新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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W杯は「野生動物の楽園」か

2014年07月01日 | 社会

  日本人は農耕民族

                    2014年7月1日

 

  サッカーのW杯ブラジル大会は決勝トーナメントに進み、連日、世界中のファンをわかせています。スポーツの中でもっとも熱狂する日々ですね。なぜでしょうか。人間に進化しきれていない、といえばお叱りを受けるでしょうから、野性味を色濃く残した選手たちが戦う「野生動物の楽園」、あるいは「野生動物の戦場」だからでしょう。無意識のうちに、人間がまだ野生だった時代の記憶と重ねているのでしょう。

 

 前回のブログ「W杯は子供の教育に悪い」(6月20日)で、「ルール無視は平気」、「ルールがあるようでないのがルール」、「審判は見てみぬふり」、「もめ事がおきるのを売りにしている」と、書きました。現実の社会では、ルール破りは常日頃ですから、サッカーと似ています。ワイルドなところを売りにしていますから、ルール違反を次々に犯してもいいということなのでしょうか。このスポーツは日本人には、かなり距離があり、トップレベルにいくには、無理がある世界と思いました。日本人は農耕民族で、植物的な人種ですからね。

 

 連日の熱闘を見ていて、やはり「野生動物の楽園」という印象を改めて持ちました。ウルグアイの選手がイタリアの選手の肩に噛み付きました。並みの人間が人に噛み付こうとしても、うまくいきませんよね。しかも相手は走っていますから、野生動物並みの運動神経をもっていなければなりません。この選手がかみついたのは、これで3度目といい、部位も今回の肩、それ以前は首もと、腕と満遍なく、多彩に噛み付くワザを持っていることを証明しました。野生の証明でしょう。さすがに見ないふりはできず、9試合の出場停止処分にしました。

 

 この異常な行動を、日経新聞が解明しています。「大人のかみつきは独占欲、支配欲の表われで、おれはおまえより上回っていることを示す行為」だそうです。「テンションの異常な高まりが動物としての原初的行為に走らすのだろうか」とも書いています。他の全国紙は、雑報程度の報道なのに対し、日経は堀り下げています。目のつけどころはいいですね。

 

 ついでに申し上げると、メディアが国際サッカー連盟(FIFA)に対する公式スポンサー企業に名を連ねると、サッカーに対する批判的記事をなかなか書きません。サッカーの記事は遠慮が目立ち、つまらないのです。本田が優勝を目指すといった発言を何度も、新聞やテレビは報道しましたね。メディアは、今回の日本チームを「これまでで最強のチーム」とも書いて前人気をあおり、、そのまま信じたファンも多かったでしょう。結末を見て、怒ったでしょう。いまさら「世界の壁は厚かった」と、後で言われても困るのです。

 

 一次リーグで敗退した最終戦のコロンビア戦で、相手は日本を軽くみて、主力を温存しました。その2軍並みの選手に日本は1対4で敗退です。そのことを日本の新聞はその日の観戦記できちんと書かなかったところがありましたね。読売は26日になって、社会面で、「一勝もできず、主力の大半を出さなかった相手に大敗」と書き、「本来の力を出せなかったことが悔しい」とのファンの声を紹介していました。事前の取材で、技術、体力面で主要チームと大差があることを、きちんと書き、ファンが幻想を抱かないようにすべきだったでしょう。

 

 「史上最強との呼び声も高かった」と新聞は書き、その根拠として、「好調時には世界の強豪とも互角に戦った」ことをあげています。日本が健闘したのは、要するに、親善試合に過ぎず、相手国は一線級は出さないし、格下の日本とのゲームで、無理して怪我をしないようにしております。そんな試合のテレビ中継に熱中し、点が入れば大歓声を上げるなんてね。練習試合レベルのゲームであることを、メディアはきちんとファンに知らせるべきでしょう。そんなことを書くと、親善試合を見るひとが減って、高い視聴率を稼げなくなり、広告収入も減ってしまうのでしょう。日本のスポーツ・メディアに共通する弱点です。日本のスポーツ・ジャーナリズムはサッカーに限らず、商業主義をなかなか排除できないのです。

 

 「世界レベルの実践を積め」という声が聞かれます。「南米選手権のように、親善試合でなく、タイトルをかけた実戦を」はその通りでしょう。テレビの視聴率を上げ、メディアの広告収入増に奉仕する段階から卒業すべきでしょう。一次リーグ敗退後、監督の戦術、作戦ミスとか、試合運びに即した細かな責任追及めいた記事が目立ちました。本当の原因はそれ以前のところにあるのでしょう。監督の采配以前の問題です。

 

 サッカー王国イングランドも一次リーグで敗退しました。「激しいが、汚いプレーをするのは潔しとしない。それがイングランドの伝統で、そこが好きというファンも多い。そのため、ラテン系チームのの抜け目のなさに痛い目にあってきた。いささか人がよすぎるようにも見える」とは、読売新聞の解説記事です。要するに、審判がきずかないように、足をかけたり、手で腕や袖を手引っ張れ、ファウルと分っていても、ゲームの流れを変えるには必要悪というのでしょう。いやですね。こういうスポーツは。結局、祖先が狩猟民族だった人たちのスポーツなのでしょう。

 

 

 



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