自画自賛のような話ですが、ちょっとうれしい話です。昨年の秋、埼玉の川島町にある遠山記念館で講演をさせてもらった折、あちらの学芸員さんとのお話で、私のHPを観て「お福牛」という人形が一番楽しかったという感想をいただきました。
「観ているだけで笑いがこみ上がってくる。」ということでした。この牛は先の丑年に、今戸の牛の人形として「紅丑」以外にお手本が手元になかったので仕方なしに創作したもののひとつでした。
今戸焼の土人形として代表的なもののひとつお福さんを牛に置き換えたら面白いと思ったのです。歌舞伎の言葉で「ワリミ(悪身)」というのがあります。歌舞伎舞踊や歌舞伎劇の演目の中にはいろいろな滑稽さを盛り込んだ演目があるのですが、ワリミも滑稽さを見せるひとつの要素で要するにいかめしい男だとか高貴なお坊さんが一部女性らしく動いたりくどきを踊るのです。
有名なところで六歌仙のひとつ「喜撰法師」とか「関の扉」、「戻駕籠」の五右衛門だとかもっと他にもあると思います。作っていた当時、牛をお福さんにすることで「ワリミ」のおかしさを狙っていたのですが、とある浅草のお店の旦那さんが仰るには「ひどいものを作った」ということでした。でもその当時、人によっては見るなり笑い出す人、ニンマリする人もいたことにはいたのでした。
「ひどいもの」と言われていたので、干支の年に作っただけだったのですが、先の学芸員さんのお話を聞かせていただいて、自己満足ながら「我が意を得たり」という気分になりました。お世話になったので時間をみて当時の素焼きの残りがあったら塗って差し上げます、とお約束していたのが先般やっと塗上がり、お送りしたのでした。
先刻電話をいただき、お宅の玄関に飾ってくださっているとのこと。眼が合うたびに笑いがこみ上げてくるとのことで、作った本人としてもこの上なくうれしい話でした。
それにしても、「眼が合うたびに笑いがこみ上げてくる」・・・・なんて、すごい賛辞ですね。
お人形さんの力、恐るべし!!
おかしみを意識して作ったものだったのですが「ひどいもの」と言われてちょっとしゅんとしていたのですが、人形を見て楽しくなるというご意見をいただいて本当にうれしかったです。