「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

刻印入りの「2A3」真空管

2015年12月01日 | オーディオ談義

常日頃、オーディオ仲間との交流を“あっけらかん”と綴っているこのブログだが、自分で得た知識を披瀝するのならともかく、仲間からの情報をそのまま記入するとなると、やはり神経を使わざるを得ない。

おそらく高い授業料を払って得られたであろうノウハウや知識を、いくら親しいとはいえアカの他人がはたしてタダ同然で公開していいものかどうか・・・。

そこで、そういう類のことを記事にするときはなるべく事前にご当人の了解を得るようにしているが、「どうぞ、どうぞ、気の済むように何でも書いてください」と、極めてオープンなのが古典管にメチャ詳しいKさん(福岡)。

改めて度量の大きさに感謝だが、そのKさんが珍しく「この球だけは絶対にブランド名を非公開にしてくださいね」と念を押された真空管がある。それは、刻印入りの「2A3」真空管。

「刻印入り」といってもピンとこない方もいるかもしれないが、古典管の中でも最初期に作られたものはソケット部分にブランド名がわざわざ刻み込んである。普通の真空管はといえば安上がりのプリント印刷になっている。大半がこれである。

たとえば有名なWE300Bの最初期のものは「刻印入り」になっていてメチャ音がいいとされ、たしか昨年の今ごろだったか、オークションで100万円(ペア)近い値段で落札されている。

WE300Bに限らず「刻印入り」の真空管となれば、まず音がいいのは確実なのでそれだけで稀少価値があるともいえるが、なぜKさんが刻印入りの「2A3真空管」の公開にストップをかけられたのか、その辺の事情を縷々述べてみよう。

たしか2年ほど前のことだった。同じ「AXIOM80」仲間のKさんを迎え、例によって我が家で試聴会を開催したが、そのときに試聴用として持参してきてもらったのが刻印入りの「2A3」真空管だった。仮に名称を「V」としておこう。

「2A3」にはいろんなブランドがあり、手元には有名なRCA(アメリカ)からカナダ・マルコーニ、エレハモ(ロシア)などを取り揃えていたが、この「V」に差し換えたところアッと驚くほどの変わり様。音楽がまるで別物に聴こえるのだ。

「ウ~ン、参った」というわけで、「この球はどこで買えますか」とKさんにお訊ねしたところ東京のとある真空管ショップを教えていただいた。さっそく、メールで問い合わせたところ、在庫が3ペアだけあるとのこと。

ためらうことなく、すぐに3ペアすべて押さえたが、するとKさんが「自分もあと1ペア欲しかったのに・・」と、嘆くまいことか・・・。

まったくKさんのことは考慮しなかったのだが、結果的には仲間内での「仁義なき戦い」になってしまった(笑)。

自分の方がKさんよりも年長なので「もし自分に何かあったときは、Kさんに優先して渡すように家内によく言い含めておきますから」ということで、ようやく気を鎮めてもらった(笑)。

ちなみに、この「V」は今では海外のオークションで自分が購入したときの2倍以上の値段で取引されている模様で、
たいへんな稀少管となっている。

昨日(30日)のことだった。Kさんは現在「2A3」の一枚プレートから、この「V」に差し替えて「AXIOM80」を聴いておられるとのこと。

「2A3の王者は一枚プレートだと思いますが、このVはそれに肉薄しますね。むしろ中低音域の質感は上回るほどですよ。もしオークションに出品されたら絶対に買いです。」と、たいへんな意気込みよう。

とまあ、そういうわけでKさんから固く口止めされた理由というのは「オークションで、むやみやたらにライバルが増えると困る」ということがお分かり頂けたかと思う。とはいえ、大したブログでもないのでそれほどの影響力があるとも思えないのだが(笑)。

ふと、我が真空管人生をふり返ってみた。はじめの頃、わけのわからないままに有名なWE300BやPX25を使ってさえいれば大丈夫だろうと購入してみたものの、たしかにいい真空管には違いないが、システムとの相性次第ではお値段が安くともこれらに優るとも劣らずの真空管が沢山あることにようやく気付いた。さしずめ「V」はその代表格である。

しかし、何ともはや高~い授業料だったわなあ!(笑)

昨日(30日)は日変わりメニューの一環で再度、「刻印入り2A3」アンプを引っ張り出してみた。真空管プリの1号機では相性が悪くて少しノイズが目立ったが、真空管プリ2号機では見事に「刻印入り」の底力を発揮してくれた。

        

システムの流れはこうである。

CDトランスポート「ヴェルディ・ラ・スカラ」(dCS) → DAコンバーター「エルガー プラス」(dCS) → プリアンプ「真空管式2号機」 → パワーアンプ「刻印入り2A3シングル」 → スピーカー「フィリップス:口径30センチのフルレンジ」(ウェストミンスターの箱入り)


このシステムで歌謡曲三昧。美空ひばりに始まって“ちあき なおみ”、そして最後にテレサ・テンの「雨の夜の花」を聴き耽った。

テレサの可憐な声と唄い回しもさることながら、何というロマンチックな歌詞だろう!まるで情景が目に浮かんでくるようだ。

雨の降る夜(よ)に/咲いてる花は/風に吹かれて/ほろほろ落ちる

白い花びら/しずくに濡れて/風のまにまに/ほろほろ落ちる

更けてさみしい/小窓の灯り/花を泣かせる/胡弓の調べ

明日はこの雨/止むやもしれぬ/散るを急ぐな/可愛い花よ

雨の降る夜(よ)に/咲いてる花は/風に吹かれて/ほろほろ落ちる

一つの句がすべて7つの語数で構成された、まことに見事な「七言律詩」である。
 

やっぱりボーカルは「小出力の真空管アンプ+フルレンジ・スピーカー」に限りますぞ!


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