前回からの続きです。
つい最近、オークションで購入した「美空ひばり」のCDだが、昭和の名曲とされる全16曲が収めてあり、いずれも彼女の持ち歌ではないもの、さすがに不世出の歌姫だけあって、「大阪しぐれ」「奥飛騨慕情」「矢切の渡し」についてはオリジナルの歌手よりもうまいと思った。
このところ、夢中になって聴いているが、別に歌謡曲が好きでもない方々に聴かせるとなると、きっといいご迷惑に違いない。25日(日)の15時半に我が家に試聴に来てくれた大分からのオーディオ仲間(Yさん、Mさん、Nさん)たちが、まったくそうだった。
はじめに、JBLの3ウェイ・システムで「ひばり」ちゃんを聴いてもらったところ、一同シ~ン。
沈黙を打ち破るようにMさんが、「ジャズを聴かせてくれませんか。先日聴かせていただいたときに、音が(スピーカーから)飛び出してくる感覚が・・・・」
はい、はい、定番の「カインド・オブ・ブルー」(マイルス・デイヴィス)といきましょう~。タメが利いたトランペットの音がまるで弾丸のような勢いで試聴者の顔に吹っ飛んでくる!(笑)
「スケール感も雄大です。良く鳴ってますねえ」と、Nさんも同感のご様子。ただし、ややハイ上がりの音である。おそらく「375」ドライバー(16Ω)に、後継機種の「2441」のダイアフラム(JBL純正)を装着しているせいだろう。しかし、これはこれで悪くない。
次に、くどいようだが再度ひばりちゃんを「AXIOM80」(以下「80」)、そして本日(25日)の朝、設置したばかりのリチャード・アレン(以下、「アレン」)のフルレンジ(20センチ)で聴いてもらったところ、アレンが大好評。
「いい音やなあ!エンクロージャーはユニットに合わせて作ったんですか」と、Nさん。
「いいえ、タンノイⅢLZの寸法に合わせて作っただけです。中には羽毛の吸音材を詰め込んでます。また背圧を逃がすために裏蓋に1センチ直系の穴を124個開けてます。」
あまり、評判がいいものだから「80とアレンとどちらが好きですか?」と、Nさんに訊いてみると何と「アレンの方が好きです」。
アレーッ、80とアレンでは流した「血(お金)と汗と涙」の量がまるっきり違うのに~。トホホ。これではまったくマニアとしての立つ瀬がない(笑)。
責任はもちろん、80にあるのではなく自分の鳴らし方が悪いに決まっているのでこれは後々の要検討事項。
試聴中にYさんに緊急の連絡が入り、急用ができたとかで、結局皆さんは30分ほどおられただけで帰宅された。
「是非、近いうちにまた来ます」と、Nさん。
さて、お客さんを送り出した後、気になる80を再度試聴。気になる点が二つほど。
☆ 設置場所が部屋の両端に寄り過ぎて、アレンに比べて絶対に不利
☆ 今回のシステムの見直しで大きめのエンクロージャーから狭い長屋の一室に閉じ込めたせいで、生気が幾分失われている。それに、微妙な点だが「音がキャンつく」傾向がないでもない。こういう音がするときは、背圧の逃がし方が足りないときによく起きる現象。
「よ~し、思い切ってスピーカーの位置を変更しよう。そして裏蓋を取っ払ってしまおう」と決心し、ためらうことなく行動に移した。
試聴席からはウェストミンスターがすっかり隠れてしまうが低音域は指向性が薄いので、ここは我慢のしどころ。
楽屋裏から撮影したのが右の画像だが、80の個室だけ後面開放型にしたわけである。もちろん、羽毛の吸音材は入れっぱなし。個室の形が不整形だが、これは内部の定在波を防ぐためにあえて仕切り板を斜めに挿入している。
そもそもスピーカーの裏蓋がなぜあるかというと、言わずもがなだがSPユニットの背後から出る逆相の音がSPの前面に回ってきて正相の音を邪魔するのでそれを防ぐためである。しかし、その反面、裏蓋を無くすメリットももちろんある。裏蓋がないとSPユニットの前後の振動が抵抗がなくなったせいでやりやすくなり、伸び伸びとした音になる。
プラス面とマイナス面と比較して、どちらがよりメリットが大きいかというわけである。オーディオをやってるとこういうケースが実に多い。こういう選択の連続でシステムの性格が次第に形づけられていく。「日本で一番、音がいい」とされる一関のジャズ喫茶「ベイシー」の店主、菅原昭二さんが名著「ベイシーの選択」の中でいみじくも述べられているとおり。
さて、試聴の結果だが、今のところ正解かな~?
80が本領を発揮したときは「繊細でふっくらした艶やかな響き」とされているが、すくなくとも”ふっくら感”は明らかに向上している。
それにしても、お客さんが来るたびに新たな発見をして行動に移しているが、これは進歩なのか、あるいは退歩なのか、はたしてどちら?
「お前はいったい、落ち着いて音楽を聴くつもりがあるのか!」と、言われそうだが(笑)。