政治家の持病
2014年2月25日
森元首相は「あの子は大事な時には必ず転ぶ」との失言に対し、浅田真央ちゃんのひと言「森さんは後悔していると思います」で、一本とられましたね。さすがに世界的レベルのフィギュア選手は頭も表現力も鍛えられています。これで人気がまたあがります。森元首相はもともと、失言癖という持病があり、語録がまた増えました。
ソチ五輪のショートで大失敗した真央ちゃんはフリーで見事な滑りを見せ、満面の笑みを浮かべ、思わず感激の涙も流し、喝采を受けました。帰国していた森元首相の失言はその少し前のことでした。国内の講演で「頑張ってくれと見ていましたけれど、真央ちゃん、ショートで見事にひっくり返りました。あの子、大事な時には必ず転ぶんですね」と、しゃべり大騒ぎになりました。
元首相には悪気はなかったのでしょう。「日本は団体戦に出なければよかった。アイスダンスがだめで、負けると分っていた団体戦に浅田さんをだして恥をかかせることはなかった」といい、本人をかばうのが発言の真意だったのでしょう。「自分が、本番の時には、なんとしても転んではいけないとの気持ちが強くでたのだと思います」とも発言していました。
これに対し、真央ちゃんは日本外国特派員協会の記者会見に招かれ、「森さんはああいう発言をしてしまったことを、後悔していると思います」と述べました。大人の発言です。「自分は失敗したくて失敗しているわけではない」とも語り、真央ちゃんのファンから「森さん、自分で滑ってみればいい」という怒りの声を誘ったのです。
内輪の席の座興なら、「森さんは面白いことをいう」で終わっていたでしょう。なんとなく憎めない顔をしている森さんがいいそうな言葉だからです。座興で終わらなかったのは、話題いっぱいの花形のフィギュア選手と、2020年東京五輪組織委員会会長という組み合わせだったからでしょう。相手が真央ちゃんでなかったら、騒ぎにならなかったと思います。
森元首相は学生時代にラグビーをやり、大学の弁論部にも所属していたそうです。座談はうまいひとです。わたしは何かのイベントで、森さんが主賓として壇上に上がって挨拶をし、その後、主催者側のひとりとして、わたしも短い挨拶をした覚えがあります。森さんの挨拶には、どうということのない話をついつい人に聞かせてしまう話術の妙がありました。サービス精神も旺盛で、わたしの挨拶を聞いて「あなたの話は上手だ。あなたの新聞社のトップのひとに伝えておきましょう」といってくれました。ただし、トップに伝えた様子はありませんでしたね。
政治家は大勢の人を前に、分りやすい話をして、人をひきつける術が必要です。「ナチス憲法」発言で国際的な波紋を呼んだ麻生元首相も、座持ちのいい、座興の名手らしいですね。この発言は、失言というより、基本的認識に間違いがあった無知に近い暴論でしたがね。揚げ足を取られないように「言語明瞭、意味不明瞭」を自認していた竹下元首相などを除くと、とくに自民党型の政治家には、失言壁の持病があります。いつも人を面白がらせる話術が求められるので、それが場違いのところでうっかりでてしまうのでしょうね。
森さんは、森政権の発足直後に「日本は天皇を中心とした神の国である」と、述べました。驚いたのは日本人ばかりでなく、外国人もそうでした。もっともこれは、神道政治連盟議員懇談会での発言でしたから、支持団体に対するサービス精神によるものでしょう。総選挙前には「無党派層は寝ていてくれればいい」といいました。これはうっかり口が滑って本音を語ったのでしょう。2001年には、米原潜がえひめ丸と衝突し、死者がでた事故で、連絡を受けながら、ゴルフをしばらく続け、これが命取りになって、まもなく退陣しました。
どこかの記事で、森さんの事務所にメディアから失言の取材の申し込みがあり、後から本人が電話してきて、真意はこれこれだったと語った、という話を読みました。そこまでおやりになるなら、真央ちゃんに電話の一本でもかけて、わびたらどうでしょう。かえってそのほうが森さんの人気も上がりますよ。とにかく、東京五輪に向け話題をひとつ添えましたね。
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