「あきらめない鍛え方」の副題がついた『全盲の僕が弁護士になった理由』を読みました。
著者、大胡田誠さんは先天性緑内障で、12歳のとき視力を失う。1977年静岡生まれ。筑波大付属盲学校から慶大(法)、同法科大学院を経て5回目で司法試験をパス。全盲の人では全国で3人目。
ITの進歩で、好きな本がスキャナーと画面読み上げで可能になったのが1997年。このころから健常者との情報格差が大幅に縮まったという。
「悪意のある差別」はめったにないが「めんどうなことには関わらないでおこう」とする遠巻きの「悪意のない差別」は今も壁になっている。
大学での授業中、ノートを点字で取る音がうるさくて迷惑との苦情があると言われ、教授から座席の移動を命じられたが、「席を移る必要はない」と教室にあちこちから声が上がった・・そして臨時クラス討論に・・詳しいことは本書お読みいただくとして、この場面は私も涙が止まらなかった。
奥さんも未熟児網膜症で目が見えない。2011年3月には長女こころちゃんを出産している。
世界70億人のうち10億人は何らかの障害があるという。日本では身障者366万人、知的障害者55万人、精神障害者323万人、公的認定だけで人口の17人に1人が障害者。
大胡田さんは、国選弁護人としてある受刑者と10回接見した。当初、心を閉ざしていたその人が全盲でがんばっている弁護士の姿をみて次第に勇気づけられ変化していく様子も感動的でした。
盲人には点字だけの司法試験の方法をパソコンや電子データでも回答できるよう「耳で受験」を法務省に申し入れたのも著者、大胡田さんだ。
世の中には孤独に打ち克ち努力を積み重ね、逆境の環境をプラスに変えて進んで行く、どこまでもあきらめない立派な人がいることを改めて知らされた。
全盲の僕が弁護士になった理由 | |
大胡田 誠 | |
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