「今日の1時過ぎにお伺いしていいでしょうか?」
丁度、午前中の日課である運動ジムでバイクを漕いでいる最中だったが、「ハイ、いいですよ。どうぞ」
大分市在住の仲間たち(2名)がお見えになるのは、およそ3か月振りくらいかな。
「男子、三日会わざれば刮目して見よ」とは大げさだが(笑)、我が家では3か月も経つとすっかりシステムが様変わりしているのできっと驚かれることだろう。
自分ではいいと思っていても、違う耳ではそうとも限らず、変化がはたして「吉と出るか、凶と出るか」、その辺のご意見を伺う愉しみがあって興味は尽きない。
定刻通りお見えになった仲間たちに最初に聴いてもらったのはウェストミンスター(改)。
「エーッ、AXIOM80をこんな贅沢な使い方をして!」というのが第一声だった。そして、第二声は「PADのケーブルをこれだけ使って壮観!」
「はい、電源ケーブルのドミナスを4本、RCAケーブルを4ペア、SPケーブルを2セット使っています。見た目が仰々しいのであまり気が進まないのですが、実際に音が良くなるので仕方がありません。」
ケーブルの重要性を熟知している仲間たちなので「たしかにそうですね。」と賛同を得たのはうれしかった(笑)。
最初の試聴盤はゲリー・カー(コントラバス)の「祈り」だった。次に、ヴィオッティの「ヴァイオリン協奏曲第22番」(ボベスコ)を。
「これまで聴かせていただいた中でこれは最高の音ではないでしょうか。AXIOM80が実に利いてますね。弦がとても柔らかくて雰囲気が抜群です。」
と、ここまでは良かったが、次の試聴盤のジャズ「枯葉」(キャノンボール&マイルス)で小さな綻びがでた。
「ちょっとJBLの075ツィーターが強すぎるような気がします。」とはまだ50代前半の仲間だった。
「そうかもですねえ。歳を取ると高音域が聞き取りずらくてつい出し過ぎてしまう傾向がありますね。」
気になっていた点をズバリと指摘してくるのだから流石にいい耳をしている。
そこで、ウェスタン製のオイルコンデンサー(1μF)を外して、「ビタミンQ」(0.22μF)とマイカコンデンサーをパラって聴いていただいたところ、「とてもグッドバランスです。」
ひとしきり聴いていただいた後で、今度は「AXIOM80」のフルレンジを聴いていただいたところ、途端に私語が増えてガヤガヤと騒がしくなった。
ウェストミンスター(改)の重厚な音を聴いた後で「AXIOM80」の繊細な音を聴かせるのは順番として実に拙かった。
「柔よく剛を制す」ならぬ「剛よく柔を制す」(笑)。
そこで、再び「ウェストミンスター」(改)に戻して、久しぶりに「球転がし」をやってみることにした。
アンプは「300Bシングル」である。
前段管は「171」(トリタンフィラメント)、整流管はSTCの「4274A」、インプット・トランスとインターステージ・トランスはUTC(アメリカ)で、出力トランスは手巻きによるもの。
テストした出力管は4種類である。
聴いた順番からいくと「6A3」、「WE300B」(1988年製)、「CR4300B」(中国製)、「エレハモの300B」(チェコ)
総評からいくと、WE300Bの評価がものすごかった。音の陰影と彫りの深さ、艶、演奏者の表現力などがダントツとのこと。
「まるで一幅の絵を見ているようです。それぞれの楽器の強弱が色の濃さの違いとなって見事に表現できています。こうなると音楽と絵画の鑑賞は一緒ですね。」
6A3はクラシックにかけては遜色ないものの、ジャズとなるとベースの締りというか低音域の制動力にやや難があるとのことで惜しくも次点。
中国製とエレハモはお値段なりの音だそうで特にコメントなし。
「それぞれの出力管の差をこれほど明確に出せるのですから凄いシステムですね。」「はい、ケーブルをオールPADにした甲斐がありましたよ。」
3時間ほど試聴していただいただろうか、「今日はほんとうに頭がすっきりしました。」と辞去されたのは4時頃のことだった。
今回の収穫は「WE300Bの見事な復活」だった。今さらながら、周辺環境が良くなればなるほど本領を発揮する凄い真空管である。
ただし、日ごろ聴くのはもったいないのでお客さんがお見えになったときだけの出番としておこう(笑)。