貧乏神“金無幸子”と共になぜかハローワークへ出かけた勤太郎。
「あ、あと貧乏神に好かれそうな人はこの場所にいるのかな」
幸子さんは顔をあげて周囲を見渡した。そしてある人のところで視線を止めると目を輝かせた。
「あの人です」
その人は職員の人と話しながらずっと不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「どうしてあの人が貧乏神に好かれるの?」
「それはあの人が“お客さん”になっているからですよ」
「お客さん?」
「はい」
幸子さんはうなずいて言った。
「多くの人が“お客さん”というのは単純に“お金を払う人だと思っていますが、それは違います。たとえばお金を払って食べ物を買ったとしても、食べ物を売っている人に“ありがとう”とか“おいしかったです”とか声をかける人は店員さんを喜ばせています。そうではなくて、“お金を払っているんだから喜ばせてもらって当然”と考えて偉そうな態度をとる人が“お客さん”なんです」
そして幸子さんはフフフと笑った。