新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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安倍首相は非民主主義者にみえる

2015年11月14日 | 政治

 

 

民主主義的手続きをはぐらかす

2015年11月14日

 

 政治家・安倍氏は選挙や国会という民主主義の手続きによって、首相に選ばれました。本人も民主主義制度を否定していません。その点では「反民主主義者」ではありません。だから安倍首相が「民主主義者」かというと、違うのではないでしょうか。

 

 政権発足以来の言動、行動をみていますと、この人物の思想・本質は「非民主主義者」にあるとしかみえません。「安倍1強政治」の動きをみていますと、どうやら「民主主義者」と「非民主主義者」を使い分けなくてはらないと思えてきます。

 

 そんな指摘をしたいと思っていますと、今日の新聞(13日朝刊、日経)に、自民党が保守合同で誕生して15日で60年になるとの記事が載っていました。そうだったのか。安倍首相の体質を検証するいい機会になりました。

 

臨時国会の見送りは10年ぶり

 

 安倍政権が10年ぶりに臨時国会の開催を見送りました。「外交日程が立て込んでおり、臨時国会を開く時間がない」との説明を通してきました。そうなのかなあ。メディアの解説では「閣僚不祥事、安保法制の弱点、軽減税率問題などを突かれると、来年の選挙に影響するから回避したのだろう。予算案をまとめ、正月からの通常国会はそれで一気に押し通す」とのことです。

 

 まあそうなのだろうな。そんな時、新聞の舞台裏情報として、「首相は年末まで外交日程を詰めるだけ詰め込ん物理的に国会開会できないように仕向けた」と書いてあるのを読みました。やはり。議会制民主主義の基本である国会論戦より、政権維持を最優先したのです。まともなメディは「なぜ臨時国会を開かないのか」と怒っていましたね。

 

首相は選挙嫌いなのか

 

 安倍氏が再戦された総裁選挙(10月)では、対抗馬がでないように工作し、無投票当選が決まりました。出馬したかった女性議員の野田氏は道を封じられ、涙をのみました。政治には駆け引き、権謀術数が付きものにせよ、首相の本質は「選挙嫌い」であるのでしょうか。

 

 昨年12月の総選挙のことも思い出します。与党は圧倒的多数を維持していながら、わずか2年でなぜ早期解散をするのだろうかと、多数の有権者が疑問に思いました。その理由について首相は「消費税10%引き上げ(当初の予定は2015年10月)を見送ることの是非を問うため」と、説明しました。「引き上げの是非」でなく、だれでも賛成するだとろう「見送りの是非」とはね。

 

民主主義をはぐらかす

 

 うそでしたね。本音は「圧勝できる時に圧勝し、長期政権を実現する」にありました。安保法制の歴史的な転換、その先にある憲法改正への路線を引くためでしたね。それなら堂々と、そのことの是非を選挙で問うべきなのです。本当の国民的議論を回避し、「消費税引き上げの見送り」という擬餌バリで国民を釣ったのです。要するに民主主義をはぐらかす行動をとったのです。これはいけません。

 

 最近では、「1億総活躍社会」のスローガンを掲げました。党内における議論があったとは思えず、突如、浮上したのです。これも受けのいい「GDP(国内総生産)600兆円計画」も突然のように飛び出しました。実現のための手段、政策的な裏づけは後回しになっています。「500兆円」は、経済統計の計算で新基準が近々決まり、20兆円分が自動的にかさ上げされるそうです。来年の選挙対策のための手品みたいなものです。

 

 「デフレ脱却ための3本の矢」、「異次元金融緩和による物価引き上げ2%(2年で達成)」という旧スローガンはほぼ姿を消しました。実現の可能性が薄らいでいるし、国民の評判がよくないのです。政権の責任で決めた基本的な計画は事後検証をしてから、修正するのが常道です。議論をしないままうやむやするのは、民主的プロセスを踏みにじっています。

 

野党は解党、分裂騒ぎでなめられる

 

 そんなことを許しているのは、自民党自身が「首相1強」体制にひれ伏しているからです。野党もせっかくの閉会中審査(国会審議)にこぎつけながら、復興相のパンツ窃盗問題を熱心に追及し、肝心の経済政策がなおざりにされました。民主党は解党騒動、維新は分裂で自民1強への対抗軸結成などは盛り上りません。だから安倍首相の意のままで政治が動いているのです。

 

 メディアも力がないですね。特に新聞は販売部数の減少が怖く、消費税の軽減税率を適用してもらうのに必死です。政権にすっかり急所を握られています。恐らく税制改革の大詰めで「新聞・出版にも適用」が決まるでしょう。まともな新聞以外は、それまではじっとしているのでしょうか。

 



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