月は少しずつ地球から離れていっているそうです。
そのスピードは1年に3センチくらいずつらしい。
地球と月の間の距離が100年で3メートルと考えるとたいしたことないような気がしますが、あの山の上にかかる月が、今より3メートル近かったら・・・
ん?
細かい計算は抜きにして、ともかく昔の月は今よりもずっと近い位置にあったということです。
それはさぞ大きくきれいに見えたことでしょう。
そんな昔のはなしです。
南の島のある船乗りの船長は、地球上で最も海面が満潮で盛り上がる場所を知っていました。
船長は、その船の高いマストの先にさらに竿を伸ばし、月が最も地球に近づく日には、その竿の上からちょっとジャンプすると、月の側の引力圏に入ることができ、簡単に月にまでいくことができるということを知っています。
現代の人びとには、想像しがたいかもしれませんが、いまよりも、ずっとずっと月が近かったので、それが可能だったのです。
(余談ですが、竹取物語のかぐや姫を迎えに月からやってきた御車は、この原理で地球にやってきたのです)
月との往き来が可能であった最後の時代、
唯一月へジャンプしてたどり着ける場所を知っていた船長の話がこの本に紹介されています。
とっておきの話 (ちくま文学の森) | |
クリエーター情報なし | |
筑摩書房 |
船長はその微妙な一点に船を操作し続けなければならないので、自分は月に行く事はできず、勝手に月に行って遊んでくる船長の奥さんと船乗りたちには、いつも嫉妬していました。
しかし、月は少しずつ地球から離れていっているのです。
いつか、船乗りと奥さんの愉しみにも終わりの日がやってきます。
だいぶ昔に読んだ本なので、おぼろな記憶でなのですが、だいたいこんなようなストーリーだったと思います。
そんな昔ばなしも、今ではとても成立しがたい距離に月はあります。
月は、これからもどんどん地球から離れていってしまうのですが、ある日いつか、完全に地球の重力圏からはなれて、月が遠くに旅立つ日がきます。
そのときは、相互の引力が断ち切れる日なので、地球の海面が大きくボヨヨ~ンを揺れて波打つことでしょう。
それは大津波どころの騒ぎではありません。
みなさん、その時は十分気をつけましょうね。
ともかく、ただですら刻々と表情を変える月です。
今の月は、今しか観れないかけがえのない姿なのです。
月は物理的に遠ざかる以上に、旧暦を意識しなくなることで私達の日常では遠い存在になってしまいました。
せめて、わたしたちの住む月夜野町だけは、遠ざかる月を少しでも身近な存在として引き止めておきたいものです。
例によって、予想される突っ込みどころには、いっさいお応えできませんので悪しからず。
他方でこうしたことがらを、真面目に科学として真正面から研究した本があります。
もしも、月がなかったら?
もしも月がずっと近い位置にあったなら?
もしも月が2つあったなら?
もしも地球の地軸が今より90度傾いていたなら?
こうした問いに科学者が真剣に答えるかたちで、あたりまえと思っている今の世界が
異なる環境におかれていたならば、自然の姿はどのように変わっているか。
大気の流れは?
地殻の変動は?
生物進化の歴史は?
人類の誕生とその後の発展はどのように変わっていたか?
一日の姿はどのようになっていたか?
・・・・等々
天文学、物理学、 生物学、環境学などあらゆる知識を総動員してわたしたちに未知の世界像を教えてくれます。
それはまるでデズニーランドのアトラクションのように、スリリングな知の世界を楽しませてくれます。
ニール・F・カミンズ著 竹内均監修『もしも月がなかったなら』東京書籍
ニール・F・カミンズ著 竹内均監修『もしも月が2つあったなら』東京書籍
(2015年10月18日 訂正加筆)