花の四日市スワマエ商店街

四日市の水谷仏具店です 譚

黒澤明監督「用心棒」の真実

2008年04月22日 | わたくしごと、つまり個人的なこと
          
昨日のテレビで、黒澤明監督の「用心棒」の映画のことが出ておりました。
三船敏郎扮する三十郎の強敵役に、仲代達也が抜擢されている。
強敵、卯之助は懐に持つピストルで三十郎に立ち向かうのです。なんぼ剣がたつ三十郎でも、これは手ごわい。
さて、仲代が監督に呼ばれていくと、なんと監督は前作の「七人の侍」で通行人として5秒間出演したただけの仲代を覚えていたというのです。
これだけで仲代を見込んだ黒澤監督は スゴイ!と番組で報じておりました。
ところが、実際はどうだったでしょうか?
ここに朝日ソノラマ 都築政昭著「黒澤明と用心棒」という本があります。実は図書館で借りてまいりました。
          
スーパーマン三十郎の一人天下では映画が面白くない。そこで卯之助が考え出された。ライバルは三十郎よりも若く、不逞な輩でなくてはならない。
黒澤は卯之助役に三橋達也を予定したのです。ところが、衣装合わせまですすんだところで頓挫した。
実は東宝映画の重役である藤本さんと、黒澤監督の間に軋轢があり、藤本さんのおかげで東宝入りした三橋は、顔を立てて彼の企画中である映画に乗り換えてしまった。黒澤監督は出鼻からくじかれたのであります。
しかし、これで諦める黒澤ではない。
当時、仲代は俳優座出身で「人間の条件」に出演、人気を集めておりました。
前作「悪い奴ほどよく眠る」のとき助監督の森谷司郎が、主役を三船ではなく仲代にしてはと提案していた。しかし、黒澤の映画に三船は欠かせない。森谷案は消えた。
そのとき、黒澤は「俺は仲代は嫌いだ」とおっしゃったそうな。
さて、これでも、5秒間出ただけの仲代を覚えていて、黒澤監督が仲代を抜擢したという、感動のお話になるか否か。
真実は、遠い闇の中であります。