根が単純なせいか、人から褒めてもらうとすぐに調子に乗るのが良くも悪くも自分の持ち味だと思っているが、今回の試みは結果的にプラスと出たようだ。その経緯を記してみよう。
オーディオ仲間のAさんからJBLのシステムを絶賛してもらったので大いに自信がつき、さっそく他のオーディオ仲間に聴いてもらおうと、誘ってみた。22日(木)の午前中のことだった。
このところ2年ばかりご無沙汰の大分市にお住いのOさんに電話したところご友人のMさんと一緒に午後2時に来ていただくことで、いきなり、話がまとまった。
Oさんは大のジャズファンでJBLのパラゴンを愛聴されている。以前、県内で唯一の老舗デパートでオーディオ売り場を担当されていた方である。Mさんはタンノイ・オートグラフを愛聴され、レコード・プレイヤーを4台持つほどのレコード一辺倒の方。CDがこれだけ普及しても、レコードにこだわって愛聴されている方は先ず、音にうるさい方と思って間違いなし。
午後からシステムのスイッチを入れてウォーミングアップ開始。お二人はちょっと速めの13時50分ごろにご到着。
ご挨拶もそこそこに、オーディオ実験室をご覧になって、Oさんが「すっかり変わりましたね~。」と、おっしゃる。最後に聴いていただいたときのシステムはどうだったか、当方としてはまったく記憶がないほど、我が家のオーディオは落ち着きがない(笑)。
はたして、どういうご意見がいただけるかと、期待と不安が交錯する中でJBLのシステム、「AXIOM80」、そして「AXIOM301」の順に聴いていただいた。
「3系統のシステムともいずれも良くバランスが取れていて素晴らしい音ですね~」と、先ずOさんから外交辞令。「JBLのスピード感が凄いですね。まるで次から次に歯切れよく音が飛び出してくる印象です。その点、AXIOM80は余韻の漂い方が好ましいですね」。
「ジャズを聴くときにはJBL、クラシックではAXIOM80、テレビ視聴のときはAXIOM301に使い分けしています。それでも、いずれのシステムも中・高域用に真空管アンプを使ってますので、球の保護もあって3時間ほど経つとシステムを意識して切り替えてます」
JBLではアート・ペッパー、サリナ・ジョーンズ、ホリー・コール、サッチモなど試聴していただき、AXIOM80では是非ヴァイオリンをと所望されたので、北欧の貴公子「アーヴェ・テレフセン」の「ライム・ライト」を聴いていただいたが、この辺で”オーディオ的な遊びを”ということで真空管の銘柄を替えてみた。
AXIOM80用の300Bアンプには、日頃、CRの4300BLX(中国製)を挿しているのだが、本家本元のWE300B(1950年代)にして再び聴いてもらった。
すると「ヴァイオリンの質感がまるっきり違いますね。とても大きな差です。」と、二人とも驚かれていた。以前のシステムよりもはっきりと差が出るようになったので、システムのグレードが上がったのかもしれない。
第三システムのAXIOM301については、お二人とも以前使ってあったそうでたいへん変興味を持たれ、中高域に使っているJBLの「LE-85」について、「これでもいいんんですが、AXIOMにJBLのユニットの組み合わせはいかがなものでしょうか。JBLは明るすぎて、音色がちょっと合わないのでは」とのご意見。
「なるほど!そういう点はありますね。」と、納得。
オーディオ製品の性格は不思議なことにお国柄を如実に反映することは大半のマニアならご存知のとおり。AXIOMのユニット(イギリス)とJBLのユニット(アメリカ)では、まるで木と竹を繋いだようなものかもしれないと思い至った。
つい、機器の物理的な性能ばかりに目がいって、大切な”音楽的な雰囲気”がおろそかになっていたようだ。
その伝でいけば、現在AXIOM80を鳴らしているWE300B真空管(アメリカ)はお国柄からいってJBLの375+075を鳴らすのに”ふさわしい”のかもしれない。
そういうことを考えながら試聴していると、最後に「春の祭典」(ゲルギエフ指揮)を聴かせていただけませんか、とOさん。
物凄い低音を再生しなければならないので「AXIOM80ではちょっときついですね~」。
そこで、JBLのシステムで聴いていただいたところ見事に部屋中がドシ~ンと揺れるような低音が出てくれた。低域用のD130ユニットをハイカットで200ヘルツにしている威力が出た感じだが、エンクロージャーの功績大である。
Oさんが「見事に、(低音が)抜けましたねえ」。
予定の16時を過ぎたので「OさんとMさん宅に来週半ば頃に、試聴にお伺いする」ことをお互いに固く約束して帰途につかれた。
翌日の23日(金)は、昨日に大いに気になった「お国柄の統一」にトライしてみた。別にどんな組み合わせでも一向に構わないのだが、SPユニットとアンプの真空管ぐらいはお国柄を合わせた方がそれぞれの持ち味が最大限に引き出せそうな気もするところ。
作家の五味康祐さんによると「一流の作曲家の背後には神がいる。その神とは、愛国心であり、民族の発生から終末に至る民族の人格に他ならない」と、いった意味のことを著作「天の声」の終章に書かれている。
たかが音楽を鳴らす道具に過ぎないオーディオ機器だって、ちょっと大げさだが背後には個々の民族性が反映されていると思いたいところで、たとえばイギリスの音、アメリカの音、ドイツの音など歴然とした違いがあるのはたしかで、お国柄を際立たせることを”ささやかなポリシー”のひとつとするのも悪くはなかろう。
まず、「AXIOM301」には、オーディオ仲間のAさんから以前いただいていた同じグッドマン社の「ミダックス」を組み合わせた。アンプには同じくイギリス製の真空管PX25・2号機。
その次に、JBLの「375+075」用のアンプにWE300Bアンプを、AXIOM80にはPX25・1号機を入れ替えた。SPコードの長さの調整がたいへんで、半田ごてを握りっぱなし。ついでに以前から気になっていたネットワーク用のコンデンサーをアンプのそばからスピーカーのそばに移動させたりで、全体で3時間ほどかかった。
これで、一層「アメリカの音」らしく、また「イギリスの音」らしくなったようだ。片や陽気で開放的、片や後にずっと尾を引く翳りのある音。どちらにも、その音でないと伝わってこない音楽があるのはたしかである。
こうして我が家ではお客さんが来るたびに何らかの示唆を受けてシステムに反映しているのでほんとうに助かる。
「お前の頭と耳はそんなに悪いのか、他人を当てにするな!」と叱られそうだが実際に駄脳・駄耳なんだからしかたがない(笑)。
この画像は今回の作業の結果だが、前回の記事の画像と微妙な違いがあるのがお分かりだろうか。