電通式のビジネスに犯罪の原点
2022年8月21日
参院選が終わったら、旧統一教会と政治家の相互依存、東京五輪のスポサー契約を巡る贈収賄など、尾を引きそな問題がぞろぞろと浮上してきました。このうち五輪汚職は構図は単純で、組織委員会が監査体制を整えておけば、未然に防げたはずだったと思います。
電通の元専務・高橋治之容疑者をメディアは、朝日新聞も読売新聞も「スポーツビジネスの第一人者」「絶大な影響力を持つドン」などと呼んでいます。「第一人者」という肯定的な評価と、収賄で逮捕された人物の否定的な評価がどうにもつながりません。
高橋を「スポーツ利権屋の第一人者」と呼ぶのが正しい。スポーツを錬金術に仕立てる悪だくみの才能には長けていたのでしょう。この「スポーツビジネスの第一人者」と「スポーツ利権屋第一人者」が同一人物であることが、今回の犯罪を誘発したのだと思います。
「国際サッカー連盟のブラッタアー前会長とも親交があり、アポなしで面会できた」という記事がありました。不透明なカネの流れがあったに違いありません。五輪、サッカーばかりでなく、カネになりそうな各種のスポーツにも入り込んでいるのだろうと、想像します。
五輪組織委員会は国、都、民間企業の出向者約7000人の寄り合い世帯で、スポーツビジネスの素人ばかりです。「日本にはスポーツビジネスの本当のプロはいない」といわれてきました。広告会社がスポーツビジネスを一手に引き受けるのが日本の構図です。ですから電通側のいいようにされてきたのです。
組織委のマーケティング局には、大勢の電通社員が出向していました。かれらは公務員に準じる「みなし公務員」の身分にあるといっても、電通の利益をまず考える。組織委員会という公益か、電通の利益か、どちらをとるか、当然、利益相反の関係になります。かつての上司である高橋にも背くわけにはいかない。
このような場合は、スポンサー契約を入札制にしておき、今回のように高橋の裁量が働かないような仕組みにしておかなければならない。契約した金額が適正だったか、どう動いたかをチェックすることも必要です。国や都の公的資金(7800億円)が投入されているから当然のことです。
武藤敏郎・事務総長は理事会で議事が紛糾した際、「民間の契約については話せない」と、とりなしたそうです。「監査法人がきちんと監査しますから」とも言わない。経営情報の非公開が犯罪発生の誘因となる。
フランスでは五輪資金について、特別法を制定しチェックするといいます。英国では会計検査院や議会の決算委のチェックを受けます。日本は情報公開に組織委は消極的です。
会計帳簿、重要書類は清算法人にすでに移管され、10年の保管は義務付けられている。一般公開しないといっても、捜査当局はチェックできる。疑惑が生じたのだから、国会や都が協力して、調査委員会を設けたらよい。その結果をきちんと公表してほしい。
当時の安倍首相も何代かの知事も、五輪誘致だけで頭がいっぱいで、カネの流れに不正が起きないような体制を整備しておくことに無関心だったのでしょう。だからスポーツ利権屋にやすやすと犯罪を許したのです。
本来なら15億円の契約料(オフィシャルサポーターの場合)をAOKIには半額ないし3分の1の格安にしたようです。組織委に入ったのは5億円(3分の1)、高橋の介入でさらに2・5億円(これを合わせると半額)が電通子会社・高橋側に支払われたそうです。
2・5億円のうち、1億数千万円は高橋側が懐にいれたと、検察当局はメディアに漏らしています。事実ならば、組織委(清算法人)も高橋を告発すべきです。AOKIの株主は、会社に損害を与えた高橋や、青木拡憲・前会長に対し賠償請求訴訟を起こすでしょう。
電通は各種スポーツ団体、組織などに社員を送り込み、利益を生み出す種を撒いておくという商法を得意としてきました。種になりそうな企業、団体幹部の子弟を縁故採用で優遇して恩を売っておく。朝日新聞のかつての社長の息子まで採用していたという話も有名です。近代経営に向け、体質改善が必要です。
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