ヒュースタ日誌

相談機関「ヒューマン・スタジオ」の活動情報、ホームページ情報(新規書き込み・更新)を掲載しています。

コラム再録延長(3)『「受容」とはどういうことか』

2013年02月27日 11時51分59秒 | メルマガ再録
 当メルマガ8年目の最後の号になりました。

 この8年間、151本のコラムをたくさんの方がお読みくださり、それぞれ参考にしてくださっていると思います。そして、お立場により状況により、読み取り方もさまざまだと思います。

 前々号で私は「いつまで同じことを続けなければならないの?」という親御さんの言葉に対して、第一に「納得できる対応を見出すことが必要」と、第二に「どんなに適切な対応であっても、効果が出るまでにはタイムラグ(時間のずれ)がある」とお話ししました。

 なかでも第一の説明のなかで「まずはその指示の真意をさらに問い直すこと(誤解なさっている方もいらっしゃいます)」と提案しました。

 と申しますのも、親御さんが「いつまで同じことを続けなければならないの?」とおっしゃりたくなる理由のひとつに<受容><肯定>といった用語を誤解なさっているケースがあると感じるからです。

 たとえば、当メルマガやそれを活字化した「ワンポイントブックレット」の読者のなかに、対応に関する私の意見を「本人のしたいようにさせておく」とか「本人が気づくまで放っておく」などと読み取り「それに従ってわが子の荒れに耐えているが、そういう対応をいつまで続けなければならないのか?」とおっしゃった方がおられるのです。

 確かに、私は「不登校・ひきこもりの“終わらせ方”はない」「堂々巡りは本人にしかやめられない」などと「本人しだい」であることを強調してきましたし、111号では「無条件の肯定です。寄り添い続けるのです」と書いています。

 そのあたりを捉えて「本人に働きかけてはならない」「本人に何をされても止めてはならない」などと読み取ってしまわれている方がいらっしゃるのかもしれません。

 ほかにも、かつてインターネットのある掲示版で「<受容>という言葉を自分に言い聞かせて、わが子からの暴力や使い走りさせられることに耐えている、でもこのままでいいのかとも思う」という親御さんの書き込みを見たこともあります。

 <受容><肯定>などの言葉の難しさ、危うさを自戒させられる思いです。

 ちなみに、私は<肯定>という言葉はよく使いますが、当コラムのなかでは<受容>という言葉は一度も使ったことがないと思います。

 そこで、私が考えるこれらの言葉の意味をご説明します。

 もともと不登校・ひきこもりは、一般に「周囲の対応・支援によって直すべきもの」「一日も早く本人を学校/社会に復帰させられる即効的な対応・支援すべきもの」などと捉えられています。

 それに対して私は「本人の生きざまであり、無理にやめさせるべきものではなく、本人が自分の足で踏破する(歩き通す)ことを応援すべきものである」と考えています。

 そのため、相談場面でも当メルマガでも「本人の気持ちを理解し、その意思を尊重しながら、本人にも周囲にも無理のない自然な対応を積み重ねる」という考え方とその方法を、繰り返し提案しているわけです。

 このような言説には、確かに<受容><肯定>などの言葉がよく似合います。
 ただし、重要なのはその中身です。すなわち「何を<受容>するか」「何を<肯定>するか」ということです。

 123号で述べた「青少年の心には二つの窓口がある」を、ここでの説明に適した表現に書き変えてみましょう。

 ――人の心には、相手の言動(発言と行動)を受け取る<行の窓口>と、相手の心情(愛情や気持ち)を受け取る<情の窓口>があり、<行の窓口>は「意識」に、<情の窓口>は「無意識」に通じている。

 ――そのため、相手の言動(発言と行動)は「意識」に届くからすぐ気づくが、相手の心情(愛情や気持ち)は「無意識」に届くからすぐには気づかない(「無意識」の部分は自分では気づきにくいから)。

 どうでしょうか。「本人を受容/肯定する」と聞いて、わが子の言動(発言と行動)を「受容/肯定する」と解釈なさってはいないでしょうか。

 本人が望んでいるのは「自分の言動(発言と行動)」ではなく、その奥底にある「自分の心情(愛情や気持ち)」を「受容/肯定する」ことなのではないでしょうか。

 たとえば、暴力や暴言、無茶な要求を受け入れ続けていて、それらがエスカレートしたり、いつまでたっても止まらなかったりしていないでしょうか。

 そのときの本人は「のれんに腕押し」の心境かもしれません。「親が反応しない」あるいは「親が心にもない反応を返している」と感じるからです。そういうもどかしさから、ますますいら立って「これでもか、これでもか」とエスカレートしたり際限なく続けたりするのではないでしょうか。

 つまり、本人がそのように感じるのは、親御さんが本人の言動に対して、ご自身に生じた感情を無理に抑えている結果、本人との「心情の交流の回路」が閉ざされているからではないか、と思われるのです。

 本人の暴力や暴言、無茶な要求は、本人の心情(焦りや自己否定感や理解してほしい気持ちなど)の表現なのです。だとすれば、それに対する親の心情が返ってきて初めて、本人は親と心情で交流している実感が得られ、徐々に感情がやわらいでいきます。そして本人が求めているのは、親の「わが子の心情を受容/肯定しようとする心情」なのです。


2010.9.8 [No.181]


「肯定」のほうについて書かれている号をあわせて読む
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コラム再録延長(3)掲載のお知らせ

2013年02月27日 11時32分58秒 | メルマガ再録
 去年10月から3か月間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』の創刊10周年を記念して本欄で実施していた「コラム再録」を3か月間延長のうえ、半分の頻度で実施する「コラム再録延長」の3回目です。


