野党議員は政権の弱点をつけ
2016年1月14日
他人の忠告や評判を聞き流し、心に留めず知らん顔をしている。辞書では馬耳東風の意味をこう解説しています。このところの国会論戦を見聞していると、国会議員の耳は馬以下であるような気すらしてきます。その様子を報道するメディアも時間と紙を無駄に消費しています。いっそのこと、意味のない論戦を報道は無視すべきです。
国際情勢も金融情勢も波乱の年明けです。波乱というより大波乱の展開です。オバマ大統領の一般教書演説で表明したことは、「米国として打てる手はない。中東情勢などに米国は深入りできない」という意味でしょう。中国のバブル崩壊からきている連日の株価急落は大きな危機が忍び寄っていることを意味します。馬の耳以下ですか、国会議員の耳には、波乱や危機の風音が聞こえていないとしか思えません。
13日の衆院予算委で賃金問題の質疑が行われました。勤労者全体の総雇用者所得が増えているのに、1人当たりの実質賃金が伸びていない問題が取り上げられました。その理由として、安倍首相は「夫の月収50万円、そこへ収入の道が新たに開けた妻の分が25万円。足して2で割れば、夫1人の時より平均値は下がる」という意味の説明をしました。その通りでしょう。
格差問題を正面から論ぜよ
民主党議員は「妻25万円という発言はパートの実態が分っていない」」とかみつきました。そんな重箱を隅をつつくより、収入の多い正社員の比率を社会全体でどうやったら増やせるか、組合の組織率をどう高めるか、問題提起すべきでしょう。企業による人件費の削減強化、マネー経済の膨張による社会的な格差拡大などをどうして正面から論じないのでしょうか。
株価が年明けから6日間、連続して下落し、13日に久しぶりに上昇しました。やれやれと思ったら、14日は再び急落です。主要国の超金融緩和で、世界マネー市場の水位があがり、株価の上下動が目まぐるしくなっているのです。デフレ脱却のためと称して、超緩和に抱かれた状態が続くと、株価バブルの生成、崩壊が常態化し、実体経済を危機にさらすのです。
この問題は、国会で論議する絶好のチャンスなのです。日銀総裁は超緩和政策の出口論(離脱)は一切、避けています。というより、金融を正常化させる問題から逃げ回りたいのです。物価があがらない、景気動向がよくないなどを理由に、追加緩和を続けていると、どんどん深みにはまるのです。結局、水浸しの経済から抜け出せないことになります。なぜ金融緩和の限界と副作用をめぐり、正面からの論戦に持ち込まないのか不思議でなりません。
安倍首相はデフレ脱却について、いかにも自信のなさそうな発言をしています。「デフレではない状況を創りだせた」としながら、「まだ道半ばで、デフレ脱却というところまできていない」と、いいます。「デフレではない状況」、と「デフレ脱却」を使い分けているのです。
デフレ対策のツケを棚上げ
経済指標のいくつかに好転の兆しあったとしても、前代未聞の異次元緩和、史上最大規模の国家予算(100兆円)に支えられているのです。いわばガソリン代をツケ払い、後払いにして長旅にでているようなものです。ツケを払い終えても、デフレに逆戻りしない状態を保ててこそ、デフレ脱却に成功したといえるのです。道は遠いいのです。ガソリン代を棚上げにした論議を安倍政権は繰り返してしているのです。野党はなぜそんな重要な点をつかないのでしょうか。
軽減税率の財源論も不可解な議論です。「税収の上ぶれ」を当て込んだ首相の願望は、自ら「安定財源ではない」と認め、しぶしぶ引っ込めました。景気対策の結果で「上ぶれ」が生じれば、赤字国債の減額に当て、景気対策のコストを回収するのが筋です。それを減税にまわしていたら、いつまで経っても財政再建はできません。
軽減税率の財源論も妙な仕掛け
さらにいうと、「上ぶれ」は手品みたいなもので、歳出圧力をかわすために、当初予算を組む際に、実際の予測より歳入規模を抑制しておけば、年度末に「上ぶれ」が生じるという具合ですかね。まともな財政論とはいえません。
そもそも軽減税率の財源論ということからして、おかしな議論です。新しい消費税率を設定しようということになって、その目標に届かなければ、得られる税収に合わせて歳出(この場合は社会保障費)を決めればいいだけのことです。それを「財源論」と称したのは、軽減税率の対象を拡大する動きをけん制するためだったのでしょう。自民党税調、財務省の悪知恵です。野党は自公政権が嫌がる論戦をなぜしかけないのでしょうか。
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