新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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都知事選の広報騒動で見た間抜けな選挙管理委員会

2024年06月24日 | 社会

 

出し抜いた候補者たち

2024年6月24日

 東京都知事選の選挙公報が配られてきました。唖然、茫然です。回を追うごとに違和感のある候補者の広報が増えてきており、今年は一挙にタガが外れた感じです。14㌻もあるこんな広報紙を都民722万世帯に配布し、都内1万4000か所にポスターを貼る掲示板を設置した都選管は間抜けとしかいいようがありません。

 

 候補者の方は狙いを定めて悪計を練り、選管が気がついた時には、「時すでに遅し」で防ぎようがなかったか。民主主義の基盤である選挙の精神を踏みにじった候補者を責めるより、こんな広報を722万世帯に配った都選管の間抜けぶりに、愕然とします。事前情報はたくさんあったはずで、想定外では済まされない。

 

 最もひどかったのは「NHKから国民を守る党」です。立花孝志党首ひとりに選挙公報がハイジャックされたような惨状です。候補者56人中、19人が「NHK‥党」から出馬し、1人当たり横長に40㌢、縦20㌢ほどのスペースのうち、35㌢を立花党首の独演に割き、各候補者のスペースは横5㌢に過ぎません。

 

 泡沫候補を19人立ててスペースを確保し、そのほとんどを使って立花党首の名前を大書し、的外れの暴論、奇論で埋め尽くしております。「NHKに受信料を支払う人は馬鹿だと思います。NHKをふっ壊す」と。19人の候補者は片隅に追いやられ、出汁に使われている形です。

 

 選挙公報は、各候補者から送られてきた原文に手を入れずに、掲載する規定になっているからこんなことになる。公職選挙法を改正しておくべきでした。今の規定は「言論の自由」を守るためとか。「言論の自由」と「暴論の自由」を混同している。「自由」には「責任」が伴うことを無視しています。

 

 林官房長官は「掲示板を候補者以外は使用できない」と発言し、無関係な人物のポスターを貼った場合は、警察あたりが対処する。そこまではいいにしても、長官の「記載内容を制限する規定はない」とかの部分はおかしい。「制限する規定はない」ではなく、「今回のようなケースは想定していなかった」が正しい。

 

 立候補し、投票総数の1割未満しか取れなかった場合は、300万円の供託金を没収されます。「NHK・・党」の場合は、計5700万円(19人分)になる。もともと売名が目的だったろうし、YouTubeかなんかで拡散すれば、元を取れるとの計算でしょう。300万円は売名のコストです。

 

 他にも「覇王党」(明るい日本を取り戻す)、「伝説の弁護士・石丸幸人党」(悪質なサラ金を一掃)、「忠臣蔵義士新党」(敬愛と孝養の精神)、「ゴルフ党」(金持ちのお金を再配分)など、売名、からかい半分の候補者が乱立しています。

 

 こうした傾向は回を追うごとに増えています。せっかく1万4000か所の掲示板を用意したのに、まじめにポスターを貼っているのは、数人から10人程度でしょう。「56人が立候補したので、掲示板のスペースが足りず、臨時に増やす」(都選管)も馬鹿げた対応です。

 

 米国の大統領選でも、泥試合が続いています。偽物(フェーク)の選挙情報も紛れこみ、民主主義の土台である選挙が世界的に危機に立たされています。せっかくの選挙が薄汚れ、いいようにかき回されている。公職選挙法の改正作業に直ちに取り掛かるよう望みます。


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