先週の17日(木)の午後のこと、久しぶりにOさん(大分市)が我が家にお見えになった。
「いやあ、お元気でしたか~。およそ2年ぶりぐらいですかねえ。」
Oさんは歴戦の強者(つわもの)で長年鍛えられた耳はとうてい自分ごときが及ぶところではない。
JBLパラゴンをはじめ、タンノイやアルテックを愛用されておりどちらかといえばジャズが主体だが、クラシックにも造詣の深い方である。
我が家では4系統のスピーカーがあるがこの2年間ですっかり様変わりしたので、どのスピーカーがOさんのお気に召すのだろうかと興味津々で、その論評とともにお客さんをお迎えする最大の愉しみの一つである。
時間の関係で「LE-8T」を除き、聴いていただいた3つのシステムの順番は次のとおり。
使用したCDトラポとDAコンバーターはdCS(イギリス)。
1 プリアンプ「クリスキットカスタム・マークⅥ」 → パワーアンプ「PX25シングル」 →スピーカー「ワーフェデールの2ウェイ」(クロス4000ヘルツ)
2 同プリアンプ → パワーアンプ「WE300Bシングル」 → スピーカー「AXIOM80」
3 チャンデバを使った2ウェイマルチシステムでクロスオーバーは1000ヘルツ。ワディアのDAコンバーターから直結。
中低音域 → パワーアンプ「2A3シングル」 → スピーカー「JBLのD130」
高音域 → パワーアンプ「171(トリタン)シングル → スピーカー「JBLの175」
このシステムについてはジャズ好きのOさんに応じて急遽175に変更したもの。
試聴盤は「木村好夫」のギターから始まって、「バロック デュオ」(マルサリス)、モーツァルトの「K136」、「エラ&ルイ」、ツィゴイネルワイゼン(ハイフェッツ)、「サキソフォンコロッサス」と、アトランダムな選別。
このうち「バロック デュオ」のマルサリス(トランペット)がいたく気に入られたご様子なのでCD盤をお貸ししたほどだった。
また、最後に聴いていただいた「サキソフォン・コロッサス」だが、「XRCD」盤と普通のCD盤の違いにえらく驚かれていた。断然「XRCD盤の方が音が柔らかい」とのことだった。
さて、競馬の予想とまではいかないが(笑)、Aさんのお好みのシステムの順位は自分の見込みではおそらく第1位「3」、第2位「2」、第3位「1」だと推測していた。
ところが結果的にはこの予想が見事に外れてしまったのはほんとうに意外だった。
はっきりとAさんが順位を申されたわけではないが、その態度や「つぶやき」から推し量ると第1位は「1」、第2位が「2」、第3位が「3」ということになった。
とにかくダントツだったのが最初に聴いていただいたワーフェデールのシステムで、クラシックのみならずジャズでも十分いけるとのことで、まったく惚れ惚れというご様子だった。
実を言うと、このシステムは入り口から出口まですべてイギリス勢で統一ということもあるし、現在一番のお気に入りだったので内心ではとてもうれしかった(笑)。
「このユニットは昨年オークションで手に入れたのですが、あまりにも音が気に入りましたので、相手方(静岡県のTさん)に無理をいってさらにスペアで2本追加して譲ってもらいましたよ。」
と、申し上げると「その気持ちは十分わかりますよ。独特の清澄感があって、とても品がいい音です。思わずスピーカーの存在を忘れて音楽に聴き惚れてしまいました。」とOさん。
これが我が家の至宝「ワーフェデールの2ウェイ」システム(クロスオーバー:4000ヘルツ)で口径30センチ+口径10センチのユニットで両者とも「赤帯マグネット」の持ち主。
箱は自作で、適度に箱鳴りをさせるために板の接着にはネジをいっさい使わないまま板厚を1.5cmと薄目にしており、底板にはユニットの背圧を逃がすために自前の「ARU」を取り付けている。
PX25アンプとの組み合わせを含めて我がオーディオ人生の集大成に近づいたともいえる音だが、いい音か悪い音かは別にして、ほんとうに気に入った音を出そうと思ったらやはりスピーカーは自作に限る(笑)。
それにしても、意外だったのが「AXIOM80」の評価で、どうもイマイチという感じだった。問わず語らずだが「あまりにも神経質すぎる音」ということだったろうか・・。
このスピーカーは周知のとおり駆動するアンプ次第でいかようにも変身するが、AXIOM80の愛好家で知られたあの高名なオーディオ評論家「瀬川冬樹」さん(故人)は、その著作集などで推し量る限り「ふっくらした」鳴らし方がお好みだったようだ。
「AXIOM80からふっくらした感じを出すためにはアンプを71Aプッシュプルにして聴いてもらえばよかったかもしれない。」と、思いついたのは、玄関先で「いやあ、ワーフェデールは・・・」と、感心の体(てい)で帰途につかれたOさんを見送った後だった。
「肝心の時には出ず、物事が済んでしまってから出る知恵」(広辞苑)を「後知恵」というが、試聴会のときになると、いつもこうなんだからほんとうに困る~(笑)。