ウクライナ支援の限界
2014年3月5日
ウクライナをめるぐ報道が連日、紙面に踊っています。ロシア、欧州、米国、さらに中国など主要国の動き、必死の駆け引きが日替わりのように伝えられ、国際情勢の現状が丸見えとなっています。今の世界はこういうことなのだ、と悟る感じですね。
結論から先に申し上げると、大国で乱暴な国が少なくとも、二つあり、軍事力を背景に暴走しております。それはロシアと中国です。そのほか、シリア、エジプト、さらにタイなどで国家が分裂状態であり、世界各地でますます混迷が深まって行きそうな気配です。日本はそうした状況を前提に、行動原理を決めていく必要があります。日本だけをみつめていると、すがすがしい平和主義に陥りかねません。国際情勢にはうといわたしの感想文のようなブログを書きました。
ウクライナ情勢はまるで劇場です。毎日、情勢が転々としますから、ある日のニュースを見聞きして、こうなるだろうと予想すると、翌日それが的はずれに終わっています。それだけ関係国が多く、シナリオを描けない劇場になっています。いくつか例をあげましょう。
・クリミヤ半島に駐留するロシア軍が、ウクライナ軍に投降しなければ、攻撃を開始すると、最後通告したとの報道があり、にわかに情勢は緊迫しました。それが、翌日にはロシアが最後通告という報道を否定し、この間、株式相場は急落、急騰しました。
・オバマ米大統領が「いかなる軍事介入も代償を伴う。ロシアを孤立化させる」との強い調子の声明を発表し、緊迫する話になりました。これに対し、プーチン・ロ大統領は「軍事力は今は使う必要がない」と記者会見で語りました。
・欧米は経済制裁でロシアに圧力をかけることを検討しているとの報道です。それが、ドイツなどは天然ガス輸入の3割をロシアに依存しており、強力な制裁には賛成できないとなっています。
そうした中で、日本のメディアはロシア、ウクライナ情勢に鋭い感度が働かないせいか、社説などはどの新聞をみても主張がまったく同じです。もどかしいですね。国内問題では主張が対立することが多いのに、ウクライナ問題では同じような正論が目につきます。いくつか拾ってみました。
・ロシアの軍事介入は認められない。軍事力の行使は孤立化を招く。
・ロシアは強硬策を控え、米欧と協議し、平和的な事態収拾に努めなければならない。流血の惨事を回避すべきだ。
・ウクライナ政権にも自制を求める。ロシアの挑発にはのってはならない。
日本政府に「この地政学的な要衝国の安定のために関与を強めるべきだろう」、「日本政府の対応も問われる」、と指摘する社説もありました。その通りであるにせよ、具体的にどうするのか、と問われると、相当に難しい問題です。
日経新聞に載った英フィナンシャル・タイムズの社説は「ベルリンの壁の崩壊から25年。欧州には再び革命の響きと激情が広がっている」、「ロシアとウクライナを、何年も続くかもしれない血なまぐさい紛争に巻き込む可能性がある」、「第二の冷戦の最初の兆しが欧州に垂れ込めている」と指摘しました。大きな流れの中で、情勢の展開を見つめています。そのほか、識者の見方を含め、そうだろうなと、わたしも感じる点は以下の通りとなります。
・ロシアの黒海艦隊のあるクリミヤの実効支配は既成事実化している。
・ロシアはここを拠点にウクライナに軍事力の存在を見せつけながら、圧力をかけ続ける。だたし、欧米との全面対決になるような事態は望んでいない。
・ウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への加盟は絶対に阻止する。ロシアの勢力圏から完全には離脱させない。
こんな感じですかね。こうした国際情勢の中で、日本は何を学ぶべきなのでしょうか。まず気になった記事があります。「米、対ロ戦略描けず。オバマ流外交の限界」という記事で「大統領の国際協調主義の限界が浮き彫りになり、大統領の指導力と威信が問われている」と指摘していました。随分と無理な注文をつけるなあという印象です。米国に過大な期待をもうかけられないというのが現状でしょう。具体的に軍事力の行使でも求めるのでしょうか。そんなことはできません。クリミヤからの撤退をロシアに要求しても、応じないでしょう。ロシアも米国の力の限界を見極めながら行動しています。そんな時代に入ったことを認識することのほうが大切だと思います。
ウクライナは実質的にクリミヤ半島をすでに失いました。こうした国際情勢の混乱の中で、もし、もうひとつの乱暴国家、中国が尖閣諸島で力を行使でもしたらどうなるのでしょうか。尖閣は日米安保条約の対象地域に含まれています。では、米国は中国との直接対決を覚悟してまで、日本側につくのでしょうか。
最近の米国の国情、「米国は世界の警察官ではない」という大統領の行動原理からして、そこまではしないと思います。外交的には、中国に圧力はかけるでしょう。そうしながら、日本は自力で目いっぱい、努力してくれという態度に終始するでしょう。そうであるがゆえに、日本、というより安倍政権は靖国参拝のように、中国に言いがかりをつけられるようなことはすくなくとも、避けなければなりません。靖国問題などで、日米間にはすきま風が吹き始めているとの観測がしきりです。少なくとも同盟国との関係はきちんと維持、対日感情をよくしておかねばなりません。
国際紛争の当事国で、被害を受ける側に回ったとき、関係する支援国がどこまで動いてくれるのか、動けるのかという具体的事例をウクライナで見せつけられている感じです。
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