東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

今戸人形「大黒天ねずみ」(尾張屋春吉翁 作)

2012-10-25 20:16:48 | 今戸人形(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

P1010934今戸焼の土人形の最後の生粋の作者と言われた尾張屋・金澤春吉翁(明治元年~昭和19年)のお作りになられた人形です。

いで立ちは今戸焼の人形の中でも特に知られている「口入稲荷の男狐」に似て裃姿。但し手にしているものは絵馬ではなくて二股大根に宝珠です。同じ裃姿ではあっても口入狐に比べて肩が低く袴の前方への張り出し方も強くないので、口入狐を細工してねずみに直したというよりももともと別の型から直したものではないかと考えています。

口入れ狐のほうは裃雛の男雛から直したもの。画像の大黒天ねずみはおそらく福助お福の夫婦の福助の型(叶福助ではなく)から直して作られた型なのではないかと思うのです。

画像の人形は裃が胡粉に墨か黒の顔料を少しだけ混ぜたような淡い灰色、着物部分は朱色ですが、同じ型でも色違いがあり、裃が弁柄(酸化鉄)、着物が群青という配色パターンもあり、後者の配色は江戸以来の今戸人形の福助の配色と共通するからです。

背面に朱色で「大黒天」と記されていますが、どこかの神社仏閣の授与向けに作られていたものなのかどうか、、、?知っている限りの古い文献でこの人形の授与に関する記録というものを未だ読んだことがないので、もしご存知の方がいらっしゃれば是非ご教示くださいませ。

授与云々についてはわかりませんが、この人形の名称「大黒天ねずみ」は戦前の複数の文献にも記されています。ねずみは言うまでもなく大黒様のご眷属なので、日本全国に分布する伝統的な土人形産地の人形の中にも。大黒様と一緒だったり、大黒様の姿をしたねずみであったりすることが多い中、この「大黒天ねずみ」は裃を着て擬人化されてはいますが、大黒様の装束とは直接関係のあるイメージではありません。

しかし手にしている大根こそがミソで、「恵比寿大黒」→「恵比寿大根喰う」(えびすだいこくう)という地口になっているのです。「大黒」→「大根喰う」なんですね。「ねずみ大根喰う」→「ねずみ大黒」とも言えるわけです。

こういう趣向がいかにも江戸っ子好みだと喜んでしまうのは私くらいでしょうか?

春吉翁より以前に作られた同じ型の古い人形や出土品を未だ見たことがないですが、有坂与太郎あたりの記述に、この型の人形が春吉翁一代による創作とも記されていないので、もっと昔からあった型なのだろうと考えているところです。

来年の干支でもないのに何故今頃ねずみなのか?とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが今後の記事の展開の伏線としてご紹介させていただきます。

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2 コメント

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そうですね。こういう言葉遊びは江戸っ子は大好き... (都月満夫)
2012-10-29 10:41:15
したっけ。
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都月さま (いまどき)
2012-10-30 20:13:45
コメントありがとうございます。地口という語呂合わせなのですが、現在にも通じますね。「ボキャブラ天国」という番組がありましたよね。おもしろくて毎週見ていたように憶えています。昔ながらの地口は語呂合わせのパロディーの言葉と一緒に絵を添えるんです。例えばこれは現代のものですが、薬缶に羽がついて飛んでいる絵があって「薬缶飛行」→「夜間飛行」ってのがあります。
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