「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

真空管の「スリル」と「サスペンス」

2022年02月13日 | オーディオ談義

現在愛用している真空管アンプ「WE300Bシングル」だが、出力管は1988年製の「300B」を使っている。



1940年代ごろから製造されてきたほどの由緒あるWE300Bだから1988年製は比較的新しい年代の製造である。


ただし、古いのがいいのか、新しいのがいいのか、同じ300Bの型番でも音質が違うとされており、諸説あって古い時期に製造された「オールド」は経年劣化のため管内の真空度が落ちていて本来の能力を発揮できていないと言われたり、その一方では1980年代のものと比べて部品の精度やツクリが違うので音も断然いいはずだとされている。

どちらがホントなんだろうかと迷うが、オークションの相場で推し量ると「オールド」のほうが2倍ほどの高値が付くので、おそらくこれが最大公約数的な見方なんだろう。

で、我が家では「オールド」が1本だけある。ロット番号が「6713」だから「1967年第13週」(以下「67年物」)の製造になる。



まずは希少管ともいえるが、惜しいことに「ゲッター」が薄くなっており、知人から「明日をも知れない命」と宣告されている(笑)。


ちなみに「ゲッター」というのは真空管内のガラス面に張り付いている鏡面状の灰銀色をしたもので、その働きはガス分子と反応・結合して壁面に吸着させ、空間から除去するものでガス分子をゲット(捕獲)するという働きから出た言葉。これが薄くなったり白くなったりすると管内の真空度が保てなくなるのでオシャカとなる。
                  

とはいえ、WE300Bは長寿命なことで有名で、指定された規格通りに使用してやれば永遠にといっていいほど故障しないという伝説がある。

したがって、この「67年物」はいったいどのくらいの寿命があるんだろうというのが目下の最大関心事。

もしオークションに出品すれば、欠陥品とはいえおそらく甘く見積もっても「10万円」はいくかな・・。

さあ、どう始末つけようか。

変わり映えのしない日常生活には適度な「スリル」と「サスペンス」が必要だと思うがこの真空管などは、格好の対象である。

ここで、ちょっと横道にそれるが「スリル」と「サスペンス」という言葉のニュアンスだがどこがいったい違うのか。

巷間では「顔の見えない真犯人を捜し出すのがスリル」、「真犯人がわかっていてじわじわと追い詰めていくのがサスペンス」だといわれている。

真空管でいえば「名も無き真空管の能力を計測するのがスリル」「有名な真空管が定評通りかどうかを見極めるのがサスペンス」かな(笑)

この「67年物」の場合、性能はわかっているが寿命のほうが「?」なので「スリル」と「サスペンス」が混在しているといえよう。

で、現用の1988年物はおそらく我が命尽きるまで故障しないと思うので、とうとう先日のこと、痺れを切らして右チャンネルの1本だけ「67年物」に差し替えて聴いてみた。

やっぱり1988年製の左チャンネルの音と違うんですよねえ、これが・・。

何だか右チャンネル側の音の重心が下がって落ち着いた響き具合だ。

個人的な意見だが「歪成分」が少ないと音の重心が下がる傾向にあると思っているが(聴感上かもね・・)、近代管に比べて古典管ほど重心が下がる傾向にあるのはこれまで散々経験したとおり。

で、このまま1週間ほど聴いていたところ、右チャンネルからガサゴソとノイズが発生しだした。

あれ~、とうとう寿命が来たのかとにわかに色めき立った。

急いでアンプのスイッチをオフにして右と左の300Bを入れ代えたところ、やっぱり右チャンネルからのノイズが消えない。

ああ、よかった、どうやら「67年物」の故障ではないようだ。

となるとスピーカーかな。

一難去ってまた一難、「AXIOM80」(オリジナル)は「繊細さが売り」だが壊れやすいことでも定評があり、低音域への過大入力は細心の注意を払っているので”まさか”。

で、「AXIOM80」に代えて「リチャードアレン」のユニット(後継20cm)に入れ替えたところ、やっぱりノイズが消えない。

ああ、よかった!これで、出力管、スピーカーともに故障がないことがわかって一安心。

結局、ノイズの原因はプリアンプのバッファー用の1本
にあった。上蓋を開けると1本の管の中が白っぽくなっていたのですぐにわかった。

この球は長期間使用した覚えもないし、「ムラード」の「M8136」だから絶対大丈夫という先入観があったので盲点を突かれた印象だが、一番安上がりの故障で済んだのでよかった。

それにしても、オーディオ機器の故障の時に、いつも最悪のケースから順番に考える癖がついた人間はあまり心臓によくないですね、おそらく長生きは無理でしょうよ(笑)。

PS(追伸)

昨日(13日)このブログを一読された「北国の真空管博士」から次のようなコメントがあったので記録に残しておく。

★ WE300Bの製造開始は1936年です。1956年の中ごろに「フィラメント」を変えてますので、もし「オールド」というならそれ以前のものでしょう。

★ WE300Bはとても丈夫な球です。ゲッターが薄くなってもフィラメントがその代わりをすることがありますよ。

★ あなたの300Bアンプはごく軽い動作に設定していますので「67年物」でもかなり寿命があると思います。十分使えると思います。

というわけで、オークションに出品するのはもったいないので止めておこう(笑)。




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