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岸田政権が乱造する政府会議は国家資本主義を目指すか

2021年11月14日 | 政治

 

「新しい資本主義」の落とし穴

2021年11月14日

 岸田首相は「新しい資本主義実現会議」など5つの政府会議を新設し、主なものは9つになりました。そのうち首相は6つの会議の議長ないし会長を務めます。「やっている感」を出すための演出が過剰です。

 

 竹中平蔵氏の「アーリー・スモール・サクセス」(早期に小さな成功例を示す)という助言を受け、菅前首相は「携帯電話料金の値下げ」「ハンコの廃止」から着手しました。

 

 それに対し、菅氏には「日本をどうするかというグランド・デザイン」が欠如しているとの批判が噴出しました。岸田首相はそこで「新しい資本主義実現」と、大上段に構えたのでしょう。

 

 首相の持論は「自分の持ち味は聞く力」です。「聞く力」があっても、こんなにたくさんの会議を主宰していたら、聞ききれないでしょう。

 

 官房長官や主要閣僚に任せ、自分はどっしりと構え、首相は最重要の問題を選んで塾考すべきなのです。

 

 そのほか閣僚が21人(首相を含む)います。総務、外務、財務といった主要省庁のほかに、少子化・女性活躍、経済再生、ワクチン・五輪、万博・消費者などを担当する閣僚ポストが既に新設され、21人に膨張しています。

 

 政治、経済、社会が複雑化し、新しい問題が次々にでてきたにせよ、閣僚を増やし、会議をどんどん増やしていったら、民間企業ならとっくに潰れているでしょう。企業は役員ポストを減らし、会議は簡素化しています。

 

 「新しい資本主義」を看板に掲げなら、政府自らが民間企業と逆の動きをしています。「新しい資本主義」とは、政府の肥大化か国家主導型資本主義かと錯覚します。何から何まで政府会議の結論待ちとなる。

 

 「新しい資本主義実現会議」は、設置後まもなく緊急提言を発表しました。資本主義のあり方は、泥沼に浸かったようなマネー経済のあり方と連動し、主要国で問われている本質的なテーマです。

 

 本来なら、そんな簡単に「緊急提言」を出せる類のものではない。「経済思想としての資本主義とは何かを問う。世界に目を向けて問題意識を共有すれば、もっと深い議論ができる」(日経コラム・十字路)のです。

 

 緊急提言の中身は、経産省、厚労省、文科省などが懐に入れていた政策を羅列した感じです。いきなりこんな「作文」が飛びだしてくるとは、私は想像もしていませんでした。

 

 しかも国、国家資金が関与する項目が多すぎます。「新しい資本主義」とは、「政府から自立した市場の機能をいかに生かすか。肥大化した財政・金融による支配からの出口をどう見つけていくか」が前提です。

 

 一読すると、「新しい資本主義の構築の動きを国が先導する」「国が経済安全保障上のニーズに基づき研究開発のビジョンを設定し、支援する枠組みを設ける」など、「国」が主語になっているものが多い。

 

 「デジタル化を活用した地域の自主的な取り組みを支援するための交付金を大規模に展開する」「半導体製造工場の刷新・増強のための設備投資を支援する」など、国家資金を使う項目も並んでいます。

 

 緊急提言を見る限り、「新しい資本主義」とは「国家主導型資本主義」を念頭に置いているような印象を受けます。

 

 主要国には、財政赤字の累積、金融緩和の手段としての中央銀行の国債保有の膨張という共通項がある。その中でも、日本の数値の高さは別格です。

 

 日銀の保有ETF(上場投資信託)は株式市場の7%に及び、多くの企業の筆頭株主です。「中央銀行は市場との対話に努めるべきだ」という流行語は、「市場は政策当局の説明を聞くまで自主的に動けない」の意味です。

 

 経済を目先の利害関係で考える政治、政府規制で権限を持ちたがる官僚が主導する資本主義なら、日本経済は長期的停滞から脱却できません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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