品性に欠ける政治
2014年6月28日
女性都議に対するセクハラヤジは、波紋を広げており、ヤジの自粛ないし禁止、根深い男性の女性蔑視の是正、日本社会の構造のゆがみの改革など、一斉に課題が噴出しています。女性都議については、後ろめたい過去があるようなことを週刊誌などが報じています。わたしには確認しようがないし、かりにそうだったとしても、それはプライバシーの次元の問題であって、男性都議が免責されるわけではないので、ここではそれを問いません。
前回のブログ「都議会のセクハラヤジは物語る」(6月28日)をアップしたところ、昨年夏のブログ開設いらい、最多のアクセス件数を記録し、びっくりしました。この問題には多くのひとが関心を持っていることがわかりました。都議自身が波紋の大きさに驚いているのではないでしょうか。大げさにいえば、男性が腰を抜かすほど、社会の底流で大きな変化がおき、ネット社会化とあいまって、女性の発言力が急激に増しているようですね。NHKもクローズアップ現代で女性キャスターがこれを取り上げるなど、男性はうかうかしていられなくなりましたね。
伝統的メディアは問題意識が希薄だったのではないでしょうか。国会、都府県の議会に多数の記者を張りつけています。品性に欠けるヤジは古くからあったけれども、連日、接していると「そんなものかなあ」と、感覚が鈍くなるのです。わたしもそのひとりだったのでしょう。今回も、「そんなに大騒ぎする問題かね」という受け止め方が大勢かもしれません。女性都議のあら探しよりも、すくなくとも議場におけるヤジをどうするのかに、真剣に取り組む機会にすることが建設的でしょう。ブログの読者のひとりがコメントを寄せ、率直な感想を聞かせてくれましたので、ここで紹介します。
「なぜ、ヤジがこうも多いのでしょう。議場の華(はな)なんてとんでもない。意見、発言が聞こえないほどのヤジが飛び交っています。人の意見をまず聞くことと、子供に教えたのは間違いだったのかしら。どうしてヤジが必要なのでしょう。これを機会にヤジの自粛を考えてください」
品位に欠けるヤジの禁止、自粛を意味する規則は、国会についても、都府県の議会についてもすでにあります。議会の議長に大きな権限があります。議事がストップし、抜き差しならない混乱に陥らない限り、議長、委員長は「お静かに、お静かに」、「静粛に願います」と、多少は大声をはりあげる程度の対応にとどめています。
国会法116条(衆、参議院)
「議員が議場の秩序を乱し、または議院の品位を傷つける時は、議長は制止し、発言を取り消させることができる。命に従わない時は、発言を禁止し、または議場の外に退去させられる」
都議会会議規則
「議員は議会の秩序、品位を重んじなければならない」(105条)
「何人も会議中はみだりに発言し、騒ぎ、議事の妨害となる言動をしてはならない」(108条)
スポーツの試合でも、たくさんの高感度カメラを競技場に会場に持ち込み、スロービデオで、ボールの動きなど微妙なシーンを巻き戻し、判定を覆したりするようになってきました。議場ではどうでしょうか。高感度マイク,指向性マイクで、かなりはっきり、どんなヤジを飛ばしたか、品位に欠けるヤジだったかを捕捉し、再現できるはずです。放送局によってはそうしているところがあるかもしれませんね。
ヤジそのものを法律、規則上、はっきりと定義するのは難しいこともあり、ヤジそのものを規制するのは生産的ではないかもしれません。古くは吉田茂首相が衆院本会議で演説中、「それでよく総理が務まるなあ」というヤジが野党から飛びました。すかさず与党から「お前でさえ、代議士が務まるようなものだ」との応酬があり、満場が爆笑に包まれました。これなどは、息抜きになり、議場の活性化に役立ったでしょうね。許容範囲です。
ヤジは新人議員の役目、というより、新人研修のようなものだという説もあります。タイミングよく、ユーモアや機智に富んだヤジを飛ばすには、日ごろから政策をよく勉強し、他の議院の発言を必死になって聞いていることが必要ですしね。浜田幸一衆院議員(通称ハマコー)は口が悪く、社会党議を「黙れ、強姦野郎」とヤジりました。こういうのは品位を汚し、いけません。
米国の下院では、オバマ大統領に、ある政策問題で、共和党議員が「このウソつき」とヤジったところ、下院はこの議員に対し、けん責決議を採択したそうです。ヨーロッパ主要国では、ヤジそのものは禁止していないようですね。ただし、品位にかけるヤジには厳しいそうです。パリ在住の友人に聞いたところ「ヤジはある。演説者の演説内容にかかわることばかりで、セクハラヤジの類はまずありません。プライバシー(個人的攻撃を含む)と公共性を混同しないということでしょう」との返事でした。
「ヤジ」の語源は「ヤジ馬」で、「ヤジ馬」の語源は「おやじ馬」だそうです。年老いた馬は御しがたいばかりでなく、仕事に使えない、というのです。「ヤジ馬」は無責任に、面白半分に騒ぎ立てる人、浅はかな興味を持ち、物見高く火事現場などに集まる人をさすとか。「ヤジ馬」が短縮して、「ヤジ」になったといわれます。
品位に欠けるヤジを飛ばしてばかりいて、仕事に使えない議員ということでは困ります。国会議員も、自治体の議員も、品位に欠けるヤジの自粛をし、議長や委員長は規則にのっとり、厳しく毅然とした態度をとることが必要です。また、ヤジや怒号で議事をとめたり、混乱させたりすることが、野党の政治戦術になっています。邪道です。議員になったら、議員研修の名目で、欧米の議会を視察にいくことを義務づけたらどうでしょうか。言葉は分らなくても、日本よりはまともな議会政治をしていることぐらいは分るはずですよ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます