
ニューズウイークに「米海軍の「海水燃料」がもたらす大変革』と言う記事がありました。さて凄そうな話ですね。
米海軍研究試験所によれば、新しい燃料は当初、1ガロン(約3.8リットル)当たり3~6ドルほどのコストがかかると見られている。同試験所はすでに模型飛行機の飛行実験を済ませている。
海水から二酸化炭素と水素ガスを抽出する方法を開発したことで実現した。ガスは、触媒式排出ガス浄化装置を使って液体にする過程で燃料に変えられる。
さてこの技術ですが、いくつかの問題があります。まずなぜ海中から二酸化炭素と水素を取り出すのかと言う事ですが、空中から取り出した方が早いのではと思うのですが、液体から気体を分離する方が簡単です。本来水の中に溶け込みにくい、気体が何らかの理由で溶け込んでいるだけで、水分子と結合しているわけではないので取り出しやすいわけです。空気中のはそれぞれの沸点以下にするとか冷却にもの凄いエネルギーがからります。
実はこの辺りに革新的な技術があるのだと思います。
で、次なのですが「触媒式排出ガス浄化装置を使う」とあります。これってかなり古い技術です。もう40年前からある技術なのですがコストが見合わないと言う欠点があります。メタン程度だったら何とかなりますが、灯油程度の大きな分子を作るとなると、多段回の触媒反応を使うんだろうな~と推測されます。どの程度の反応器が必要なのかは良くわかりませんが、炭素数が10から15当たりとなると最低7段の反応経路が必要になるのでしょう。
何を言いたいかと言えば、とても安定した物質の二酸化炭素と水素分子を触媒を使って反応させても、1炭素か2炭素数のメタンかエタンしか出来ないわけです。で、これらも安定した物質なのでそれにまたもう一つとか炭素をつけて行くには、更にエネルギーが必要になります。
とはいえコストが1リッター当たり100円から200円と言う破格値で出来ると言うので、この触媒反応も画期的な革命があるのでしょう。古い反応経路では高温・高圧が必要だったので、ここのかかるエネルギーコストがかなり削減されていると考えられます。

ただ、それでもエネルギー収支はどうなっているのでしょうか。理論的には灯油1リッターを完全燃焼させたエネルギーと同じエネルギーが必要です。でも装置にはエネルギーロスが必ずあります。特にこの場合の多段反応器を使うであろう、この経路だったら100倍以上のエネルギーが必要でしょう。
革命的発見で10倍程度まで押さえられたとしても、1リッター当たり100円は無いよな、そうなります。
多分コスト計算で、装置以外の何かが抜け落ちています。何でしょうか。まずは装置を作るエネルギーコストが全く抜け落ちているのでしょう。
あとは電気代です。多分これです。なぜ電気代を考えなくていいのかと言えば、原子力空母に搭載する事が前提の技術だからだと考えています。空母中の電気代は存在しないからです。
原子力の欠点は、その毒性もありますが、一端動かしたら出力調整が難しい事です。その過剰電力を使ってジェット燃料を作ろうと言う発想なのでしょう。
メリットは大いにあります。燃料の純度がとても高いと言う事です。硫黄や金属類の全くない燃料です。飛行機のエンジンの寿命を長くする効果もあります。整備もかなり楽になると思われます。
今あるエンジンに対しても、化石燃料とのブレンドでかなり良質なジェット燃料を作れると思います。そういった目算があっての計画であって、全くの革新的な発明ではないと思います。
PS
一番最初の植物ですが、ハシリドコロだと言うのが解りました。