本県の南部地方は日豊海岸国定公園に面しており岩礁が多いことから「磯釣り」の漁場としてつとに有名だが、少し内陸部に入るとすぐに鬱蒼とした森林地帯になる。
かねて同地域に棲む知人から「近所に“I”さんという凄いオーディオマニアがいます。近所に気兼ねなく聴けるように山を切り開いて中腹に大きなオーディオルームを作っています。カフェを兼ねてますのでお客さんはいつでも歓迎ですよ。」との話を聞いていた。
そう聞くとマニアたる者、黙って見過ごす手はないので「是非お伺いして聴かせていただきたいですね。ご連絡をお願いします。」と、知人を通じて日程調整をした結果、この4日(土)に決定した。
当日はあいにく朝から梅雨入りの雨だったが、モノともせずに午前9時ごろに出発。高速道路を一部利用して1時間半ぐらいで知人宅に到着。
現地は県内有数の過疎地帯なので付近にはかなり空き家があって、「オーディオ用の別荘として考えてみてはどうですか」との誘いに乗って、山野を散策しながら2~3か所の物件を当たってみた。別荘といっても地価はメチャ安いのでそれほど高嶺の花でもないが、こればかりはオーディオ機器と違って勝手に決めるわけにはいかない(笑)。
そうこうするうちにお昼時になって、ご自宅で奥様の手料理を味わった。名物の「イノシシ料理」もあって、カエルから蛇そして農作物まで何でもかんでも食する雑食性のイノシシだが、うまく匂いを消して調理してあるのでとても美味しかった。
午後からは山の中を分け入ってお目当ての「I」さん宅へ伺った。クルマが1台通れるほどの切り開いた小道を50mほど登って到着。
「いやあ、どうもはじめまして~」と、ご挨拶を済ませてオーディオルームに入った。
ワ~ッ、これは・・・。
我が家のオーディオルームと比べるとおよそ2倍半くらいはゆうにあるので広さは100㎡ほどだろう。しかも天井が高いので容積からいくと軽く3倍は越えるはず。
これまでいろんなお宅のオーディオルームを拝見させてもらったが、ここに優るところはなかった。
次にシステムの方だが、
JBLの4ウェイスピーカーと三菱のダイヤトーンが鎮座している。三菱はかってNHKのモニタースピーカーとして一世を風靡したDS-208。
アンプはプリがクリスキットで、パワーは真空管300Bのプッシュプルとのこと。
「I」さんはSPからも分かるようにジャズ系がお好きで、はじめに三菱を聴かせてもらったが、朗々たる音が鳴り響いた。とても口径20センチのユニットとは信じられないような豊かな音でこればかりは部屋の音響がメチャ貢献している感じ(笑)。
こういう音を聴かせられると、「オーディオは何やかや言ってみても結局は部屋の大きさで決まりだよね~」という気にさせられる。
ひとしきり三菱を楽しませてもらってから、次にJBLシステムへ移行。
一段とスケールが大きくなって圧倒された。喩えて言えば排気量5000CCのクルマで少々のデコボコ道をものともせずにすっ飛ばす感じ。ジャズにはもってこいのサウンドだろう。
「はい、ジャズは分かりました。しかしクラシックはどんな鳴り方をするんでしょう。」と、興味津々のうちに持参したCDをかけてもらった。
日頃からオーディオチェック用としても使っているオペラ「マクベス」(ヴェルディ作曲)。
冒頭の管楽器の咆哮が凄まじい。どんなに大きな音を出しても音響効果のせいかうるさい感じがしないし、これだけ鳴ってくれれば十分だが、クラシックの場合に限ってはスペースがたっぷりあるんだからスピーカーの位置を2~3mほど前に出して聴いてみたい気がした。
もちろん初対面の方にそんな厚かましいことを言えるはずがない(笑)。
途中で「試聴盤にヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K.364を持ってくるんだったと」後悔したが後の祭り。
ヴァイオリンとヴィオラの音色の違いを、このシステムならどういう風に表現するんだろう?
音の傾向はだいたい分かったので、次回のときはもっとCDを選別して持って行って聴かせていただくことにしよう。
それに、つい最近新調した口径10センチのスピーカーをこういう部屋で鳴らしてみたい気もする。広大な音響空間のもとでボーカルなどはきっと素晴らしいステージを再現することだろう。
2時間ほどで辞去したがたいへん参考になって実り多き試聴だった。
なお、これには余談があって、その日の夜はとても寝つきが悪かった。しかもようやく眠りについてもたった3時間ほどで目が覚める始末。いったいどうしたことかと、よく考えてみると昼間にとても濃くて美味しいコーヒーを抹茶茶碗で出していただき、すっかり飲み干した事を思い出した。
原因はコーヒーのせいだった! ヤレヤレ(笑)。