駆け引きより政策論争を
2024年6月21日
イタリアでG7(先進国首脳会議)が先日開かれ、7人の首脳のうち6人が来年も参加できるか分からないと指摘されました。岸田首相、バイデン米大統領、マクロン仏大統領らです。G7が1975年に開かれ約50年経ち、国際情勢の力関係は様変わりとなり、G7はすっかり力量が低下しました。大波乱の世界史の時代です。
日本の一人当たりのGDP(ドル建て)はG7最下位クラスで、先進国というより、中進国レベルの扱いです。黒田・安倍ラインが積み上げた国債残高、日銀保有高のお陰で、円安に手の打ちようがない。翻って日本の政局をみますと、政治資金規正法を巡る与野党、あるいは与党内のもめごとが最大のテーマになってきました。
政治資金の不正流用、適正な運用の問題はもちろん大切です。それより重要なのは、正しいカネの使い方をして、どのような政治、政策を行うかという「大きな政治論」が行われることです。国際情勢が激変しているのに、「大海を知らず」の国会論争を延々と見せつけられ、与野党とも何を考えているのだろうと、国民は失望しています。
大きな責任は、政治報道をする政治部記者にあります。先週の全国紙の見出しは「解散は総裁選以降に」「首相調整、信頼回復に注力」(準トップ、4段、読売)でした。時事通信の世論調査で岸田政権支持率が16・4%まで低下し、この不人気では解散・選挙などできるはずはありません。
本人は解散権を持っていることをちらつかておけば、脅しにはなるといった程度の計算はしていたのかもしれません。その解散なんかできないことは本人が一番よく知っているはずです。ありもしない解散をさもあるかあのように記事で書き、首相が見送り発言をすると大扱いする。ばかばかしい政治ジャーナリズムです。
日銀の慎重すぎた、びくびくした金融政策を見て、21日、円は1㌦=159円程度まで円安になりました。物価がまた上がることのほか、国際公約の防衛予算のGDP比2%達成のために、2027年度までに43兆円(22年度に決定)の積み増しを決めています。その後の円安(1㌦=50年)で、ドル換算で3割も減価しました(日経)。
米国から調達するステルス戦闘機は1機あたり116億円の想定が140億円に、イージス艦の取得費は2400億円の想定が3920億円に跳ね上がった(日経)。政治資金の裏金の規模よりはるかに大きい。
日銀が7月に国債購入額(現在月6兆円)を減らし、量的引き締めに舵を切る構えです。異次元金融緩和の正常化は財政状態の正常化と一体でなければ進まない。野党は自公政権に、財政政治正常化を制度的に監視する「財政独立機関」の設立を突き付ける好機なのに動かない。こういうのが「大きな政治」なのです。
野党は失点稼ぎの「小さな政治」ばかりに執着し、「大きな政治」の論戦を仕掛けない。国民が関心を持っているのは「政治資金の流れを正常化し、その上に立ってどのような政策選択をしていくか」にあります。
政治ジャーナリズムが得意とする「岸田首相の外遊中に、麻生、茂木氏が会食し、両者の亀裂が深まった」、「岸田首相が帰国後、やっと麻生氏と会談できた」といった類の話よりも、本質的なテーマを据えて政治報道をしてほしい。
政策論そっちのけで、「誰と誰が会った」、「誰と誰の亀裂は修復できるのか」といった『永田町新聞』的な報道から脱皮を望みます。
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