およそのことですが、20年後のはなしです。
人類による環境破壊がすすみ、地球温暖化の危機が叫ばれたが
世界は、単純な温暖化にはすすまず、
気候変動が激しくなるばかり。
猛暑がきたかと思えば、翌年は記録的冷夏。
暖冬になったかと思えば、また寒波、豪雪の記録更新。
世界経済ばかりでなく、地球環境も
この30年で随分暮らしにくい過酷な環境になってしまった。
暑いのも寒いのも困るが、
年寄りにとって寒いのに加えて大雪が重なると
暮らしに様々な致命傷をもたらす。
雪下ろしなどは、
毎年記録を更新するような積雪量ともなると
行政の補助にも限度がある。
そこで、寒さに耐えかねた月夜野町の住民、
とりわけお年寄りたちは、集まって対策を考えた。
わが町が日ごろ贔屓にしているあの山の上のお月さんだが、
この際、かれにも人肌脱いでもらおうではないかと。
かれこれ60年以上前のことだが、
アポロ11号が月面に下り立ったときのこと覚えているか?
アームストロング船長が月面をふわふわ歩いたとき、
地面にホコリがいっぱい舞っていたのを見ただろう。
あれは、砂じゃなくてホコリのようなものだそうだ。
月はレゴリスと呼ばれるメリケン粉のようなふかふかした粉でおおわれているのだそうだ。
成分は球状のガラス玉が多く含まれているらしい。
隕石の衝突によって融けたものが吹き飛び、その間に冷え固まったものだそうです。
その他には、黒っぽい火山岩からなる玄武岩の破片、
マグネシウム、カルシウム、鉄などを含む輝石、
地球では珍しい斜長石などが含まれている。
そこで相談だ。
ふだんあれだけわが町を煌煌と照らしている月の表面の
あのホコリを綺麗に取り払うことができたら、
月面の輝きは、どれだけ増すと思う?
明るさだけじゃなく
太陽の反射は、相当増すとは思わないかい?
夜の気温を相当上げられるとは思わないか?
なるほど。
と住民一同は、すぐに納得。
直ちに、みなかみ町に計画書を提出。
月への往復ロケット代のみ、景気が良くなったみなかみ町の予算で出してもらい、
宇宙服のレンタル料、往復の弁当代、
月面の掃除道具、箒と雑巾が住民ボランティアの負担。
(のちに、月への往復ロケット代には、総務省の環境危機対策支援交付金が使えることが判明。
町の負担は3分の1で済んだ。)
趣旨への賛同者、平日でも休める年寄りを中心に30人ほどの有志をつのる。
30人という枠は、ロケットの乗車最大定員。
それでみんなで行って月面の表側のホコリを
箒で月の裏側にみんな掃き寄せてくる。
その上を雑巾の乾拭きでピッカピッカに磨いてくる。
そのくらいやれば、夜の反射率は相当あがり、
地球の温度をかなり上げる効果があるのではないか。
暑い夏は、またみんなで月へ行って
裏側に掃き寄せたホコリを表側に戻してくる。
年2回、われわれは行政の金使って月旅行が楽しめるってわけだ。
ただ遊んでこようってのじゃなく、
これは立派な社会貢献。
月まで行って、掃き掃除、拭き掃除にもかかわらず、
応募は殺到すること請け合い。
かくして月夜野町が提案した「お月さまお掃除プロジェクト」は、
住民の予想に反して、人類を救う一大プロジェクトとして、
ノーベル賞を授与される。
追記・訂正
後に、このレゴリスという表面の物質は、月の光の反射には障害になるどころか、大事な反射機能を持っていることを知りました。
理解の浅い戯言、ご容赦ください。
念のため、
予想される細かい突っ込みは、
一切お応えしませんので、あしからず。
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