「月夜野百景」http://www.tsukiyono100.com/#!autum/cwe3 のホームページで使用する秋の月見のいい写真がまだなかったので、中秋の名月に妻がお供えを用意してくれるときにあわせて、それらしい演出をいろいろ考えていました。
お供えに相応しい雰囲気を出すには、やはり三脚型の燭台が一番良いのではないかと思い、中秋の名月と地域の観月イベント「指月会」にあわせてつくってみることにしました。
ところが、ネットで検索しても、この三脚構造の燭台の情報や写真がなかなかみつかりません。
最初は角棒を3本交錯させてつくってみたのですが、どうにも3本の交差部分が、角材ではうまくまとまりませんでした。
あらためて直径15mmの丸棒を買って来て組んでみました。
やはり、きちんとした交差のさせかた、固定の仕方が理解できていないと、三脚の上に水平部分をつくるのは容易ではないと気づきました。
最初は板を三枚重ねて厚みをつけて、3本の脚が交差する角度で穴をあければよいと思ったのですが、どうにも、この角度で穴をきちんとあけることは簡単ではありません。
結局、この方法は諦め、板は薄い一枚のままで穴にはアソビをもたせるようにして、穴の角度の厳密さは追求しないことにしました。
板の部分の固定がゆるくなったため、この交差部分をワイヤーできっちりと縛りあげることにしました。
でもワーヤー剥き出しでは、黒色のワーヤーを使ったとはいえ、せっかくの和風の仕上がりが色あせてしまう。
そこでホームセンターで園芸用の棕櫚縄を買って来て、上からさらにまきつけてみました。
ところが、やっぱり3本が交差したこの複雑な構造にきれいに巻き付けるのはなかなか難しい。
昔の職人は、こうした部分の仕上げがとても美しい。
とりあえず、ここはこれ以上深追いはせず、次の作業にすすむ。
明かりで使う蠟燭は、煤が出ず長持ちするホンモノの和蠟燭といきたいところですが、高価なのでカタログ値で24時間もつというカップ入りの蠟燭を使うことにしました。
いづれ、ホンモノの和蠟燭そのものの魅力を紹介できる機会もつくりたいものです。
覆いは、手作り枝折用にかつて買ってあった和紙風デザインのA4厚紙が何種類かあったので、それを適当に丸めて底の部分が水平になるようにカット。
丸めた紙は、とりあえずホチキスで止めてみましたが、仮の固定方法のつもりが結局それがそのまま仕上がりになってしまいました。
脚の長さは、「指月会」会場のお寺のような広い部屋で使用する高さのあるものと、家で使用するような低いものを1800mmの長さから2本とって、2種類4台を作成しました。
この燭台は、デザインで雰囲気を出すことを第一に考えてつくったのですが、実際に出来あがって使用してみると、その明かりの非日常的な美しさは目をみはるものがありました。
それと、よく化け猫が出てきてなめるような、お皿に油を入れて灯心だけを出したかたちのものがこれ。
和ロウソクを使えば、炎も大きく明るくなりますが、コストは高くなります。
そもそも観月とは、明かりのない闇夜に月明かりが際立って冴えわたることにこそ、その魅力があるものです。
いくら観月イベントとはいえ、照明を煌煌と照らした空間では、とてもその本来の雰囲気は味わえません。
そればかりか、夜の魅力そのものにも気づけません。
暗いものをただ明るくすることの一方向にしか気が向かわない太陽偏重の思考に、月までがあわせさせられるかのような月見から、こうした仄かな明かりは、月に相応しい夜の感覚を取り戻し気づかせてくれます。
もっとも、お月見の行事も都会ほど昔から灯籠の明かりをともしていた面もあります。
では、お月見にはどのような明かりのともし方が相応しいのか。
部屋のこの燭台の飾り方が、明るさを確保するためには4本立てたいところですが、お供えの雰囲気づくりには左右2本がいい気もします。
そうしたことのひとつの参考事例が、日ごろお世話になっている〈月の会〉の志賀勝さんの『月の誘惑』(はまの出版)のなかで紹介されていました。
1830年の『清嘉録』には次のように書かれている——。
「十五夜の夜を、また俗に『燈節(とうせつ)』と呼ぶ。各家とも二本の大きな蠟燭を正面の間に燃し、筵席(えんせき)を設けてたがいに招き宴賞しあう。また神祠や会館でも鼓楽をなして宴飲し、華燈籠(かざりどうろう)が万盞(油の皿)も掛けられる。これらを『燈宴(とうえん)』という。(以下略)」
とりあえず、堅苦しい決まりは特にあるわけではないらしいので、その時々の部屋の使い方に応じていろいろと試してみることにしました。
この時のお供えに使ったのは、蕎麦がき団子です。
のちに蕎麦がきは日保ちがしないので、芋名月にちなんで里芋に変えてみました。
これが後の十三夜には、栗に変わります。
おかげで今年の中秋の名月は、かつてないほど空も冴え渡り完璧な月だったこともあり、「指月会」のイベントお手伝いの前に妻と二人で最高のひとときを過ごすことができました。
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