新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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(怒り)歯科医の過剰のツケ

2013年11月24日 | 社会

   (おじさんは怒っている)

      患者の負担増に 2013年11月25日

 街を歩くと、やたらと歯医者の看板が目に入ってきます。わたしの住んでいる町の駅周辺だけでも20箇所ほどの歯科医院があります。内科、眼科、皮膚科などに比べとにかく多いのです。明らかに過当競争状態で、市場経済下では普通なら商品、サービスの価格、料金は値下がりするはずです。そうはなっていないどころか、割高になっているのです。なぜでしょうか。

 

 歯医者の看板の写真をブログ用に撮ろうと、駅周辺を歩いていたら、なんと冒頭の写真にあるように「歯科見学会、もれなくプレゼント」のプラカードをお嬢さんが掲げている場面に出くわしました。近くの歯科医院が独自にやっている宣伝で、お客(患者)を呼び込もうという作戦です。見学会とは名ばかりで、要するに「自分の医院を見にきてくれ」、つまり「お試しにきて」ということです。「何をプレゼントにくれるの」と聞きましたら、「歯ブラシです」との答えです。歯医者さんもここまでするようになってきたのですかねえ。

 

 歯科医師は全国で9万人はおり、歯科医院は6万8000で、コンビニの数よりずっとおおいそうです。医学部の学生定員はすべての診療科目をふくめ9000人、歯学部は2500人です。まず歯科大の学生定員を減らせと歯科医師会が要求すると、高齢の歯科医から引退せよという声がでてきます。きちんとした医療行政をやるべき厚労省が私立歯科大の統廃合を進めたいというと、国公立歯科大学から手をつけよ、反対されます。そうした中で、歯科医院の経営悪化が進み、倒産が増えているとか。

 

 これは行政側、歯科医師側の問題です。国民側、患者側からみると、どうなっているのでしょうか。経済原理からすると、供給過剰、過当競争は価格、料金の低下をもたらします。そうはなっていない実例を具体的に紹介します。

 

 わたしは若いころの不節制がたたり、慢性的な歯周病患者です。定期的に歯科医院に通い、検査、歯石の除去、ブラッシングの指導などを受けています。東京から出向していた大阪では、本社の近くに歯科医院がたくさんあり、評判のいい医院を選び2,3ヶ月に1度、治療を受けていました。1回30分で手際よく処置してくれました。

 

 東京に戻って、自宅近くの歯科医院にはじめていき、「歯石の除去を」とお願いしました。1回ですむと考えていましたら「12回以上、きていただくことになります」というではありませんか。「ええっ」という叫び声を思わずのみこみました。「保険治療の決まりがあります。厚労省が決めています。自費払いなら1回ですませてもいいですよ」。

 

 保険治療にしたいので、仕方なく医院の言うとおりに従いました。まず、レントゲンを含む検査から始まり、歯石の除去が上部、下部各1回の計2回、さらに「あなたの場合は、歯間ばかりでなく、SRPといって、歯茎の内部の歯石を掃除する別途の特別処置が必要です。上部3回、下部3回に分け計6回、かかります」。その間、ブラッシング指導が2回、治療状況を確かめる検査がもう1回、という具合です。それぞれが1日につき1回分しかやってくれません。1回あたり、治療時間は短いときはたった5分です。ブラッシングは2,30分かかります。その大部分は自分で歯を磨いている時間です。

 

 「歯石の除去は上下を1回でやってくれませんか」、「保険治療の決まりがあって上下を分けてやることになっています」、「SRPとかいうのも、1回でやってくれませんか」、「決まりがあり、できません」。上下をそれぞれ中央、左右の各3等分(計6回)といっても、28本の歯があることが前提になっているのでしょう。つまり1回あたり4,5本の計算です。わたしの場合、歯が抜けている部位があり、そこには自分の歯は1本しかありません。一本の措置のために、予約をとり、たった5分の治療を受けます。「もっとなぜ治療する本数を増やさないんですか」。こんなことの連続でした。大阪の話をすると「ルール違反です」。

