ちょっと大げさだが「我が家の永遠のテーマ」として、ここ30年ほど往ったり来たりでいまだに結論が出せない問題がある。
それはシステムの途中に「プリアンプを入れるか否か」。これまでのブログでもちょくちょくこのテーマで提案している。
もちろんレコードを愛好されている方はプリアンプ(イコライザー付き)が必須なのでこれには該当しないが、音の入り口がデジタル(CDなど)オンリーのときには、DAコンバーターにボリュームが付いてさえいればこの問題に直面せざるを得ない。
昨年、新たに3台目の真空管式プリアンプを導入し大いに音質が気に入ったのでこの問題には結着をつけたつもりだったが、このたび一段と磨きがかかった「PX25」アンプの登場によってふたたび「ストレイ シープ」になってしまった。
経緯を記してみよう。
我が家のタンノイ・ウェストミンスターはとても悲惨な運命をたどってきた。導入してからもう30年くらいは経つだろうか、当初は「タンノイ様」とあがめてきたものの、そのうちあのモヤっとした中低音域に嫌気がさしてきて「どうやらオイラの好みの音ではないようだ」と首をひねり出したのにさほど時間はかからなかった。
そんなことなら「買わなきゃよかったのに」と言われそうだが、つい巷の評判に踊らされてしまった。もちろん責任は自分にある(笑)。
とはいえ、家内と壮絶な死闘(?)を繰り広げて購入したので意地でも売り払うわけにもいかず、それかといってこの神聖視される大型スピーカーを改造する勇気はとても持ち合わせていなかったが、とうとう堪忍袋の緒が切れて裏蓋を開けてユニットの交換をするに至ったのは10年程前だったろうか。
まず補助バッフルを使って「AXIOM80」を、そして「JBLーD130」ユニットと、それぞれ楽しませてもらったが、ようやくフィリップスの口径30センチのダブルコーン型(アルニコ タイプ)で落ち着いた。今はどうか知らないが、一時世界中の放送局でモニタースピーカーとして使用されていた逸品だけあってクセのない、しかも音楽性を兼ね備えた音質には完全に満足。
しかし、ちょっと高音域部分の歪っぽさが気になったので2ウェイ式のネットワークシステムを使って、クロスオーヴァーを4000ヘルツ(12db/oct)にとってみた。
つまり、低音域から4000ヘルツまではフィリップスのユニットを使い、それ以上はJBLの075ツィーターが活躍。
この組み合わせにまったく違和感を感じなかったのだが、このたび「PX25」アンプが戻ってきたので試しにプリアンプを外して直結にして聴いてみた。
つまり、システムの流れは「CDトランスポート」(dCS) → 「DAコンバーター」(dCS:ボリューム付き) → パワーアンプ「PX25」シングル → スピーカー「フィリップス+JBL075」(箱はウェストミンスター)となる。
すると、途端にフィリップスとJBLの音質の違和感に気付かされた。JBLが寒色系のとても冷たい音に感じられたのである。プリアンプを経由していた時はフィリップスのユニットが無色透明のせいもありどんなツィーターを持ってきても合うと安心しきっていたのだが、外した途端にこの有様~。
この事象をいったいどう解釈したらいいんだろう。
結局、これまでプリアンプが音の酸いも甘いも噛み砕いて“おおらかに”包み込んでいたに違いない。よく豪傑を喩えて「清濁併せ呑む」タイプと評することがあるが、この表現がピタリときそうだ。
逆に言えば、録音現場のプレゼンスたとえば細かい音のヒダとか音響空間における楽器の位置などのとてもクリティカルな部分については表現が苦手と分析せざるを得ず、とりわけ新装なったPX25アンプの解像力がその傾向にますます拍車をかけたに相違ない。
ただし、これは我が家だけの事象かもしれないので念のため。
というわけで、とうとうJBLのツィーターを外してワーフェデールのコーン型ツィーターの出番となった。これで同じヨーロッパ同士の組み合わせ。
この組み合わせだとまったく違和感が無くなり、安心して音楽に耳を傾けられるようになった。やはり「シンプル イズ ベスト」で、プリアンプ不在で気に入った音を出すのがあるべき姿のような気がする~。
と、ここまではメデタシ、メデタシ。
滞りなく(このブログを)書き終えて、念のためにこのシステムでオペラ「マクベス」(ヴェルディ作曲)を聴いてみた。この「マクベス」は豊かなスケール感と力強さが全編に漲っていないと聴けない音楽である。
すると、何とこの場合はプリアンプを入れたほうが断然良かったのである!
ウ~ン残念、これでプリアンプの問題は「元の木阿弥」になってしまったあ~(笑)。