オーディオシステムの中で「プリアンプ」というのは独特の存在という気がいつもしている。
デジタル系の音を愉しむ場合に限ってだが無ければ無いでも済むし、あればあったで音質に多大の影響を与えるので「費用 対 効果」の観点からするととても微妙な存在だ。
旧くて新しい課題として常に「プリアンプ不要論」が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しているのも「むべなるかな」。
ただし、我が家では今のところ「プリアンプ必要派」に与(くみ)している。
そして、このほどオークションで大いに気になるプリアンプが出品されていた。
解説にはこうあった。
「DENON PRA-1000Bは、管球アンプとしての魅力と性能を十二分に
引き出すため、回路設計からデザインまでDENONの総力を結集して制作されました。
性能を極限まで追求し、回路の設計、使用部品、高性能出力トランスの開発...等々により、伝送帯域を飛躍的に向上させ、位相ひずみの影響がない、高品位な音楽信号をパワーアンプに送り出す事が出来る事で、超広帯域でダイナミックレンジの大きいコントロールアンプとして誕生させました。」
オーディオ全盛期の1975年に販売(定価23万円)されたもので、真空管を10本も使った力作のようだ。
ちなみに1975年といえば中高年層には懐かしいフォークソングの名曲「なごり雪」や「22歳の別れ」が相次いで発表された年である。作曲家は「伊勢正三」(大分県津久見市出身)。
このプリアンプは内部配線もきれいだし見るからに程度が良さそうなので、お値段がどこまで上がるか予測がつかないが「これはぜひ欲しい」と思ったねえ(笑)。
しかし、現在使っている「マランツ7型プリアンプ」も気に入っているし、ほかにも「クリスキットのマークⅥカスタム」(以下、「クリスキット」)もあるので千々に乱れる我が心。
クリスキットは無難な音なんだけど、ちょっと魅力度に乏しいところがあってこのところ予備役に編入している。
フォノ部分は別としてフラット部分に使ってある球は「12AU7×2本」だが、この球は「μ(ミュー)=増幅率」が20前後と、12AX7の100前後に比べると小さいせいか元気度がちょっと物足りない。
別の見方をすると前後に接続する「DAコンバーター」と「パワーアンプ」との相性がイマイチというわけ。
そこで、PADの電源コード「ドミナス」を挿せるように「3P端子」に改造してもらい、そのうえで満足した音が出なければ前述したデンオンの「PRA1000」に触手を伸ばそうという算段を企てた。
いわば両にらみということだが、このアンプの落札期日は3月7日(木)なので、それまでに急いで改造してもらわねばいけない。
持ち込んだのは真空管アンプ工房を開設されて50年近くになるKさん(大分市)である。
電源ケーブル「ドミナス」が挿せるようにと「3P端子」への改造は、「71Aプッシュプルアンプ」「371シングルアンプ2台」なので、これで4台目になる。
「出来ましたよ。」と、Kさんから連絡があったのは4日(火)のことだった。
間に合ってよかった!
さっそく自宅に持ち帰ってドミナスを挿しこんで試聴テストしたところ、ボワ~ンと膨らみ気味だった低音域が見事に締まって「これはいい!」(笑)。
ドミナス効果はDAコンバーターやプリアンプなど微小信号を扱う機器でより効果を発揮するようだ。
とはいえまだまだ物足りない、より一層の元気度が欲しい気がする。そこで窮余の一策としてダメ元でもいいからと「12AU7」の2本を比較的μが高い「12AT7」に差し替えてみることにした。
「アンプが壊れることはありませんが、やってみないと何とも・・・」とは「北国の真空管博士」の弁である。
すると大変身!「これで十分」といえるほど音にトルク感が出てきた。
よし、この音ならDENONの「PRA-1000B」は要らないと決断した。
これで我が家のシステムは2台のプリアンプを境に2系統になった。
1 dCSのデジタル・システム → プリアンプ「クリスキット」 → パワーアンプ「SV-300Bシングル」 → スピーカー「ウェストミンスター」(改)
2 CDトラポ(CEC) → DAコンバーター(フェーズメーション) → プリアンプ(マランツ7型) → パワーアンプ「371シングル」 → スピーカー「AXIOM80」or「トライアクショム」
今回は他のプリアンプにちょっとした浮気心を起こしたばっかりに既存のプリアンプを見直す契機となり、うまくハマってまったく言うことなしだった。
やっぱりオーディオを前進させるには、いささかの「心の蠢動」が必要ですな!(笑)
最後に、昨日(7日)の夜になって落札されたお目当てのプリアンプの価格は16万1千円だった。高っ!
所詮ビンボー人にはおいそれと手が出せる価格ではなかったようで(笑)。
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