいました。
なんと6千店以上、約4分の1といっても良いほどの数が減っています。

さらに少ない業種としては、最近話題になっている産婦人科があります。
産婦人科や眼科などとなると1万人レベルになってしまいます。

日ごろまわりでちょっと探すのが難しくなる業種というのが、この1万人代の数字になるのです。

これらの数字をみて、私たちの業界、書店を振り返るととても実感としてもわかると思いますが、
全国で2万を切ると、ちょっとした田舎になるとその業種がない地域が出てくるということです。

わたしのまわりでも、もう住んでいる街にはコンビニ以外本屋はないという地域が少なからず出ています。

こうした実感から、2万という数字が、全国どこへ行っても身近に存在するかどうかのボーダーラインであると思って差し支えないのではないかと思うのです。

これを前提に考えると、

1億 ÷ 2万 = 5,000

という数式ができます。

もちろん、都市部と山村部では人口密度におおきな違いがありますが、
大雑把にみれば、業種を問わずひとつの店が対象とする市場の基礎単位は
5000人であるとみて間違いないのではないかと思うのです。

なにも高齢化社会対策に限らず、人が地域で健康で文化的な暮らし、安心して暮らせる環境をつくるには、
人が歩いていける範囲内(半径600m以内)で生活に必要なすべてのことが満たされる社会というのが、
これからの社会を考えた場合、国や地域を問わず求められる基本思想であると私は私は考え考えています。(参照:アワニー原則)

この半径600m以内という目安とともに、大事なのが5000人規模ということです。
もちろんこれには、地域によってかなりの幅をもたせて良い数字であると思いますが、全国平均で考えるとこれはかなり妥当な数字になっていることと思います。

平成の大合併などの発想ではなく、本来の住民自治を考えるならば、あらゆるコミュニティーの基礎単位として、このくらいの規模をベースに地域社会を組み立てることがこれからの時代、とても大事なことであると考えられるのです。

現実には、どんな業種でも5000人すべてが顧客になるわけではないので、
この内の2割、つまり1,000人程度の顧客を対象にしてビジネスが成り立たないといけないと考えることが、理想の地域社会のイメージのなかでは重要になります。

今の常識からすると、それではやっていけそうにないと感じるかもしれませんが、
かつての日本社会では、決してこの数字は高いレベルではなく、あたりまえの数字でした。
いえ世界の大半では、ヨーロッパも含めて5000人規模の市場の1,000人の顧客というのは、
普通の事業規模で考える数字であると思います。

むしろ、大事なのは、5000人規模の市場で成り立たない、やっていけない業種というのは、市場規模が小さいからやっていけないのではなく、その地域の5000人の需要にそこの商品やサービスの質が応えきれていないと考えることの方が重要になってくることです。
ここが大事です。

5,000人規模の市場で1,000人レベルの顧客の需要にきちんと応えられないビジネスが地域で生き残れないのであり、規模や立地の問題は、短期的な影響は大きいものがありますが、長期的に地域に生き残っているお店をみれば、なによりも大事なのは地域の要望に応える「競争力のある商品とサービス」の開発であることに例外はないことがわかります。

新規客を増やすことよりも、今わたしたちにわたしたに求められているのは、1000人の顧客の不満を解消し、その需要にきちんと応えることです。
その能力がないまま、企画やイベント、あるいは値引きポイントで新しい客を増やしても、それが優良常連客になることはありません。

たしかに業界の問題、地域や行政の問題などもたくさんありますが、まず、自分自身の問題としてこのことをしっかりとおさえることが、なによりも重要なのではないかと思うのです。




次回に、この1000人の顧客の実質部分といえる2割、つまる200人のコアの顧客をしっかりと捕まえる店づくりの考え方として北海道の岩田書店さんのやっている顧客カルテのことや、顧客情報と結びついたPOSのことなどについて書くことにします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする