先日、同じ「AXIOM80」仲間のSさん(福岡)からメールが届いた。
「本日、PP5/400(出力管)が一本昇天されました(泣)。まあ当初、英国からアンプに付いてやって来た球なので、15年近くに渡って音楽を楽しませてくれました(感謝)。
そこでストックしていた球に入れ換えたところがビックリです。先ほどと同じレコードを聴いているのにスピーカーから出てくる音がまるっきり違うのです。ああ~これまで何ともなく鳴ってはいたんだけど随分エミ減した音を聴いていたんだ!と気が付きました(汗)。
真空管は徐々に弱っていくので、毎日聴いていると全く気が付きませんね。PP5/400アンプがやって来た当時、感動した音を思い出しました。やはりPP5/400は間違いなく直熱三極出力管の王様です。今我が家では、鳥肌が立つ音で音楽が鳴り響いています。」
これに対して次のようにメールを返した。
「鳥肌が立つ音とはうらやましい限りです。それにしても15年も続けて鳴らしたとは、よく保った方ですよ。しかし毎日聴いているとたしかに球が劣化していくのがよく分からないのは困ったことです。ときどき入れ替えて確認する必要があるんでしょう。しかし、こういったエミ減の球が オークションに出品されていたりすると、とても怖い話ですね。外見の写真映像だけではよくわかりませんからお互いに気を付けましょう。」
というわけで、オークションで真空管を購入するときは、きちんと測定結果が付いたものとか、信頼の置ける出品者を選択するように心がけているが、破格の安値だとつい見境なく転んでしまうのが自分の悪い癖。ほら「安物買いの銭失い」って警句があるにもかかわらず~(笑)。
さて、その「PP5/400=PX25」を使った真空管アンプだがソケットの不調があって「北国の真空管博士」に修繕に出していたところ、この11日(土)に3週間ぶりに戻ってきた。
やっと我が家のエースが復活!これでどんなお客さんがお見えになっても怖くないぞ~(笑)。
さっそく、結線して“音出し”してみたところ音質に一段と磨きがかかっていた。
前段の球は「3A/109B」(STC=ウェスタン・イギリス支社)、出力管は「PX25」(GEC)、整流管は「GZ33」(ムラード)とすべてイギリス勢。整流管はいくつか直熱管も持っているが、出力管の寿命を考えるとどうしても「傍熱管」に落ち着いてしまう。
それにしても以前は気にならない範囲で、ややハムノイズが乗っていたのだが、それもすっかり収まってこの透明感のある音質、そして彫の深い音像は何物にも代えがたいほどの素晴らしさ。よほど特別なノウハウを施されたに違いない。
「北国の真空管博士」にズバリその秘訣を訊いてみたところ次のような回答が返ってきた。
なお、ノウハウの件ですがPX25を使用する場合、通常はグリッドに5KΩ前後の抵抗を直列に挿入して発振を防止するのですが、一方音質面では、PX25の入力容量が大きいためグリッドに挿入した抵抗の影響を受けやすいのです。音のスピード感に影響があると考えています。
いえいえ、トップクラスの音質とはご謙遜でしょう。「NO1」だと思いますよ~(笑)。
なお、念のため「上記の件は公開していいですか」と博士にお伺いを立てたところ、「ええ、構いませんよ」とご快諾。
アンプづくりの技量が向上すればするほど秘儀を会得し隠したがるのはあたり前だし、自分が同じ立場でもそうするが、博士に限っては当てはまらないようで(笑)。
最後に、ひとくちにPX25と言ってもピンからキリまでいろんな球があるが、このアンプはそれら個別の音質の差をあまり感じさせないところがすごい。

左から順にPX25系では最高峰とされる「PP5/400」(英国マツダ:初期版)、「PX25ナス管」(GEC)、「PX25ドーム管」(オスラム)だが、これまで音質がやや劣るとされてきたドーム管でも「PP5/400」との差はごくわずかだし、ナス管に至っては堂々と互角に渡り合えるところがうれしくなる。
こんな「いい音」で毎日クラシック音楽を楽しめるなんて、脳内を猛烈に刺激して認知症になるのをきっと遅らせてくれることだろう~(笑)。