 きょう転載するのは『「受容」とはどういうことか』。親御さんによる不登校・ひきこもりへの対応でよく言われる「ありのままを受け入れる」ことを示すこの用語。しかしその意味を取り違えると、かえって親子ともども苦しむことになる、ということを親御さんの実際の言葉を引いて訴えています。

 この文は、メールマガジン配信サイト「melma!(メルマ)」の当メルマガ案内ページにあるコメント欄にも感想が載ったくらい、少なからぬ親御さんの心を動かしたようです。

 不登校・ひきこもりのわが子が荒れていることでお困りの親御さんはもちろんすべての親御さんに、わが子と接する際に心がけるべき点のひとつとして、ぜひ読んでおいていただきたい一文です。


 では、このあと掲載します。
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「第19回青少年支援セミナー」開催要項発表

2013年02月20日 17時08分30秒 | ホーププロジェクト
 当スタジオ最大のイベント「青少年支援セミナー」の要項が確定し「業務カレンダー」に掲載しました。

 今回のテーマは「不登校・ひきこもりからの生き方を考える」。「支援を受けて学校/社会に復帰して人並みに雇用されて自立する」という社会通念が求める生き方を問い直し、当事者に合った生き方とそれを応援する周囲の対応や支援そして社会のあり方を提言するべく、前回同様不登校・ひきこもりの経験者が全プログラムに登場します。

 顔ぶれは前回と同じで、代表の丸山、精神科医の斎藤環氏をはじめ各方面から絶賛されている『安心ひきこもりライフ』の著者である勝山実氏、同書の編集者であり不登校経験者の伊藤書佳氏、不登校・ひきこもりをはじめ<若者の生きにくさ>について発言している林恭子氏、の男女2名ずつです。


 1日目は「講座」で『不登校・ひきこもりの支援再考』をテーマに2講座を開講。元気になっても支援を受けられない当事者の心理と周囲の対応・支援のありようから、支援を受けやすくなる条件を探る丸山の講座と、支援者が掲げる「当事者の意思を尊重した支援」を問い、当事者の意思とは何かを追究する社会学者の石川良子氏(後半で丸山と対談)による講座です。

 いずれも、不登校時代にカウンセラーから不適切な対応を受け、ひきこもり時代に支援を一切受けなかった丸山の問題意識が反映され、この日のテーマどおり支援を再考し新たな視点を得ていただく日にすることをめざしています。


 2日目は「シンポジウム」で、例年どおりの「代表講演」に加え、前回同様不登校・ひきこもり経験者4名による「当事者トーク」を実施。今回は最初に「不登校組」と「ひきこもり組」に分かれて体験を語ったあと、全員で多様な生き方を可能にする周囲の対応や支援、さらには社会のあり方を提言します。また今回は、テーマに合った団体の紹介も行います。

 “総論”が語られた前回の内容をベースに、今回は支援や社会に新機軸を打ち立てるための“具体策”が語られ、実際に新年度からの新しい動きにつなげるスタートの日にすることをめざしています。


 今回も前回同様、親御さんや関係者、関心ある市民・学生の方に加え、当事者の方もふるってご参加くださることを願っています。そのため割引システムをご用意していますので、ぜひご参加のうえご意見をくださいますようご案内いたします。

 なお、詳細は当事者トークの各パネラーの来し方と将来像を並べた一覧表を掲載した案内書をご請求いただくか、3月中旬に配信予定のメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』号外をご覧ください。 

 このセミナーは、18回目の前回から、開催時期を3月に、内容を「講座」と「シンポジウム」の2本立てに、それぞれ変更。開催時期の関係で名称を「青少年支援セミナー20○○」から、最初の数回使っていた「第○回青少年支援セミナー」に戻したものです。


1日目の要項を見る

2日目の要項を見る
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『ごかいの部屋』第198号配信

2013年02月14日 14時08分35秒 | ホーププロジェクト
 きのうの夜に配信しました。

 今号のコラムは、親子間のコミュニケーションを「日常会話」「深い話」「本題(核心)」の3段階に分け、順に定着させていくことを勧めた前号の内容を受けて「日常会話がなかなかできない」「深い話から先に進めない」というそれぞれのお悩みに対応する会話のコツを、ひとつずつ提案しています 。

 コラムタイトルにある「報・連・相」は、組織で働いていらっしゃる方ならよくご存じの「報告・連絡・相談」の略語ですが、これを前者の場合に応用することとその意味を、次に後者の場合に気をつけるべきことを、それぞれ述べています。

 コミュニケーションをやり直す段階と詰めの段階、それぞれの留意点がおわかりいただける一文です。わが子との関係づくりにお役立ていただければ幸いです。


『ごかいの部屋』198号を読む
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業務カレンダーに2月の予定を掲載

2013年02月06日 14時45分59秒 | ホームページ
 極寒のなか、いかがお過ごしでしょうか。

 さて、遅くなりましたが今月の業務日程を入力しました。

 今月は原則休業日のなかにご利用可能な日を多くとることができましたので、それらの曜日にお問い合わせやご利用をご希望の方はご確認ください。

 また、代表の研修により業務日のうち2回の土曜日を臨時休業させていただきます。

 なお、第2水曜日はメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』の配信日、第4水曜日はその創刊10周年記念企画「コラム掲載延長」の3回目です。ご関心の方は第2・4水曜日の日付をクリックしてご確認ください。


2月の業務カレンダーを見る


【業務カレンダーの表示について】

 原則休業日は「ご予約が入っていなければ休業できる日」という意味であり、必ず休業するわけではなくお問合わせ・ご利用が可能な日がありますので、可能かどうかをカレンダーの日付をクリックしてご確認ください。

 業務のお知らせを掲載した日は、それ以外(休業日など)のお知らせがシステム上掲載できませんのでご了承ください。
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