先日のブログ「ん、鈍い音・・それがどうした!」で話題にしたスピーカー「トライアクショム」(グッドマン)。
ブログで話題にした以上、義務感も手伝って(笑)ここ4~5日じっくり聴き込んでみるとやっぱりいいですねえ!
「叩けば叩くほど良くなる法華の太鼓」ではないが、聴けば聴くほど音がこなれてくる印象があって、古典系スピーカーの本領を発揮させるためには最低でも2~3日のエージングが必要みたいですよ。
というのも、じっくり鳴らし込んでみるといかにも内省的で陰りのある音が胸の奥深くにそっと忍び寄ってきて哀愁に置き換わってくる感じと言えばいいのか・・。
「いいスピーカーとは音楽が本来的に”哀しみ”を表現する芸術だということをわからせてくれる」という思いが唐突に湧き上がってきた。
そういえば、ユング心理学の泰斗「河合隼雄」氏(故人)が「一流の芸術はその底流に死を内在させている」と、宣うたが「哀しみは死に通じる」・・。
とまあ、外野席から「偉そうなことを言うな!」と声が飛んできそうだが(笑)。
とにかく、この「トライアクショム」は納める「箱」にずいぶん苦労した!
グッドマンの指定の箱に容れたり、自作の箱(板厚1.5cm)に容れたりしたがいずれもイマイチだった。今考えると、箱が大きすぎたみたいで音が籠り気味だった。
今回は画像のように小振りの箱の「板厚1.2cm」(下部に1.2cm×50cmの背圧の抜け道をつくっている)で、ようやく落ち着いたみたいだが、これは”たまたま”のことで運が良かったとしか言いようがない。まあ、「トライ&エラー」の繰り返しの産物ともいえるが。
さて、この素性のいいスピーカーだが当然のごとく弱点もある。
というのも、我が家のオーディオ環境ではという条件付きのもとで楽器の中で一番再生が難しいのが「ピアノ」だと思っている。
この楽器の周波数範囲は公称では「40~6000ヘルツ」になっており、ちなみにヴァイオリンは「180~1万ヘルツ以上」だが、ピアノの場合は高音域が十分に伸び切らない分やや音が籠り気味になりがち・・。
もちろん「トライアクショム」も例外ではなく、ヴァイオリンをはじめとする弦楽器群はまったくケチのつけようがないのに「ピアノ」の再生に少しばかり憾みを遺す。
もうちょっと「スッキリとした爽やか感」が出てくれるといいんだけどなあ。
「同軸3ウェイ」のフルレンジ(口径30cm)だから外部ネットワークの巧拙に支配されるわけでもなく、うまく再生できる資格は十分あるはずだけど。
というわけで、音の入り口から順番に機器の相性探しといこう。
ただし、どこかポイントを決めておかないと収拾がつかなくなるのでパワーアンプを一番無難な「WE300Bシングル」に定めた。
音楽ソースはネットラジオの「モーツァルト専門チャンネル」、必然的にDACは「A22」(GUSTARD)に限定。
となると、ほかに弄れるところといえば「プリアンプ」しかない(笑)。
一体化した「プリメイン・アンプ」と違って、プリアンプとメインアンプに分けて使っていると「音の組み合せ」がいろいろ出来て楽しい。
オーディオには「プリアンプとメインアンプのどちらがサウンドを大きく支配するか」という古くて新しいテーマがあるが、使用しているオーディオ環境の違いで変わってくるので一概には言えないと思っている。
我が家には現在3台のプリアンプがあるが今回は「安井式」プリアンプでいってみよう。
「熟練の手練れ」に作ってもらったアンプだが、ボリュームは「東京光音」製に取り換え、次いで「マイカコンデンサー」を要所に用いている。
構成はごく簡単で、お馴染みの「12AU7」が前段2本と後段2本の計4本が使ってあるが、この際とばかり前段の2本をいろいろ代えてみた。
「M8136=12AU7](ムラード)、「E80CC」(独:ヴァルボ)、「13D9=12AT7」(BRIMAR=STC)、そして「6072=12AY7」(GE)。
結論から言うと「6072」が一番良かった。中高音域に独特の艶が出てきて他の追随を許さず、ピアノの不自然感も大きく解消した。
「6072」なんてマイナーの象徴みたいな球で、手に入れた経緯もサッパリ覚えておらずこれまで一顧だにしなかったが、北国の真空管博士によると「これは私の好きな球です!」とのことで、大いに見直した。
ネットによると「μ(ミュー)=増幅度」が「44」とあり、丁度「12AU7」と「12AT7」の中間あたりに位置する球。
急いで「スペア」を確保しておこうとオークションを覗いてみたら、近代管ばかりがズラッと並んでガッカリ、一気に買う気が失せた。
まあ、あと1本だけスペアがあるのでいっか・・(笑)。
今回の実験を通じて、我が家では「プリアンプの球がサウンドを大きく支配する」ことを改めて肝に銘じたことだった。
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