花の四日市スワマエ商店街

四日市の水谷仏具店です 譚

海老錠騒動記

2006年05月08日 | わたくしごと、つまり個人的なこと

先日お客様から電話があった。半年前に買って頂いた神棚の海老錠が開けられないので何とかしてほしいということだった。
老錠とは江戸時代の錠前のことだ。現在では寺社や神殿に使われている。中がバネになっていて、耳かきに様な鍵を右側から差し入れ、中のバネをすぼめてそのまま左側へ押し出すと錠が開く。中の仕掛けであるバネが、海老のようにはじくところからこの名前がつけられた。
、えらそうに言っているが、実は開け方を忘れてしまった。鍵を差し込んでどうしても回したくなる。横で奥さんがわいわい騒ぐ。中の御霊が取り出せないのでどうしようとしゃべってくる。
明書きには、開け方が書いてなくて、お参りのときは前もって開けておけとある。無責任な説明書だ。パズルをやっているのではない。脂汗が流れる。中がどうなっているのかぶち壊して見てみたい。20分後、ようやく思い出して開けることができた。
倉院の錠も海老錠だ。中国からハイテク技術として伝わった。この頃から明治のはじめ頃まで約千年間、たいした進歩もしないで使われてきた。進化させる必要がなかったのだ。近年でこそ、盗難から守るためのいろいろなキーが作られてきているが、昔はそれほど物騒でもなかったということの証だ。今でも田舎では家の戸に鍵をかけていないところがある。
製の雨戸は、ほぞにさんを落とし込むことによって開かないようにした。「落とし猿」と呼ばれて、この四角いサンを猿というそうだ。落とし猿は中からかける錠、錠前は外からかける錠だ。
び心満載の江戸人は、海老錠にいろいろな細工を施した。魚やナスやカブトムシ、海老や蝉やトンボなどの形をした錠が残されている。大切な宝の箱に風流な錠前が施されていた。
う二度と、海老錠の開け方は忘れない。