 

 調べてみると、厚労省の保険治療の規定通りなのです。この医師は石頭で杓子定規の治療しかしないと、腹を立てたものの、よく考えてみると、医院に何度も通わせ、料金が割り高になるように規則ができているのです。大阪は繁盛していた医院だったので、1回で治療を終わらせていたのでしょう。東京のこの医院は患者数が少ないので、何度も来院させたいのでしょう。来院の回数を増やして経営が成り立つように、規則も設計されており、過当競争のツケが患者に回るようになっているに違いありません。患者側の来院の負担、時間のムダなどは二の次なのでしょう。この歯科医はまだいいほうで、過剰診療で稼いでいる歯科医も多いことでしょう。

 

 「社会保障費の膨張続く 医療費年1兆円増加」という記事を最近読みました。高齢者の自己負担の増加、社会保障費の財源のための消費税の値上げなど、国民側の負担は重くなる一方です。反対ではありません。問題は医療サービスの合理化、効率化に政治や厚労省が熱心ではないことです。合理化の余地があることの証明は、歯科医の話が一例です。そこに手をつけないで、国民、患者の負担だけ増やすというのは、フェアではありません。

 

 以前、ブログで「薬局バブル」(9月12日)の問題を取り上げました。調剤薬局が過剰なのに、経営が成り立っているのは、国民、患者が薬局に余計な費用を支払わされているためだという指摘をしました。調剤薬局チェーンの経営者で長者番付に載るような人はたくさんいるそうです。まず医療行政の効率化を。

 

 

 



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4 コメント

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嘆かわしい (ナチュラル リソース)
2016-04-11 21:50:44
わたしも、悪い歯医者に説明責任を果たされず、態度も悪く、技量の悪いところに当たってしまいました。

今思うと、転医のチャンスはあったと思いますが
それは後から思う事でした。

歯科医師会に苦情をいれるも、治ってないのなら、〔勝手に、治療請求してもらって結構だ〕の、
〔内容の真意はわからないから、人間関係の行き違い〕と処理され、精神的にも物理的にも、重ねて傷つき、大変消耗しました。

消費者庁の窓口も、歯科医療トラブルで様々な眉をひそめるようなケースを扱いながら、〔あの団体は、ほんとにもう・・・〕と絶句していました。

厚生労働省はこの問題を静観していますが、一番、対応が良かったです。

患者の保険料で食べていながら、患者のために働かず、献金にいそしみ、利権に必死な歯科医師はじめ、この団体、何とかならないものでしょうか・・・

せめて医療系専門の実名口コミサイトで、〔探すと、レアですが、ひとつ、あります〕公表するしか、救われません。

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Unknown (trix)
2016-12-13 16:45:00
一度欧米で歯科治療をクリーニングで良いから受けてみてください。
観光で行くだけでなく、取材の意識を持てば、狭い日本の中の常識だけで書かれたここの内容を私が嘆かわしいと思う意味がわかります。
日本の歯科は、官僚が作った欧米には通じない安いだけのガラパゴスです。
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Unknown (ららちゃん)
2017-07-14 19:40:17
結局のところ歯科関係者は外国を見てみろ
日本のように激安価で治療をうけられるのは稀
という言い訳しか出来ないのだろう

自己研鑽をせず自らのスキルを省みず
意識改革もせず技工士のせいにして搾取する
しかない連中だと見られても仕方がないですね
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Unknown (Unknown)
2017-10-13 22:09:12
歯医者はオワコン、歯壊、廃車、敗者
と陰口を叩かれるほど
医科より医療水準が低いから
我が!われが!で、自費治療で食いつなぐ
しかない現状

自らを変革できず厚労省から見捨てられ
自然淘汰で喘いでいるだけ
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