今日は31度を超えた。ついに夏なのかと思いたいが、まだ梅雨前線は関東より北にある。来週はこの前線が上がって来るために、雨が続くことになるだろう。その直前の毎年恒例の真夏日だ。だが夜温が下がらないのがキツイ。
ニューズウイークに日銀の原田泰審議委員がヒトラーを礼賛したと受け止められる記事が載った。
「彼が正しい財政・金融政策をしてしまったことによって、なおさら悲劇が起きた。ヒトラーより前の人が、正しい政策を取るべきだった」と語った。」
ここが問題なのだろう。で、早速ニューズウイークに反論が載った。田中英臣氏のコラムだ。
「そもそもドイツでハイパーインフレが起きたのは1910年代の末であり、ナチスが政権を奪取したのは1934年であり、ハイパーインフレから15年も時間が経過している。1920年代はワイマール共和国の時代であり、なんとか平和が維持されていた、それが崩れたのは1930年代の大恐慌というデフレと失業の時代ゆえであった、というのが原田審議委員の着眼点だ。インフレではなく、デフレこそナチス台頭の経済的原因であったということだ。」
どうゆうことかといえば、敗戦後のドイツでは物資の不足からハイパーインフレが起きた。これは日本の第2次世界大戦後もそうだったからわかりやすい。そこでデノミや貨幣切り替えの荒治療をして小康状態になったところに、アメリカ発の金融大恐慌が起きた。資産が損壊したのだ。これにより需要が激減、実はデフレが蔓延した。これに対する世界各国の対応がまずかった。イギリスは比較的正しく行動できたが、アメリカは金融緩和を簡単に離脱してさらに問題を大きくした。日本は確かこの時金本位制に戻して傷を深くした。
この時ナチスドイツは、需要と供給のギャップを埋める財政出動を徹底した。アウトバーンの建設等だ。なおフォルクスワーゲンについては国民車として設計されたが、その後あっという間に戦争経済下になるのでこの事業は、国民生活にはあまり貢献しなかっただろう。
「そもそも、ヒトラーの前の政権が、金融を緩和し、デフレから脱却すればよかっただけの話である。そうすれば、失業率は低下し、人々は理性を取り戻し、人種差別や世界征服を呼号するナチスに投票などしなかっただろう。ヒトラーは政権に就くことができず、第二次世界大戦は起こらなかった」
実はこの議論、経済学を学ぶものにはかなり知られた話だ。イギリス発のケインズの考えを大々的に使って成功したのがドイツだったからだ。アメリカのニューディール政策も規模としては足りなかった。
これを話しただけなのだが、ナチスという言葉を出しただけでアウトなのだ。
言葉は難しい時代になってしまった。森元首相は、ほとんどこの言葉尻だけで失敗し続けている。全文を読むと大したことではないのだが、言葉尻だけで大問題になってしまう。そう言った時代でもある。
だがナチスを引用する場合は細心の注意が必要だ。なぜならナチスは全面的に悪とされてしまっているからだ。現実的にアウトバーンの計画もフォルクスワーゲンの計画も、戦争準備のための政策でもある。一石二鳥の政策でもあったのだ。いや3鳥とか4鳥の政策であった。この政策が成功したが故に後年の悲劇が起きる。これも間違いがない。
だがここでは日本の極右翼化を世界が考えている象徴として捉えられてしまったのだろう。実はこれが最大の問題なのだ。
確かに日本で今起きていることはいいことではない。しかし大多数は極右から程遠い。
それでも世界は日本は極右に傾いていると思われているようだ。
このナチスの経済政策については、マキャベリが、そうナチス以前のイタリア人が言っている。善政が続くと大衆の感覚が麻痺して、悪いことが起きるのを見逃してしまう、そう言ったことを言っていた。そのままだ。それでは日本の現状は?これは善政なのかな?
トランプさんが二つのことを一気にやった。対中国だ。一つは台湾への武器売却。もう一つは北朝鮮制裁への中国への対応の甘さを問題にした、中国銀行への取引制限だ。
この二つが間違っているわけではない。だが、なぜ中国に甘い顔をして見せたのかな?国際政治で一番やってはいけないのは、適当で場当たりな対応だ。もちろん圧倒的に力量が違えば話は違うが、それでも恨みを買ってはいけない。
アメリカとしては、大国である故に最初っからスタンスを決めなければいけなかったのに、なぜこの今?
なんで習近平主席が香港に行っている時にやるの?
誰も言わない。えらく残念だ。
国家を商取引のように扱うことは、その国家の人民をそう扱うことと同義だ。だから曖昧なら曖昧でもいいんだけど、強国であれば絶対やってはいけないことを平気でやってしまった。
まあ、世界は今無理やり安定しているな。